四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
銅山の町から世界遺産の町へと辿るシノギング
路線バスに揺られること小一時間。そこは赤茶けて煤けた暗く悲しい銅山の町・・・。そんな勝手な思い込みとはまったく違う、のどかで明るい集落に降り立った。
今から辿るのは深沢~半月峠~狸窪を結ぶ道(県道中宮祠足尾線)。最盛期には数軒の茶屋があり、日光側からは銅山を見学する観光客、この地区からは二荒山神社に詣でる参拝客でたいそうにぎわったそうだ(もちろん歩き旅)。今回のシノギングは、一部はこの古道を、一部は古道から外れた凌道を辿る、そんな旅である。
バス停から見えるA山。
険しい西面、南面を避けてまずは沢沿いの古道を辿る。
一回目の渡渉。後に足首がチクリとして気付いたが、この時に蛭吸着・・・。
気温は20℃くらいだろうか、秋冬の着こなしか春夏の着こなしか大いに迷ったが、行動中はハチジュウハチヤ長袖にタッツケでちょうどいい。クビマキ shortは暑苦しくなく、そしていつの間にか汗を吸ってくる優れモノだ。
足元の紅葉と細引きを巻いた凌ピッケル。握りが柔らかくなり秋冬シーズンは鉄の冷たさを和らげてくれる。
かつては多くの人の往来があったこの道。いま歩く人はほどんどなくやや荒れてはいるが、それでも道幅は広く比較的歩きやすい。突然姿を見せた立派な石組みと石灯篭は一の茶屋の跡だという。
二条の小滝のところで二回目の渡渉。その後またすぐに三回目の渡渉をこなして古道から外れる。
1166mの尾根に乗るべく約70mの急登を凌ぎ始める。
確かに地形図の等高線は詰まっているが、それ以上に傾斜はきつくまさに壁。
横から撮らないと壁の傾斜が伝わらないがこれでも立派な壁。こんな壁には凌ピッケルが頼りになる。
尾根に乗った。
比較的新しい三連クマの糞。猪や狸の糞とは明らかに異なる。
緩急を繰り返し1,350mあたりから小笹の敷かれた尾根に変わる。
浅く、深く、小笹の尾根が続く。タッツケはこういうイネ科植物の葉のギザギザに弱い(製品には注意下札が付いています)ので、ツユハラヒとクナイで防御するのがよい。
ここかな~、いや、もう一つ先の方が良いかもしれない・・・。尾根の鞍部をハンモック適地を求めてうろうろする。
三度目の正直で文句のない敵地に出た。早速設営。このあと雨が降る予報なのでヤナギニカゼをすぐに雨対応にできるように張っておく。
笹原に馴染む渋い夕日色。
ひと夜を凌ぐのはモグ350とゲッカビジン二重織り。予想最低気温は8℃なのでまったく問題ないだろう。
設営を終えてサッポロ黒ラベルを呑み始めるとあたりは霧に包まれ始めた。
雨は風を伴い時に強く打ち付けた。ヤナギニカゼの撥水性は非常に優れており、耐水圧900mmのポリカーボネートコーティングは水分を含まないので安心感が高い。長辺の接ぎ(縫い目)に小さな雨粒を確認したがそれ以上にはならなかった。
とてもよく燃える自作の煙突ストーブで湿気た薪を乾かしながらお鍋とぬる燗。雨音を聞きながらの晩酌も乙なもの。
深夜、笹原をこちらに近づいてくる足音にびびりまくったが無事に朝を迎えた(ほっ)。
今回、モグ350とゲッカビジン二重織りの組み合わせでひと夜を凌いでみて、これよりも10cm巾の狭いゲッカビジン平織りの方がモグと相性がいいのかなと思った。寝袋のように包み込んで保温性を確保するのがモグの最大の特長だが、それが故にのびのびとした二重織りの寝心地を100%活かすことが難しいのだ。荷物が増える秋冬シーズンこそ、二重織りよりも軽く小さく収納できる平織りの良さを活かせるのではないかと。これについてはそのうち検証してみよう。二重織りの寝心地の良さを最も実感できるのはやはり掛布団と敷布団の組み合わせだろう。
撤収。こう見えてバックパックに詰め込む順番を考えてまとめている。昨日の渡渉で濡れたinov8は濡れたままだし、昨日の雨で笹が濡れているだろうから昨日の濡れた靴下をもう一度履く・・・。
名残惜しく出立ギリギリまでゲッカビジン二重織りに揺られる。
地形図では尾根に沿って破線が引かれているがそれらしい踏み跡はなく、この林道の名残のような道を辿ってみることにする。
ほどなくして県道中宮祠足尾線の名残の林道に出る。
色づき始めた尾根の向こうには、我々は行くことなどないであろう栃木ー群馬県境の名峰皇海山の姿。山は見るもの。
快適な林道から再び踏み跡へ。
足元の紅葉が美しい。
このエリアでよく見るマーク。道しるべかな?
99%のハイカーは半月峠から半月山を目指すので、こちら側に足を踏み入れるハイカーはよほどの人嫌い(笑)
踏み跡薄いトラバースの崩落地帯を安全に高巻いて・・・。
そろそろ半月峠。損傷した私の半月板は何とか半月峠までもってくれた。
半月峠からはハイカーに混じって狸窪まで下る。苔が美しい、一生日陰みたいな北斜面(笑)
狸窪からは静かな湖畔歩きを楽しむ。
湖面の標高1,200mという中禅寺湖の向こうには、我々は行くことなどないであろう関東以北で最も標高の高い日光白根をはじめとする山並み。やっぱり山は見るものだ。
近隣に道路が開通した昭和11年以降、今回凌いだ深沢~半月峠~狸窪を結ぶ道(県道中宮祠足尾線)の利用者は激減したという。時代の流れに忘れ去られそうな道ではあるが、シノギングを学べば往時の賑わいを感じながら安全に辿ることができる。凌の着こなしはひょっとしたらその頃の人たちの着こなしに似ているかもしれない・・・。
この後、ナメてはいけない世界遺産三連休渋滞にどっぷりはまるという、この旅一番の苦行が待っていた!!
みなさまも道中ご安全に。
■古道と尾根を凌いだアイテム
クビマキ short(タオル代わりに)
シルベ(絶賛販売中)
ハチジュウハチヤ長袖(まだまだ販売中)
タッツケ(まだまだ販売中)
クナイ(絶賛販売中)
ヤマバッグ XP(絶賛販売中)
タモツウルオス XP(絶賛販売中)
凌ピッケル(絶賛販売中)
ウバステヤマ 55L(仮称・研究開発中)
■一夜を凌いだアイテム
ヤナギニカゼ(最終版・年内売り出し予定)
ゲッカビジン二重織り(完売・年内再販予定)
モグ 350(絶賛販売中)
ハンテン insulated(絶賛販売中)
マタギ 尾州(絶賛販売中)
カルフワステテコ(まだまだ販売中)
クイックレッグウォーマー(旧品)
行燈風シェード(絶賛販売中)
シノギチャブダイ240mm×300mm(絶賛販売中)
ヌノバケツ ×2(旧品・試作品)
凌風呂敷 44cm&54cm(絶賛販売中)

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