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季節のうつろいを感じたシノギング

シノギングは森林限界以下の低山を活動対象に決めているのだが、夏の低山は暑くてとてもじゃないが凌ぎきれない。それなら沢を歩いて暑さを凌ぐしかないようね、という事で夏のあいだはもっぱら沢を歩いている。

シノギングでは登攀道具を使わない山歩きを実践しているので、沢においても当然登攀道具を使わず、凌ピッケルとお助け紐だけで凌げる範囲の沢を選んでいる。そう、沢登りが目的ではなく、暑さを凌ぐために沢をあるいてハンモックポイントに向かうのが目的であり、沢登りのグレードを上げるのが目的ではない。

前置きはここまでとして・・・、

予定していた週末の天気はずーっと曇りのち雨のままだが、そもそもシノギングは天気を気にしないし、どうせ沢を歩けば濡れるのだから中止にするつもりはさらさらない。集中的な降雨もなく沢の増水もなさそうなので予定していた奥秩父の最南端エリアへ向う。

装備を整えていざシノギング。

まずは堰堤。

安全な巻き道がついている。

なんと、天気は直前になって好転し、土曜日の夕方まで晴れに変わった。そのおかげで緑はまぶしく、まるで新緑のようにキラキラしている。

三基の堰堤を越えたところで入渓。渓にはまだ日が差し込んでいないが、穏やかな流れの沢はなんとも気持ちがいい。

沢歩きは涼しいとはいえ確実に汗を掻いているのでこまめな水分補給を心がけたいもの。タモツウルオスはバックパックのショルダーベルトの下端に引っ掛けて携帯できるので、行動中のちょっとしたタイミングに素早い水分補給ができる。この夏はもっぱら生レモンサワ―、ではなく生レモン水でのどを潤している。う〜ん、さわやか。

こんな滝、登れるわけがないので巻く。序盤に現れる15mの滝は見ごたえ十分だ。

沢を歩きながらも周りの尾根が気になってあちこちきょろきょろ。

目の前にはうっとりするほど美しい段々のナメが現れた。

手前の釜にカメラを向けると黄色い葉がひらりと舞い降りてくれた。

沢の両岸が開けて来たのでハンモックポイントを探すが、ちょうどいい木が見当たらないのでここでの野営はあきらめる。

両岸が開けてどん底感のない渓は明るくて実に気持ちいい。

5mの滝は右側が階段状になっているので楽に登れるが、脚の動きを妨げず汗や水をため込まない通気性の高いパンツ(タッツケ)や、足元をすっきりさせて安全確認ができるクナイなどの信頼できるアイテムを身に付けることは重要だ。

高さはない滝だが手掛かりが乏しいのでさぐりさぐり登る。

暑さを凌ぎながらゆっくり歩いて2時間ほど。西から枝沢が流れ込み本流には堰堤が現れる。ここからは枝沢に入る予定だが、時間に余裕があるので本流の堰堤を越えてみる。

すぐ先にも堰堤があるのでそれも越えてみる。

やや人工的ではあるものの、堰堤の先には楽園のような穏やかな世界が広がっていた。ちょうど水際にハンモックを張れる木がある。楽園で一夜を凌ぐのも悪くないなと思ったが、明日は気になっている広場を調べることにしているのでここでの野営はお預けとする。

ダケカンバはいまの季節に樹皮がむけるのだろうか?あちこちで樹皮がひらひらしている。迷わずこの天然の着火剤を必要なだけポケットに突っ込む。

堰堤を戻り枝沢に入ると、先ほどまでの本流とは違ってしっとり苔生していて、地形図から推測できるように傾斜は緩い。

流れがなくなる直前で水を確保。水を担ぐ時間をできるだけ短くできるよう、最後まで粘り過ぎたので浅い流れの水の色はやや黄色く、木の葉などが混ざっているがどうせ濾過するから気にすることではない。

こんなに緩やかで広い沢の詰めは初めてだ。扇状に広がる斜面にマルバダケブキがゴールドの層を作っている。

詰め終わるとそこはとても広いコルになっていた。夢とロマンを詰め込みすぎ、今回もやっぱり重いバックパックを降ろして一夜を凌ぐ道具を広げる。

雨予報が出ていたのでSolo Tarpよりも広いHammock Trekking Tarpを持ってきた。その代りにハンモックビビィ Tyvekには留守番をしてもらい、モグ woolとEXPED Travel Hammock Mesh Kit+雨返しでハンモックシステムを完成させた。

ひとつ気になるのは、Travel Hammock Mesh KitはノーマルのTravel Hammockよりも生地に伸びがあるので座った時の沈み込みが大きい。全体が沈み込めばいいのだが縁はこれと同じ様に沈まずに突っ張っているので膝裏に引っかかる。するとやや低い位置に腰を下ろして座り続けることになるので腰が痛くなる。そしてこの伸びによる沈み込みは寝心地にも若干影響する。快適さには個人差があるのでこれはあくまでも私の感想だが、私はノーマルのTravel Hammockの方が快適だと感じる。

Hammock Trekking Tarpを使うときはいつも、長い方のウィングが背面に来るようにして折り返し、敷物として使っている。この張り方は雪中シノギングでも有効だ。

POCKET BOYの替え刃は軽いが、HELLEナイフと2代目殴り棒は重い。夢とロマンは重いのだ。告白するが、今回、その重いナイフと殴り棒の出る幕はなかった(笑)

ヘキサ型のタープは見栄えがいい。ぴっちり美しく張ったタープは実に美しい。誰にも会わないが決して手を抜いてはいけない。これも凌の美学。

ソフトクーラーの断熱層を2重にして、カッチカチに凍らせた200mlパウチ2個で冷やす凌式冷蔵庫は、そろそろ日が暮れようとする頃までしっかり冷蔵してくれている。

宵には行燈風シェードにやわらかな灯りをともし、磁器の平盃で酒をたしなむ。無駄なことを・・・、と思う人もいるかもしれないがこれも凌の美学。

なかなか降り出さなかった雨だが、降り始めると時折り激しい。これを想定してタープ前面片方のすみを大きく下げ、この一点に雨が流れるようにしておいた。計算通りの雨の流れに自己満足。

早めにハンモックポイントに着いて静かな時間を存分に楽しむ。これもシノギングが大切にしていること。あくせくするために山に来ているのではないからね。

山の奥のハンモックポイントは寝る間際までこんなに幽玄だ。怖い夢を見ませんように(笑)

怖い夢を見ることなく、すやすや眠っている真夜中に発生した、同行Y氏のプチ遭難事件のことはさておいて・・・。ときに優しく、ときに激しく、雨はタープをたたいて朝まで降り続いた。1,600m圏に降った雨は秋を連れて来たようで気温は16℃ほど。焚き火がなければ寒い。

ピコグリルに火を熾してスープとコーヒーで温まる。湿気た朝をこんなふうにのんびり楽しめるのも、時間にも心にも余裕のあるシノギングだからだろう。

名残り惜しいが出立の時が来た。足元はクナイ、腰周りはツユハラヒで整えて、ノラギを羽織れば気が引き締まる。

きのうは東からコルに乗って、きょうはコルを西にコルを乗越す。すぐ南の小ピークの裾を巻くように形成されるゆるい渓を辿る。

広葉樹林は日が差し込みにくいからか下草が少なく、カラマツ林はその逆に下草が茂っている。

コルから30mほど低いところに水が湧きだしている。

雨の日、自然の色はとても深い。

1,550m圏で等高線の間隔が急に広がりとてもなだらかな地形に変わる。南側の尾根から扇状に広がる地形は特徴的で、地形図を見てどんな風景になっているのか気になっていた。

下草はクマザサと羊歯に変わり、深い。雨上がりのこんな状況に最も活躍するのがツユハラヒ。まさに露払いだ。そしてクナイはこんな状況でも足さばきが良く、靴への異物の侵入を防いでくれる。

なだらかな地形にも渓はある。水はその一番低いところを流れる。下草が深いのでうっかり足を置くと、踏み抜いて小さな流れに足を突っ込んでしまう。一番低い場所をめがけてあちらこちらから水が集まってきているのだ。

獣道はあるが登山道はない。地形図とコンパスを頼りに手つかずの湿地の藪を漕ぐ。こんな場所の調べはドキドキするほど楽しい。平坦な土地の渓を南に辿れば尾根に出る。渓の流れに沿って南進する。

いつの間にか流れは絶えて草原になった。ゆるい傾斜だが湿度が高く足元が悪いからか汗だくだ。ぜーぜーと呼吸を乱して少しずつ標高を上げ、ようやく扇の要に近付いた。振り返ると、いま来た草原の向こうに瑞牆のシルエットが見えた。ここが奥秩父の最南端。そう言ってもいいだろう。

沢歩きと湿地の調べに掻いた汗を、町の銭湯でさっぱり流して帰った。頭も洗わなかったし、着替えもしなかったけどね(笑)

沢と藪を凌いだアイテム

クビマキ

ヤマボウシ Air

ハチジュウハチヤ七分袖

タッツケ(試作品)

クナイ

Super Fit Mesh Glove

ヤマバッグ XP

タモツウルオス XP

凌ピッケル(出番なし)

EXPED Black Ice 45

 

一夜を凌いだアイテム

EXPED Hammock Trekking Tarp

EXPED Travel Hammock Mesh Kit

モグ wool

雨返し

ノラギ 綾織り(試作品)

カルフワセーター

カルフワタイツ

カルフワタオル

クイックハラマキ octa

行燈風シェード

シノギチャブダイ

ヌノバケツ 4litters XP

元祖ヌノバケツ

風呂敷(試作品・2022年秋発売)

 

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