四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
暑さを凌ぐ、お泊り超シノギング 【前編】
またしても500円札で有名なその山界隈へ、今度は沢を詰め暑さを凌ぎながら、お泊りでのシノギング。晴れ間は拝めそうにないが、天候が持ちそうな二日間を狙って、梅雨に真っ向から挑んできた。むしろ愚図ついた天気の方が色々テストが出来て有り難い。厳しそうなら、楽な方に切り替えたり、折り返してくれば良い。そんな予定を話しながら、最寄りのバス停を下りると、暫く続く車道を歩き始める。
しかし、この時の我々はまだ知らなかった。超シノギングのそれへと誘われていたことを...
小さな集落を抜けると、今回の取り付きポイント。社もあるので、確と参拝し、各々準備に取り掛かる。
このポイントから沢は始まっており、まずは入渓せず、様子を見て沢沿いを進む。堰堤を過ぎ、ヌルヌルの橋を渡る。
実はこの沢は本命の沢ではなく、道中の支流に過ぎない。よって、巻けるところは巻く方向で進むが、どうしても渡渉しなければならない所もある訳で...
そうして潔く渡渉すると、もはや気持ちが良くて、入らずにはいられなくなる。
序盤は比較的明瞭なフミアトが沢沿いについており、無理なく進む。ただ、この沢(谷)を進むルートというのは本当に厄介で、簡単に現在地を見失う。しっかり地形図に線を引き、方角、尾根、谷、支流を確認しながら進む。しかし、苔が綺麗なこと。
フミアトがあると油断するべからず。崩落個所に直面。三者三様、慎重に凌ぐ。(二番手のボスが一番ビビっていたのは言うまでもない)
次第にフミアトは不明瞭になってくる。行けそうな所を見極めながら、左岸に出たり、右岸に出たり。はたまた沢を進んでみたり。
気候は、暑すぎず寒すぎずで、非常にちょうど良かった。暑くなってきたら沢に入り涼む。沢を絡めたルートはその辺り調整がしやすく、そもそも沢沿いを進む事での涼感は大きい。暑さを凌ぐにはやっぱり沢である。しかしながら、調子に乗って沢に浸かり過ぎると、暑い時期でも寒い思いをする羽目になるので、自分の体調を見ながら判断し、進みたい所。
倒木と苔と樹木とで、鬱蒼とした薄暗い道を進む。これも沢ルートの醍醐味。非常に凌らしい情景である。
小さな祠と大木が姿を現す。情報によると山の神が祭られているらしい。チェックチェック。
いや~気持ちがいい~。
ただ、サクッと終わるルートの予定だったが、思いのほか時間を費やしてしまう。ゴーロっぽい岩肌での脚の上げ下げ、沢歩き、斜度のある沢沿いの道、意外に労力も費やす。本命の沢に繋がる林道も近いはず。ダレ始めている気持ちを引き締めて進む。
箸休めのヤマカガシ。わかるかな?
箸休めの遺跡。最初車が埋まっているのかと思った。
この先で拓けそうだが、さて如何に。。。
拓けた。そして大きな堰堤が沢道を塞ぐ。ザレた堰堤の横をジリジリと詰めて登りあがる。
登りあがると何やら人工的な施しがされた景色が広がる。思わず行ってしまいそうになるが、ここはセオリー通り沢をタドル。さすれば林道にぶつかる事は明白だ。
そうこうしていると、林道にたどり着く。や、やっと合流できた。舗装路で心と体を癒す。
この先に本命の沢がある。しかし気分は少々下降気味。導入のナメ沢辺りをこなし、戻ってきてもうハンモックしちゃおうか?という気分。とりあえずそれらしき沢に取り付く。
何かが違う。。大きな堰堤を4つ越えるはずだが、そもそも堰堤が入る程の沢筋ではない。どうやら、違う沢に入ってしまったようだ。よくよく考えると林道は下にも続いていた。最後に林道へと辿った道は、少し上に出てしまったのではないか。そう仮説を立て、林道へ戻る事に。
林道を下ると大きく拓け、終点となる。横に沢も堰堤も見える。ここで間違いなさそうだ。
順調に4つの堰堤を越えていく。しかしこの辺りの枝は良く乾いていてパキパキ鳴る。後の焚き火用に使いたい所だが。
沢に合流し少し進むと、おやおや?何か燦然と輝いてないかい?
少々話が違うくらいに斜度がある。しかも良い感じでナメている。更に上にも2段続いている。とりあえず流れの所を登るしかなさそうだが、これ登れるかな...
1人ずつ挑んでいく。まずは谷島。どりゃー!
登れた!次、ボス。どりゃりゃー!!
登れた!!最後、キャメラマン小川。どりゃりゃりゃー???最後をスマートに切り抜ける。
この調子で2段目にも挑戦。さすがの斜度とナメ加減と、横もヌルヌルで全く太刀打ちできない。我々の装備ではここが限界か。
じゃあここでUターンして戻るか。と、ふと冷静に考えてみる。。
1段目の登るのがやっとだったナメ沢を下るだと?
1段目でも5mの滝で高さもあり、滑って下りるには危険すぎる。今回に限ってお助け紐の装備を誰も持参していなかった。周りに巻けそうな道もない。少々認識があまかった。(ここに関しては深く反省する)
残された道は、この壁のようにそびえ立つ斜面を登り、尾根に出て、それを辿って戻るしかない。
覚悟を決めて登り始める。
こうして、長い長~い超シノギングが幕を開けるのであった。。
後編へ続く