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凌 雨を凌ぐ着こなし

不定期にはなってしまうが、凌アイテムのおすすめの着こなしを季節ごとに紹介したいと思う。素材の機能だけを並べ立てるのではなく、凌の美学でデザインされたアイテムがシノギングでどう機能するかを実践的な視点で解説する。

もう梅雨入りしている地域もあるので今回は雨を凌ぐ着こなしを紹介しようと思う。

その前に、凌としてのレインウェアに対する考えを少しお話ししておきたい。

何らかの被膜を基布にラミネートしたりコーティングした防水透湿素材によって作られたいわゆるレインウェアは、スペック上の透湿性が高くても物理的に汗の放出を妨げてしまう被膜があるので、シノギングによって掻く汗を感じないほどまでに放出することはできない。放出しきれない汗がウェア内に溜まってしまうので濡れてしまうのだ。特に夏の間に湿った空気に覆われる地域のシノギングであればそれは間違いないといってもいいだろう。だから凌では雨が降っても行動中にレインウェアを着ることをお勧めしていない。シノギングエリアとして定めている森林限界以下であれば、レインウェアを着るよりも雨をはじく撥水性と汗を放出させる高い通気性を備えたジャケット、シャツ、パンツを着るほうが快適だと考える。

しかし、何があってもレインウェアを着るなということではなく、自分が必要と感じるならばレインウェアを着ればいい。凌シリーズには雨を凌ぐのカテゴリーに、雨に対するプロテクションの高いものから低い=凌ぐものまでラインナップしているので、その中から実際に使う人のシノギングのスタイルや汗の掻き方に合うアイテムを選んでいただければと思う。

さて、今回の着こなしで紹介するのは、雨を凌ぐという表現にぴったりのツユハラヒフッタリヤンダリ

ツユハラヒ

試作段階から数えるとそろそろ10年のお付き合いの凌を象徴するツユハラヒは、梅雨の時期だけではなく一年を通して何かと重宝する雨よけであり、風よけであり、寒さよけであり、まさに凌ぐという言葉にぴったりのアイテムだ。

ウェスト周りはシンプルに紐で調節。バックパックと干渉することもなくすこぶる快適である。素材はPERTEX SHIELDの2.5レイヤー。3レイヤー素材の様に裏地に繊維を使用していないので汗や雨で濡れたとしても乾きが早い。それに柔らかすぎず固くもない、そして軽すぎず重くもないというこの質感が何よりも丁度いい。

そしてこの佇まいこそが凌の美学である。

前掛けスタイルなので後ろは露出するが、これによって常に空気が入れ替わり汗がどんどん放出されるのでほとんど蒸れを感じることはない。

中心部分にはスリットを入れて生地を合わせているので動きやすく壁の直登にもまったくストレスを感じない。スナップボタンで簡易なパンツ状にすることができるので、風が強いときのバタつきを解消し防水性も確保できる。そしてこの状態でも十分に涼しい。

休憩を取らずに歩きながら休むシノギングでは、状況に合わせて歩きながら付けたり外したりできるこういうアイテムがとても重宝する。使い勝手を重視しているので超軽量、超コンパクトにはしていないが、それでも使わない時には巻物の様に丸めてポケットに突っ込んでおくことができる。おかげでこの10年レインパンツというものを穿いたことがない。

フッタリヤンダリ

フードがなく脇が全開するという大胆なデザインのレインウェア。フードがないのはシノギングエリアとして定めている森林限界以下であれば撥水性を施したハットがあれば十分と考えるからであり、フードを被ることによる蒸れや視界の狭さ、そしてノイズとおさらばできるからである。脇が全開するのはお察しの通りできるだけベンチレーションを取って蒸れを軽減したいからである。しかしそれだけではない。脇が開いているのでバックパックを背負ったままで着たり脱いだりできるのだ。梅雨時のシノギングでレインウェアの上にバックパックを背負うなど地獄でしかないが、こうすることでこまめに脱ぎ着ができて汗も放出しやすい。ツユハラヒもそうだが、このフッタリヤンダリは完全防水とは決してうたっていないので「多少濡れてもいい」というつもりで使っていただきたい。

このように肘の上から脇が全開なので密閉構造のレインウェアよりも断然蒸れが少ない。

前身頃の腰位置と、後身頃の腰位置、その下段の左右にループがあるので、例えば後身頃をバックパックに被せて下段のループに細引きをつけてお腹で結べばこのようにバタつきを抑えることができる。

暑い時には思い切って腕を抜いてみるととても涼しいものだ。フッタリヤンダリならそんな使い方もできる。

裏技として、後ろ前に着れば前身頃が長くなりツユハラヒの代りにもなる。但し幅は狭いのでご注意を。

雨が激しい時にはフッタリヤンダリを着てからバックパックを背負ってもいいだろう。そして前身頃のループに細引きを付けて止めれば、蒸れやすくはなるが雨の浸入は軽減できる。

画像だけではわかりにくいが、ツユハラヒをうまく使うと後身と前身をまとめて押さえることができる。

フロントジッパーは下からも開くので、首まわりを雨から守りながらヤマバッグやシャツのポケットにアクセスできる。

袖先のループに中指を通せば袖のずり上がりを防ぐことができる。

雨の日の名もない低山は実に美しい。雨の匂いを感じて雨に光る緑の尾根を辿り、自分だけの秘密の場所でハンモックにゆられてタープの縁を落ちる雨をぼんやり眺める。雨の日こそシノギングの醍醐味を味わえるものだ。

シノラーはひとり静かに雨の低山を楽しむ。

シノラーは孤高である。

 

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