四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
ツユハラヒ(露払い)
クナド(久那土)、クナイ(苦無)と共に凌三種の神器として長年販売しているツユハラヒを改めて紹介しよう。
状況によっては多少濡れることがあるが、動きやすくて蒸れ知らず、着脱簡単軽量コンパクトな防水生地の前掛けである。シノギングのフィールドである森林限界以下の低山において季節を問わず出番の多いアイテムで、雨を凌ぎ、風を凌ぎ、寒さを凌ぐことができる(朝露や雪も凌げるのは言わずもがな)。すでに多くのシノラーさんが持っていてその有用性を実感されていることであろう。
ハイキングパンツの上に重ねて穿くから動きにくくて、発汗に対する透湿性が追い付かないから運動をすればするほど結露する、おまけにいつ穿こうかいつ脱ごうかの決断が難しい、完全防水にとらわれてしまったあの蒸し風呂地獄のような高機能レインパンツの不快と不便を一気に解消するいかにも凌らしいアイテムだ。
2013年の販売開始からアップデートは形状を見直した一度だけ。私自身ツユハラヒの試作品のテスト以来、かれこれ10年もレインパンツを穿いたことがないし必要と思ったことがない。
・・・でも濡れるんですよね?と不安を感じるのであればレインパンツを穿いていただいたほうがいいでしょう。
デザイン上の特徴は次の通り。
- 紐を結って調節するので幅広いウェストサイズに対応する。
- ベルトやストッパーがないからウェスト周りがすっきり。
- 筒状に閉じていないので風通しが非常によい。
- 筒状に閉じていないので風をはらんで浮き上がらない。
- 生地を前面で重ね合わせて広がる作りなので歩幅や段差に柔軟に対応する。
- 風にバタつくときには内股のスナップボタンで簡易なパンツに形状を変えられる。
- 適当な大きさに丸めて紐で巻いて仕舞えるので収納袋が不要。
- 生地が軽すぎないから綺麗なシルエットを保てる。
- 風にひらひらとなびく様子で凌の美学を表現できる。
通常はこのように使用する。紐の位置は使う人によって好みがあるだろうが腰骨の少し下で縛ると格好がつく。膝までを覆う長さなので膝下は是非クナイを合わせて凌いでいただきたい。
うしろ姿はこの通り結構開放的。これが足るを知るの絶妙な加減である。
簡易パンツ状にするためのスナップボタン。
スナップボタンを止めて簡易パンツ状にした様子。これでもちゃんと歩ける。
こうすることで風にバタつかず防水性が少し上がる。
スナップボタンを外側で止めれば着物の裾を端折ったようにできる。
端折りのうしろ姿。
使わない時には巻き物のように巻いてまとめてポケットに。凌ぎながら素早く簡単に着け外しできるのでためらうことがない。
素材は防風、防水、撥水、透湿性を備えるPERTEX SHIELD 2.5L(ポリウレタンコーティング)。2.5Lとは生地の構造を表し、表地+防水被膜+保護被膜の三層構造ではあるが保護被膜を0.5とするので2.5Lと表現する。生地メーカーが公表する防水透湿の検査データは耐水圧10,000mm、透湿量7,000g/㎡/dayと決して突出した値ではないがツユハラヒには必要十分である。
表面はこのように和を感じさせる変形リップストップ。
裏面にはコーティング面を保護するプリントが施されている。一般に3L(三層)生地は裏面に繊維(薄い布帛やニット)をラミネートするので、雨や汗を吸ってしまうと乾くまでにある程度の時間が必要だが、この生地は裏面に繊維を使っていないので濡れたとしても乾きが早い。
今の時期であれば凌始めの足腰の寒さを凌ぐのにとても有効である。
まだお持ちでない方は是非。
シノギングイベントではツユハラヒなどの凌アイテムをお試しいただくことができるので興味のある方はお気軽に参加を。
それではまた。