四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
凌 風を感じる着こなし
不定期にはなってしまうが、凌アイテムのおすすめの着こなしを季節ごとに紹介したいと思う。素材の機能だけを並べ立てるのではなく、凌の美学でデザインされたアイテムがシノギングでどう機能するかを実践的な視点で解説する。
今回は、風を感じる着こなし。
八十八夜を過ぎて暖かい日が続くようになった五月。名もない低山の尾根は若葉を渡る風が薫ってなんとも気持ちがいい。この時期になったらそろそろ凌ウェアの衣更えを考えてもいいだろう。凌アイテムの汗を凌ぐのカテゴリーにはこれからの季節に活躍するウェアがそろっており、それらはいずれも通気度が高いので風を感じることができる。その中からミチクサとフタエズボンの着こなしを紹介しよう。
余計なデザインを省いたプルオーバーシャツ。ボタンもジッパーも使っていないそれは、着物ショルダー、広い袖口、腰にかかる少し長めの着丈、袖口と裾のスリットによって見事に凌らしさを表現している。このデザインと落ち着いた色合いによって和を感じさせながらも、40dnの加工糸を使ったリップストップナイロン素材の通気度はなんと31㎤/㎠・Sという、最先端のアクティブシェルであり、まさに風を感じることのできるシャツなのだ。通気度が高いということはそれだけオーバーヒートしにくいということになり、シノギングで掻いた汗を放出しながら適度に外気を取り入れることができるので快適な状態を維持できる。しかし、いくら通気度が高いとはいえ、私のような汗かきはさすがに少し汗をため込んでしまうのだが、汗かきではない人であれば着っぱなしでも快適にシノギングできる。休憩中にもそのまま着ていれば適度に風を防ぎながら汗の湿気をどんどん放出してくれるので、汗冷えを感じることなくいつの間にかベースレイヤーは乾いてしまうのである。
襟元は広く開いているので窮屈さを感じることがない。襟を立ててラフな感じで着こなしてもいい。ミチクサに合わせるベースレイヤーは、一般的なクルーネックよりも首まわりが広い方がバランスがいい。ミチクサの下にヒトリシズカを合わせているセンスのいいシノラーさんがいて、なるほどなーと思った。今度真似してみよう。
左胸と両脇にオープンポケットがある。これはどうぞモノを入れてくださいというポケットではなく、あくまでも一時的に小物を入れたり、手持無沙汰な手を入れておくためのものである。袖口と裾回りはこのようにひらひらしているので風に吹かれるととても気持ちがいい。
ハカマスカートである意味袴=武士っぽいイメージを表現できたので、次に着物のイメージを表現したくてこのフタエズボンを考えた。前後の着物フラップによって着物の様な見た目ではあるが、ワイドパンツが内蔵されているので、スカートはちょっと・・・、という男性シノラーさんも、これはパンツだもんねーと手を出しやすいのではないだろうか?
このフタエズボンも凌の美学を色濃く表現しており、尾根を渡る風に裾を揺らめかせて凌ぐさまは美しい以外の何物でもない。
ミチクサと同じ素材を使っているので通気度が高くていつでもさらさら。着物フラップを太腿の両脇のスナップボタンで止めて使うのが基本だが、窮屈な時には外して使ってもいい。風にあおられたり急斜面で裾を踏んでしまうようなときには、下の2枚の画像の様に着物フラップを端折って太腿のスナップボタンで止めることができるし、これはこれで別の着こなしを楽しむことができる。
ウェスト周りは凌の他のパンツと同様に、平ゴムと丸ゴムですっきりまとめ、ウェストに内蔵されたコードロックは下に引く構造なので引っ張ったゴムが飛び出して邪魔になったりしない。腰の前後左右にオープンポケットがあるが、これもミチクサと同様にいろいろ物を入れるというよりも一時的に何かを入れるためのもので、シノギング中に何かを入れておくとしても、せいぜい凌手ぬぐいを潜ませておくくらいにしておきたい。
ハカマスカートと同じくらいフタエズボンと相性がいいのがこのクナイ・ショート。フタエズボンの裾の揺らめきと、その独特のシルエットによって引き締められた足元の対比が美しい。そして、フタエズボンとクナイ・ショートの間にときおり見え隠れする足首の巾は5cm前後が最も美しい。ロング丈のクナイを合わせるというのももちろんありだが、ここはやはりクナイ・ショートが美しい。当然、露出した足は生傷を負ったり虫に喰われるのだがそれは我慢しよう。凌の着こなしにおいてなくてはならない名わき役である。
シノラーは孤高である。
« 前ページ |