四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
冬の凌クラシックスタイル その2
不定期にはなってしまうが、凌アイテムのおすすめの着こなしを季節ごとに紹介したいと思う。素材の機能だけを並べ立てるのではなく、凌の美学でデザインされたアイテムがシノギングでどう機能するかを実践的な視点で解説する。
今回は、冬の凌クラシックスタイル その2
ベレーボウ、クビマキ、ヤマニノボッタカモシレナイinsulated、シノビwool blended、クナイ、それに特別出演の凌ピッケルでコーディネートすれば、明治後期~昭和中期にかけての登山者を彷彿させるクラシックスタイルの完成だ。どのアイテムも男女問わず着ることができて冬のシノギングにはピッタリ。あの時代の登山者もこんな格好でヤマニノボッタカモシレナイ・・・。
画像では伝わらないがとてもソフトで薄手の起毛ウールを使用している。起毛させた生地はとても通気度が高く、しかも裏張りをしていないから汗抜けが良いので、シノギングでは当たり前のあえぐような直登でもオーバーヒートしない。 汗をかいてもちょっとした雨にやられても、一旦保水して汗だれや雨だれを感じさせないのがウールのいいところ。保水力が高いためびしょびしょに濡れた後に乾くまでには少し時間がかかるが、ダラダラと汗や雨がたれてくるよりぜんぜんいいわけである。天然の抗菌防臭効果も備わっているので被りっぱなしでも汗や焚き火の匂いがほとんど気にならない。当たり前の話だがベレーボウはツバがないので視界がとてもいい(笑)シノギングにはつきものの、気付きにくい倒木や枝の飛び出し、露岩の出っ張りなどのあるところでも視界がいいので誤ってぶつかったりすることがなく安全だ。ベレーボウはいろいろな被り方ができるのでそこに個性を出すのも楽しいし、バッジやワッペンなどで遊び心を加えることができる。
前回のコーディネートにも登場したが、ほど良い保温性と風通織りならではのずば抜けた通気性と速乾性のおかげで一年中重宝するアイテムだ。軽くまとめてふわっと首に纏う感じで使えば、ジャケットの襟まわりの隙間を温めてくれる。そしてオリジナルのプリント柄は全体にモノトーンの着こなしの程良いアクセントになる。
クラシックなデザインのジャケットでありながら、着っぱなしでもオーバーヒートしないちょうどいい保温性を提供する薄手の中綿と、高通気のPERTEX QUANTUM AIRを採用することで、今や行動着のスタンダードになったアクティブインサレーションとして機能する驚くべきアイテム。気温が5℃を下回る真冬のシノギングには保温性と通気性を両立するこのジャケットは欠かせない。フード付きで前開きはジッパーでというクライミングやトレッキング用のアクティブインサレーションとは一線を画するまったく新しいデザインの落とし込みは、森林限界以下をフィールドとして、ルートハイキングではない多少の冒険を伴う自立した山歩きのスタイルであるシノギングの世界観をよく表している。裾の両脇のジッパーはサイドベントとして着やすさとベンチレーションの助けとして有効であるばかりなく、ヒップベルトのあるバックパックを背負ったときには前身頃の裾の下にヒップベルトを通して止められる。これはせっかくのジャケットのシルエットを崩してほしくないからであって、ちゃんと使える機能はもちろんのこと着こなし方にまでしっかりこだわったアイテムなのだ。
シノギングのパンツの中で最も凌ぎの世界を表現しているのがこのシノビであり凌の着こなしには欠かせないアイテムだ。縦横にストレッチ性のあるソフトシェルパンツだが、シノギング時の動きやすさを考えてわたりに少しだけ余裕を持たせている。膝にかけてはスリムにフィットして 藪の海の徘徊や悪い壁を直登するときに余計なストレスを感じないようにしている。程良い厚みの生地は冷たい風を防ぎながらも、良好な通気性によって運動による蒸れを効果的に解消する。コロコロと踊るような撥水性はさすがschoellerといったところで、二重織の生地の肌面にはメリノウールを織り込んでいるので肌触りが良くてあたたかく、汗を効果的に吸収してくれる。いろいろ書いたがひとことで言えばまったくストレスを感じないパンツということである。ちょっと癖があるので誰もが欲しいと思うようなアイテムではないがそれはそれ、このデザインと機能をわかってもらえる人にだけはいてもらえばそれでいい孤高のアイテム。
今回の着こなしで全体をビシッと引き締めてくれているこのクナイは言わずと知れた凌アイテムの定番中の定番。レインゲイターは防水透湿素材を使っているので雨を防いではくれるが内側は汗で濡れてしまう。シノギングのフィールドである森林限界以下の低山ではなおさらで、これはレインウェアにも同じことがいえる。雪山だったり雨が降ったりしていなければゲイターなんていらないでしょと思う人もいるだろうが、シノギングでは晴れていようと雨が降ろうとゲイターは必要なのだ。それはシノギングをしてみればすぐにわかる。森林限界のシノギングフィールドで、晴れでも雨でも雪でも使えるのがクナイである。schoeller dynamicを採用したクナイはソフトシェルのロングゲイターで、シノビと同じ時期に開発されてシノビと合わせて使うことを提案している。気温が高い時に使うと多少は蒸れるが、それでもレインゲイターの蒸れと比べればかわいいもの。地下足袋のパターンを採用したスリムなフィットが歩きやすいのは言わずもがなで、何かに引っ掛けるようなこともなく、悪い場所を安全に通過するための足元確認にも一役を買う。テクニカルなシノギングではコードをシューズの底にまわしてフィットを増すことができて、独自のアイデアの先端のトグルはシューレースに掛けやすく抜けにくいが意図的に外すことは簡単である。もし、自然に外れてしまう場合はシューレースのテンションがあまいからなのでそういう人は靴のはき方を一から覚えたほうがいい。落ち葉に埋もれ、土を被り、ざれた斜面を凌ぐシノギングにはクナイは必須のアイテムである。
シノラーよ、孤高であれ!

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