※前回の秋田の記事はこちら(19節・磐田戦、0-2)
※前回の藤枝の記事はこちら(19節・栃木戦、1-1)
<秋田スタメン> ※()内は前試合のスタメン
- ルヴァン杯の影響で21節・清水戦がズレ込んだため、2週間空きとなる。
- 負傷離脱していた齋藤と中村が復帰してメンバー入り、中村はベンチだが齊藤はいきなりスタメンに。
- 沖野が復帰後初のスタメン。
<藤枝スタメン>
- 特別指定の永田が初のメンバー入り。
- 金浦の負傷が発表され、天皇杯2回戦(仙台戦、0-1)で発生して全治2か月との事。
- 山田将之の負傷が発表され、同じく天皇杯2回戦で発生して全治2~3週間との事。
丁度一巡して折り返しとなる今節。(秋田は21節がズレ込んだため例外)
藤枝にとっては、「ポゼッションvs堅守速攻」の試金石になりそうな秋田との一戦になりました。
しかし秋田のホーム(ソユースタジアム)でかつ、夏の入り口にも拘らず14時キックオフというデーゲーム。
さらに風も強めと、「自分達のサッカー」を貫くにはアゲンストの状況が多くあり。
闇雲にポゼッションスタイルを維持するのは愚の骨頂、といった判断があったでしょうか。
秋田サイドは平常運転のロングボールを蹴り込むスタイルで攻め上がり。
そこから得たコーナーキック攻勢、2本目でキッカー沖野のクロスを中央で青木が合わせヘディングシュート(ゴール左へ外れる)と、はやフィニッシュに持ち込み。(前半3分)
ここまでは順風かと思われた秋田でしたが、上記の藤枝の思惑を想像するには至っていなかったようで、そこに落とし穴が待ち受けていました。
前半は風上に立った藤枝も直後にロングボール攻勢を仕掛け、左スローインで山原が遠距離を投げ込み。
これが阿部のクリアミスも挟まって渡邉に渡り、奥からカットインで一気にエリア内中央を窺う渡邉、そのままシュートを放ち。
戻った阿部がブロックするも、跳ね返りを詰めた水野のシュートがブロックの合間を縫ってゴールに突き刺さります。
環境に順応するかのように、割り切った攻めを仕掛けた藤枝に早速幸運が齎されたといった先制点になりました。
出鼻を挫かれた秋田は、前回観た際にサッカーとは無関係な所で悪目立ちしていた高田が、この日も苛立ちを隠せない切欠となり。
6分に左サイド奥でボールキープする横山(ここもスローインを直接受けてのキープ)に対応した高田ですが、ボールはラインを割り無事ゴールキックとなったものの、激しいデュエルの末にヒートアップを起こしてしまい横山と小競り合い。
しこりを残したまま攻める秋田、反則により右サイド遠目からのフリーキックを得たものの、ここでキッカーを務めた高田が一度フェイクを入れた事で中央で揉み合いが生まれ。
渡邉が倒れた事で笛が吹かれてやり直しと、折角の好機もリズムの悪さの方が目立つ事に。(結局入れられたクロスはGK上田がキャッチ)
このままズルズルいくかと思われた秋田ですが、11分に浮き球を巧く運び、ポストプレイ→ダイレクトパスの定番の連携で齋藤が裏を取って好機が生まれ。
奥でキープする沖野の戻しを経て高田がクロスを上げると、先程の冷静さを欠くような光景が嘘のような、素晴らしい精度で高い弧を描いた末に青木がヘディングシュート。
川島のブロックも及ばずゴールに突き刺さり、目の覚めるような同点弾となりました。
これを切欠に、沖野が右サイドで深さを取る攻めに活路を見出す秋田。
向かい風も巧く利用し、早めの段階で裏を突くロングボールを送り、戻りを利用して受けさせるという場面を増やします。
追い風だろうと向かい風だろうと、ホームである以上環境を巧く利用出来るのは自分達である、という証明を果たしにいったかのようであり。
しかし藤枝も19分にクリアボールを渡邉が落とし、拾った岩渕が左ハーフレーンをドリブルで突き進み。
そしてボールを巧く置いた末にミドルシュートを放つもGK圍がセーブと、手数の少ない素早い運びはこの日徹底されている風でありました。
奇しくもお互い似通ったサッカーのぶつかり合いとなり。
20分台は秋田が押しまくり、例によってセットプレーから攻め立て。
自陣からの放り込みやロングスロー、CKと三種の神器を織り交ぜて好機を作っていきます。
しかし29分の右CKでは、キッカー沖野のクロスがファーにポッカリ空いたスペースを突き、ボレーで合わせにいった飯尾でしたがミートせずに終わり。
これがアジャストして決まっていれば……と、ifの世界を想像しても仕方なく。
一方藤枝はこれを境に、最後方から繋ぐという普段通りのサッカーを開始します。
30分には中央を縦パスで繋いだ末に左へ展開、榎本がカットインからクロス。
クリアされるも水野が拾って継続、前進からエリア内へパスを送るとともに自身も切れ込み、新井からのリターンを経てシュート。
ブロックされ、尚もエリア内で拾って継続するも秋田の守備対応もあって追撃は出来ず。
一つ藤枝らしい攻めを見せたかと思えば、続く31分に水野がロングパスで一気に最前線に送るという具合に、あくまでロングボールを送る姿勢は崩さないという双方混ぜ合わせる攻撃。
ここから前線で渡邉が飯尾に倒されて反則(飯尾に警告)となった事で、右サイド奥からのFKという好機が生まれ。
これをキッカー横山はグラウンダーでのクロスと意表を突き、クリアされるも跳ね返りを久保がミドルシュート。(エリア内でブロック)
速攻と遅攻のハイブリッドといった藤枝のスタイルに、秋田の対応も一層難しいものとなり。
そして34分秋田の空中での運びを跳ね返し、横山フリック→渡邉ポストプレイを経て横山が確保すると、陣形の乱れを突いて中央へとスルーパス。
受けた渡邉が綺麗に抜け出し、GKと一対一を完成された末にエリア内からループシュートで仕上げます。
ボールは右ポスト内側を叩いたものの無事にゴールに吸い込まれ、勝ち越しを果たした藤枝。
秋田はベクトルの切り替えを突かれた格好で、「自分達のサッカー」を相手が行った際への対応の拙さが浮き彫りとなってしまったでしょうか。
再び追い掛ける立場となり、圧力を掛けにいく秋田。
しかし36分にカウンターでまたもその前掛かりな姿勢を突く藤枝、久保がドリブルで右サイドを持ち運ぶも、グラウンダーでのクロスは合わずにクリアされ。
堅守速攻スタイルとなっていたのは藤枝の方に。
気を取り直して攻める秋田、その後は例によってセットプレーを交えて好機を膨らませたものの、ゴールに至るには難しく。
終盤の藤枝は、ボールキープで相手に攻撃機会を与えない意識を強めていたのも影響したでしょうか。
その中で44分に右サイドでショートパス攻勢で前進した末に、中央へのパスを新井がダイレクトでミドルシュート(枠外)と、隙を見て追加点を狙う意識も植え付け。
結局1-2のまま終了を迎えた前半戦。
そして始まった後半戦。
秋田は攻勢の流れを作りたい所でしたが、その欲望が焦りを生んでしまったでしょうか。
後半2分の藤枝、ゴールキックで渡邉狙いのロングフィードから、こぼれ球を拾って右サイドでボール保持のパスワーク。
秋田ディフェンスの寄せを際どくかわした末にサイドチェンジが決まり、受けた久保がカットインシュートをチラつかせながらグラウンダーのクロスを入れた事で、ノーマークが出来上がった末に横山が合わせシュート。(ニアに居た渡邉もノーマーク)
ゴール右へと突き刺さり、後半開始早々の追加点を奪いました。
いきなり点差を広げられてしまった秋田、その後も攻勢どころか更なる失点の危機が膨らむ光景しか作れず。
8分には渡邉の中央突破から久保へと渡り、右ポケット角でのボールキープからシュート。(GK圍キャッチ)
続く9分には最終ラインからのビルドアップでプレッシングを引き寄せるという本来の姿勢から、縦パスを2つ挟んで左の榎本に渡す実に藤枝らしい前進。
そして岩渕のスルーパスで崩し、左ポケットに走り込んだ榎本がシュートを放ち、GK圍が足でセーブしても尚渡邉が拾って再度シュート(GK圍セーブ)という連撃。
藤枝の怒涛の攻撃を受け、流れを変えるべくという形で秋田は最初に交代カードに手を付け。(13分)
飯尾・沖野・齋藤→水谷・中村・丹羽と一挙に3枚替えを敢行し、才藤が左サイドバックへシフトします。
大きく動いてきた秋田を警戒したか、その後スローインでの再開の際に遅延行為を取られる藤枝(再開を促された後にスロワーを変える)、榎本が警告を受け。
前半から双方ともに随分と判定にナイーブになっていた(特に秋田サイド、普段通りのようなデュエルでも結構反則を取られていた)感がありましたが、この判定を境にその傾向が強まった感がありました。
16分の藤枝、自陣で横山がボールキープする所を田中に倒され、奪われるも岩渕がスライディングで水谷からボール奪取して継続。
反則とも思えた岩渕のプレーでしたが主審(野堀桂佑氏)は流し、そのまま久保のアーリークロスでゴールを狙いにいった藤枝。(GK圍がキャッチ)
双方倒された事で、笛を吹くのが難しくなったというような光景であり。
試合が荒れ始める中で、流れを掴みたい秋田は17分に右サイドから高田のロングスロー。
ニアで河野がフリックにいくもこぼれ球となり、エリア内で拾った青木がシュートと決定機に。
新井がブロックしたこぼれ球をさらに中村が追撃しますが、これも久富のブロックに阻まれ。
偶発的ながらも、こうしたシュートチャンスはモノにしたい所でしたが……。
その後秋田の攻撃はスローインの漸進戦術ぐらいのもので、やはり焦りが先立ち。
藤枝は24分にベンチが動き岩渕→矢村へと交代、矢村の1トップとなり渡邉がシャドーへと回り。
直後に空中戦からボールを確保し、秋田ディフェンスを寄せたうえで渡邉が左→右へサイドチェンジと、3点目と類似した攻撃。
そして久保が右ポケットを突き、カットインで中央からシュート(ブロック)と、尚も追加点を狙う姿勢を見せ。
一方の秋田も27分に田中→小柳へと交代。
29分にはまたも遅延行為を取られてしまう藤枝、今度はゴールキックの際にGK上田が警告を受ける事に。
こうした降り積もりが、試合終了時の爆発を生んでしまったでしょうか。
戻ってきた中村の居る右サイドで押し込みを掛ける秋田。
やはりその存在感は大きいといった所ですが、2点ビハインドからでは遅いというのも事実であり、トップコンディションに戻ってスタメン復帰が待たれる所です。
それでも、フィニッシュは31分再び高田のスローインからで、ロングスローフェイントを交えて水谷のクロス。
ファーサイドで阿部の折り返しを経て河野がヘディングシュート(GK上田キャッチ)と、スローインの流れでしか生まれない好機。(35分に藤山→畑へと交代、水谷がボランチへ回る)
果敢に4点目を狙いにいくという、「超攻撃エンターテイメントサッカー」の本領を発揮せんとする藤枝。
しかし36分、相手のクリアボールを新井が跳ね返し、さらに渡邉が落とした所チャージを受けて倒れ込み。
そしてボールの先に目を移しても、走り込んだ矢村が才藤に倒されますが、矢村がオフサイドを取られたため反則すら無しとなり。
このシーンと相成って、その後青木が反則を取られた際に、須藤大輔監督の大声での異議が響く事態となります。
いよいよもって不満を隠せない状態となり。(42分に藤枝は横山・榎本→小関・永田へと交代)
45分に秋田のFKの際に、才藤に原因不明の警告が出される(恐らくは異議か?)など、審判側もナイーブな状態に陥っていたでしょうか。
何とか得点を返したい秋田はCKを獲得すると、GK圍が前線に加わる総動員体制に。
その結果齎されたのは藤枝のカウンターで、クリアボールに渡邉が走り込み、その後ろで圍が必死に戻るという失点必須のレアな絵図が生まれます。
前には並走する秋田ディフェンスが1人という場面で、スルーパスを選択した渡邉の後方から久保が走り込み、そして放たれたシュートが無人のゴールへ向かい。
しかし突き刺さる前に主審の笛が鳴り、何故かオフサイドの判定でノーゴールとなります。
ボールの前に相手が1人しかいない状況故に「オフサイドラインはボールを持った選手(つまりパスを出した渡邉の位置)」で、つまり確実にオンサイドのような気がしましたが、試合終了間際という事であっさり片づけられ。(先日のJ3・讃岐vs奈良の終盤っぽい)
その後目安の時間(4分)が経過という所で、さらに藤枝がカウンターに持ち込み。
しかし敵陣に切り込み、4対2が出来たという所で試合終了を告げる笛が鳴り。
余りのタイミングの悪さに、矢村ならびに須藤監督が不満を爆発させる事態となりました。
結局両者に警告が突き出され、勝ったにも拘らず後味の悪さを残す事となった藤枝。
しかし内容自体は秋田対策ともいうべく割り切ったスタイルでリードを奪い、追加点も得たその後も好機を作り続けるという完勝に近い形であり。
終盤は山を越えたかのように4点目に肉薄するも、不運な形で阻まれる格好となり、エンターテイメントを魅せるのも大変といった所でしょうか。