四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
SUNDAY出張シノギングの様子
山梨県と言えば桃や葡萄の産地。地形図を見ると高尾あたりの地形図ではあまり見かけない果樹園の記号が山裾にびっしり。実際に集合場所周辺はほとんどが果樹園で、葡萄の実が大切に育てられているもんだから容易に山に入り込めそうにない(笑)
SのI氏の先導で果樹園の中の林道を行くとやがてひんやりとした植林地に到着。いつものように凌とシノギングについて大まかに説明をして、本日の凌エリアを地形図で確認。コンパスを頼りに凌ぐので方位の確認も忘れずに。・・・いつものようになかなか歩き始めない(笑)
今回は雨を凌ぐというテーマなのでみなさんに凌のレインウェアをお試ししてもらおうと思ったのだが、残念なことにまあまあいい天気なので、レインウェアのお試しをあきらめてクナイとクナイショートをお貸出し。ローカットのシューズで歩くことが多いシノギングだが、シューズ内に異物が侵入しやすいのでゲイターは必需品だ。クナイは通気度の高いソフトシェル素材を採用しているのでレインゲイターのように蒸れることがなく、防水素材ではないが撥水処理をしっかりしておけば少しの雨ならば十分凌ぐことができる。
一時間ほどの予習が終わっていよいよスタート。現在地点から679mの三角点までストレートウォークで行くという事になった。方位は西だ。シノギング初体験の人にはまず道路脇の小藪からこっそり侵入するところが新鮮なのではないだろうか?
小藪はすぐに終わってなだらかな尾根を越えるとすぐにゆるーいすり鉢状の地形。なかなか雰囲気が良く、まだ10分もたっていないのにここで休憩してもいいと思うほどだった。
さぁて、みなさんこれは何の木でしょうか?杉か檜の2択だが意外と自信をもって答えられる人は少ないようだ。低山小道具研究家の森勝氏がこまごまといろんなネタを提供してくれるので参加者のみなさんも飽きることがないだろう。正解は檜ね。
ストレートウォークとは目的地点に向かってコンパスをセットして真っすぐ進むことなのだが、臨機応変歩きやすい地形にそれてもいい。でもそれ多分はどこかで補整しなければ目的地には辿りつかない。いかにもいやらしそうな藪には入り込まず作業用の踏み跡を利用して進んでみる。
三角点から少し東北東にズレて尾根に乗った。このとき自分がズレて歩いて来たことをしっかり覚えていれば修正は簡単。みんなどっちに行けばいいと思う?
尾根を西南西に辿って見事に三角点に到着!
ほんのわずかな距離だが45分かけて周りの地形を観察しながら頭をフル回転させて歩いた。道標に導かれて整備された登山道を歩くルートハイキングとは全く違う楽しみ方だ。
ストレートウォークはここまで。ここからは尾根を辿るに切り替える。ここでも地形図のチェックは忘れずに、自分がどこを歩いているかを常に確認(推測)しながら歩くことが地図読み上達への道だ。
しかし、シノギングはミチクサも多い(笑)
油の木(ファットウッド)の見分け方と、フェザースティックの作り方。どうせみんなこんなの好きでしょう?(笑)
木目を見極めてナイフを正しく使えばフェザースティックも簡単に作れる。余計なことをあーだこーだ言わずに必要なことだけをシンプルに伝える。これがシノギング。
途中開けた場所があったので休憩することにする。常連さんは素早くハンモックを張ってのんびりくつろぐ。
一方ではロープワーク。ロープワークショーをするのではなく、シンプルでありながら実際に使えるロープワークだけを教える。
メタルマッチの使い方も。火起こしショーではないので火花をバチバチに飛ばす必要はなく、手元でカリっとやるだけでいいことがわかる。
いつものように長ーい休憩もあっという間に終わり、再び尾根を辿る。尾根上の植生のちょっとした変化も面白い。
771mの平坦地を過ぎて下り始めたあたりから東に伸びる尾根を下る作戦。見つけにくい支尾根の分岐は通り過ぎてから観察したほうがわかりやすい場合もある。それっぽい地形が見えたらその場所に行って目で見ることが大事。近付いて観察すると支尾根が続いていることがはっきり見える。
はい、みなさん、いらっしゃーい。
作戦通りに支尾根に乗ることができた。気持ちのいい尾根だ。みんなの顔も緩む。
・・・うん?尾根の先が、ない。藪っぽくなってストンと切れ落ちているではないか。シノギングではよくあることだが、林道を通すために尾根が削られてしまっているのだ。
道路が見えてからがクライマックス(笑)
最後に現れた難所を無事に凌いで、やったー!
A3サイズで用意した地形図のたった1/8の範囲、たった3キロを5時間かけて凌いだ。ルートハイキングや短時間に長い距離を歩くハイキングとは違う楽しみがシノギングにはある。そういうことを感じてもらえたならうれしい。
距離の長いシノギングもお泊りのシノギングも基本は同じ。シノギングを通じて地図読みや山歩きに必要ないろいろな術を学び身に付けることで遭難(外的要因を除く)しない安全な山歩きができる。
最後に、771別荘にて決して笑ってはいけないヤツ。
参加者のみなさんありがとうございました!
これをきっかけにシノギングを楽しんでください。
お忙しい中シノギングに同行して下さったSのI氏、ありがとうございました。
また次回一緒に凌げることを楽しみにしています。