四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
晩冬、雪の低山を凌ぐお泊りシノギング【前編】
恒例の冬を締めくくる我らがお泊りシノギングの季節がやってきた。奇しくも去年と同じ日付にて、去年のリベンジと行こうかとも考えたが、やはり天邪鬼な我々は新天地を目指し、ローカル鉄道にゆらりゆられてまるで人気のない駅に降り立つ。雪、あるねぇ。
いくつかルート候補は選んでいたが、実際の尾根と雪の具合を見て作戦会議。
一昨日までシトシトと雪は降っていたようで、ノートレースの雪道は見込めそうだ。その分シノラッセルで難儀しそうだが、周辺の尾根があまりにも気になるので、少し回り込むように大きな渓側から入り、小さな尾根から主稜線を目指すルートを取る。そうと決まればいざ出発。
しかし良い天気だ。そして気温も高めで陽気なのが残念。。
しばらく車道を辿り、目指す渓寄りに差し掛かると、入れと言わんばかりの鳥居が姿を現す。こ・こ・し・か・ない。
地図にも載っておらず、期待が高まる。道は消失しているので、「お邪魔します」と声を掛けながら、早くもフカフカの雪を踏み歩く。
しかし拝殿が一向に見当たらず。目指す小さな尾根もにょきっと姿を現し、少し急だが回り込んで楽な方を目指すまでもなさそうだ。ふと目をやると小さな祠がある。正にここから入れという事か。
先陣を切るキャメラマン。いい感じの斜度だ。
一登りするとポコッと拓けた場所にしっかり拝殿が鎮座していた。地図でも拓けてはいるが建物の表記すらなし。宝物を発見した気分だ。また当時の雰囲気が残る風情のあるお社であった。綺麗に保たれているので、今でも参詣する方が多いのだろう。
当然裏には尾根が延びている。何となくジグザグの道が見えるが、雪もあるしツボ足気味に直登する。
早くも凌ピッケルが大活躍。もはや雪の低山シノギングには必須道具だ。
少し痩せ、尾根らしくなってくるとまた何かが見える??
さながら先のお社の奥ノ院といった所だろう。中々急峻な尾根に位置しているが、今でもここまでくる方がいるのだろうか...
暫し平坦な尾根が続く。広くなっている箇所は雪も深くシノラッセルを強いられる。これこれ。
この辺りから一瞬登りが急になる。ツボ足でしっかり制動を掛けながら登る。血が一気に身体を巡る。
次第に雪に隠れた凍結箇所も散見し始めたので、無難にアイゼンを準備。少しだけなだらかな場所だが、それでも斜度はあるので気を付けながら装着す。
そして頭巾をかぶり我々は完全体となる。凌ニンジャがそろりそろりと尾根を辿る。
鈍色という色はこんなにも自然に馴染むのだ。
完全体となった我々に立ちはだかるは第一の「壁」
斜度はそこそこだが、距離が長い。少し傾いた長~い壁がずっと続いている印象。シノラッセルも相まって、これが心身へボッコボコにダメージを与えてくる。。
恐らく一番きついであろう先頭キャメラマン。。
あと少しーー
一先ず第一の「壁」は越えられた。暫しの休憩。早くも太ももがプルプル笑
ここからほんの少しだけ続くなだらかな尾根。束の間の休息ポイントだが、まだ先には奴が待ち構えている。
少しずつまた登り始める。ここでも一瞬壁のような急登あったが...
そうして第二の「壁」の様相が明らかとなる。ここを越えれば...。正に踏ん張りどころだ。
先頭を交代し、広い尾根を標高にして100mひたすら登る。
登る。。
登る!!!
広葉樹メインで非常に良い尾根ではあるが、いかんせんそれどころではない状態だ笑
半ば気合で乗り切り、再び少しだけ緩くなった箇所に降り立つ。
そして最後の砦、第三の「壁」を眼中に捉える。もう主稜線も見えている。ただ、この最後が一番きついのは言うまでもない...
もはや精神力が試される状況。ここは先より距離は短いが、再び先頭を代わり、一気に仕留めに掛かる。
明鏡止水が如く、淀みない鼓動を刻み、シノラッセルをこなす。上れ、登れ、昇れ。
あと少し!
到着。
尾根の壁から解放され、拓けた東側の山脈が眼前に広がる。得も言われぬ安堵感。月並みの言葉だが、長く険しい道だった。。
さて、ひとしきり解放感を味わった所で、本日の楽園へ。本来はもっと先の適地を目指す予定だったが、時間も気力も間に合わず、第二候補の少し手前の平地を目指す。ここも非常に期待値は高い。下るだけなので楽ちん。
くねくねと下っていくと次第に尾根が広くなっていく。ワクワクが止まらない。
すると異様なまで平坦な楽園が姿を現す。こ、ここは本当に標高1400mの山の中なのか??
木々の間隔も申し分なく、正直数十人レベルで張り放題のハンモック天国だ。相変わらず強欲な我々はその中でも最上級のポイントを求め、グルグルと歩き回る。
一通り探し回った所で、やっぱり気になる「燃やしてくれ」と言わんばかりの樹皮を垂らしたダケカンバの木...
という事で、そのすぐ横の適地を本日の寝床とす!
ザックをおろし一息つく。
さて、雪上ハンモック泊はここからが本番。各々安住の寝床に向けて準備をし始めるとしようか。
【後編】へ続く...
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