※前回の熊本の記事はこちら(18節・山形戦、0-3)
※前回の清水の記事はこちら(16節・千葉戦、0-1)
<熊本スタメン> ※()は前節のスタメン
- 天皇杯2回戦(J3・琉球戦)は6/21開催予定なので、純粋に前試合から中7日で挑む。
- 江崎が累積警告のため出場停止。
<清水スタメン>
- 前節(山形戦、1-2)の4-2-3-1から、4-4-2へとマイナーチェンジ。
- 天皇杯2回戦(J3・岐阜戦、1-2)からは鈴木・宮本航が継続スタメン。途中出場は北爪・ホナウド・カルリーニョス・オセフン。
- 前節負傷交代した神谷だが、無事らしく今節もスタメン出場。
- 特別指定の高木がプロ初スタメン。
- 竹内が今季初のメンバー入り。(天皇杯2回戦に途中出場)
得点数はリーグでも断トツトップ(38)の清水。
その攻撃力を如何なく発揮している中で順位は伸びずとあれば、守備の乱れを疑いたくなるものの、得失点差もトップ(22)とそれほど悪くなく。
得点・失点というデータでは、J2屈指の戦力に相応しい成績と言って良いでしょう。
しかし昇格圏外(10位)に位置しているという現実は変わらず。
ここ4試合で3敗を喫しており、いずれも1点差とあっては、「勝つ時は大勝・負ける時は惜敗」というドツボに嵌っているのは明らかであり。
おまけに天皇杯2回戦では下位カテゴリのクラブ(岐阜)に膝を屈し、昇格に向けてはまさにデッドラインの状況と言うべきでしょうか。
そんな中、この日は勝ち点差1という僅差の位置にいる熊本が相手。
巨大戦力と評される清水ですが、乾はじめ離脱者が膨らんでいる(放送席の談)状況。
その影響を受け、センターバックに特別指定選手の高木(阪南大在学中)を起用と大胆な手を打って来ました。
ロングボールの蹴り合いを経て、先に好機に辿り着いたのは清水で前半3分。
左→右へのサイドチェンジから、北爪がエリア内へスルーパスを送ったものの、走り込んだオセフンは黒木に倒されて受けられず。(反則無し)
PKならずといういかにも不満が溜まり易いシチュエーションでしたが、その後熊本が回収するも縦パスを宮本航がカットし、すかさずミドルシュート(枠外)とやられたらやり返す絵図に。
「接戦に弱い清水」のレッテルを払拭するかの如き攻めを見せました。
その後5分に、左サイドで推進しようとするカルリーニョスに対し阿部・大本の2人が付いてそれを阻む熊本。
14分には中盤でボールキープするサンタナを3人が囲んで奪うなど、圧倒的な個の暴力vs全員サッカーで防衛といった図式が自然と出来ていたでしょうか。
しかし時間が経つにつれて、熊本が組織力で上回りを見せ。
敵陣ではビルドアップを阻み、自陣ではプレッシングをかわすシーンを頻発させ、清水の勢いを削いでいきます。
次第に粗雑な攻撃が目立ってきた清水、攻撃が途切れてもすかさずゲーゲンプレスを仕掛けて即時奪回を狙うものの、熊本はそれも良くいなし。
11分と13分にいずれも敵陣でボール奪取し、共に粟飯原がミドルシュートを放つ(前者はGK権田キャッチ・後者はブロック)など、フィニッシュシーンも多々生まれます。
悪くなってきたリズムを受け、17分頃からサイドハーフを入れ替えてカルリーニョスが右・神谷が左に入ったものの、カンフル剤とはならず。
その主要因は、清水のビルドアップvs熊本のプレッシングで劣勢だった事でしょうか。
2CB+ドイスボランチを基本としてのビルドアップ(ボックスか丁の字型かは流動的)で、両サイドバックに高い位置を取らせるのを軸とした清水。
しかしその4人に対し、3トップ+平川の4人で数的同数を作って規制を掛けるスタイルが嵌った熊本。
苦し紛れにサイドに出してもウイングバックのプレッシャーで詰まり、運ぶ事はままならずという時間が続きます。
相手が対応できないうちに先制点に辿り着きたい熊本、21分には左サイドでドリブル・パスを交えて繊細に前進していき、松岡がグラウンダーでクロス。
ニアサイドで粟飯原が合わせる決定機となりましたが、鈴木のブロックに阻まれてゴールはなりません。
すると25分辺りから、右SBの北爪が上がらずにビルドアップに絡む姿勢を見せる清水。
その後、プレーが止まった際に鈴木とGK権田が何やらその右サイドを指さしながら戦術を話し込むシーンもあり。
以降左の吉田が最終ラインに残る形を固定化(北爪を上げたいという意思を2人は話し合っていたのだろうか)し、これで5対4が出来上がり何とか解決を見せます。
サイドもケアしなければならなくなった熊本の前線、これによりWBが前に出るか残るかという選択を突き付けられる格好に。
しかし守備面の課題は依然として健在な清水。
ゲーゲンプレスをはじめとした前掛かりな姿勢は貫かれるものの、熊本の細かいパスの前に無意味と化すシーンが続出。
特に、清水選手がボールホルダーに詰めにいく瞬間を見計らい、すかさずその裏を取ってパスを受けるという熊本の徹底ぶりに苦しめられます。
一方システム面でも、自在に浮遊する島村を捕まえられず、中央で受けられては右ワイドの大本をフリーにさせてしまうという悪循環を招き。
これまでの敗戦パターンである「押し続けるもゴールが遠い」というものからは逸脱しているものの、逆に押され続ける厳しい展開を強いられる清水。
29分に再び決定機を作る熊本、右サイドから前進していき大本がスルーパスを受けて奥を取りマイナスのクロス。
エリア内に走り込む島村には合わずも、エリア外に流れた所を平川がシュートし、これを高木がブロックで何とか防ぎ。
その後の熊本の繋ぎも凌いだ清水、すかさずカウンターに持ち込み、神谷が対角線のスルーパス(左→右)を北爪に通してアタッキングサードへ。
そしてラストパスをエリア内へ送り、オセフンがシュートにいきましたがサンタナと被ってしまい撃てずと、不運が絡みモノに出来ません。
組織力で上回られるなか、一糸を通さんという姿勢の清水。
しかし前半の終盤にはそれも無くなり、押し込まれ続ける状況となり。
島村が降りてボランチの位置でパスを出しては、上村が最前線でスルーパスに抜け出すという具合に、熊本の変幻自在というべきポジションチェンジは巨大戦力の清水相手にも有効であり。
常時アタッキングサードを脅かし続けます。
決定機は44分で自陣右でのスローインから、スルーパスに走り込んだのは平川で右ポケットに切り込み溜めを作ったのち、叩きを経て大本のクロス。
これをファーサイドで粟飯原がヘディングシュートを放ちましたが、GK権田のセーブでゴールならず。
その後もアディショナルタイムまでペースを握り続け、前半を終えました。
巻き返しを図りたい清水ですが、交代は無し。
その代わりにSH同士を再度入れ替え、スタート時と同じ神谷=右・カルリーニョス=左となりました。
その後半の入り、いきなり北爪のロングスローという形振り構わない姿勢を見せる清水。
しかもここからオセフンがフリックで繋ぎ、エリア手前中央で浮き球を巧くコントロールした宮本のミドルシュートが炸裂し、惜しくもゴールバー直撃という決定機が生まれます。
勝ち点3に向け、どんな形でも良いからゴールが欲しいという意思に偽りは無く。
しかし後半4分、熊本の右サイドでのスローインからの攻め。
島村のドリブルからのクロスこそブロックするも、クリアミスが絡んで竹本に右ポケットからシュートを浴びてしまい。(ブロック)
これを境に再び押され始め、9分には熊本最終ラインに対して果敢にハイプレスにいきましたが、SH以前の4人が前に出た所を後方が連動しておらずにフリーとなっていた上村に通され。
ここから前に運ばれてピンチを招く(左からのクロスをファーサイドで収めた島村がシュート・ブロック)という具合に、組織力で後れを取っている状況は変えられません。
この直後に神谷→中山に交代と、最初にカードを切った清水。
その後もサイドチェンジを交えながら、両ポケットを執拗に突く攻撃を仕掛ける熊本。
清水は圧されながらもGK権田を中心に良く防ぎ、初スタメンの高木も奮闘しゴールを割らせず。
かくしてポケットから送られるグラウンダーのクロスも跳ね返し、島村からひたすら放たれるカットインシュートもブロック。
清水ディフェンスの粘りに対し、熊本の攻撃もややワンパターン化してしまっていたでしょうか。
フリーになった大本へのスルーパスが繋がらずといったシーンも頻発させるなど、次第にその攻撃は乱れ始め。
後はゴールが欲しい清水、16分に再びベンチが動きオセフン・吉田→北川・岸本へと2枚替え。
その後も熊本の攻勢は続きますが、17分のセットプレー(左サイドからのフリーキック)からの大西のシュート(枠外)を境にフィニッシュには繋げられず。
そして相手の勢いが衰えた所を狙うという解り易い展開となります。
26分ついに好機が訪れた清水、最終ラインからミドルパスの連続で前線に運び、中山が右からカットインでエリア内を突き。
ここで中央への戻しを選択すると、カルリーニョスのミドルシュートが炸裂し、GK田代がセーブしたこぼれを詰めにいく決定機に。
サンタナはディフェンスに遭い撃てずも北爪がシュート、ブロックされて尚もカルリーニョスがシュートするもこれもGK田代がセーブと、3連撃を防がれましたがこれでようやくこの日初のコーナーキックを得た清水。
キッカーはカルリーニョスも、モノにしたい清水と何としても防ぎたい熊本の意地がぶつかり合った結果、ポジショニングの段階で何度も主審の待ったが掛かるジリジリした展開が描かれます。
結局この右CK、中央へのクロスから高木がヘディングシュートを放ったものの枠外に。
押し続けたもののゴール出来ず、一転して失点の危機となった熊本。
30分に左サイドで裏をった松岡、ミドルパスを受けて奥へ切り込み、ポケットへ進入しての切り返しを経てシュート。
ブロックされたこぼれ球を粟飯原ポストプレイ→島村シュートで追撃するも枠を捉えられず。
ともにゴールに後一歩に迫るという乱戦様相となって来た所で、熊本もカードを切り粟飯原・松岡→大崎・東山へと2枚替え。
さらに32分には竹本→田辺へと交代します。
不動のレギュラーともいうべきメンバーが変わると、戦力落ちは免れないという印象の熊本。
32分に代わって入った東山が裏へと走り込む絶好のシーンが生まれましたが、抜け出すのが早く島村のスルーパスは完全にオフサイドとなってしまい。
かくして盤石かと思われた熊本の組織力が乱れる、清水の望むべき展開が訪れます。
清水も暫くは好機を作れない時間が続いたものの、迎えた37分。
最終ラインから左サイドをパスワークで前進、ホナウド→岸本へのパスはズレるも、奥でカルリーニョスが拾ってそのままドリブルと怪我の功名となり。
そして奥を突いてカットインしポケットからシュート、GK田代がセーブするもホナウドが拾って継続し、右へ叩いて北爪のクロスをヘディングシュートに持っていったのは再びカルリーニョス。
これもGK田代がセーブと26分の好機のシーンの再来となったものの、今度は3本目を決めます。
詰めにいった北川は撃てずも、こぼれた所を追撃したのはまたもカルリーニョスで、ついにゴールネットを揺らしました。
3連撃の2セットのうち5本もシュートを放ったカルリーニョス、とうとう得点に辿り着いてリードを奪った清水。
この直後に2枚替え、殊勲のカルリーニョスを退かせて(西澤と交代・同時に宮本航→竹内へと交代)リードを守る意識を強める清水。
しかしその体勢は万全とはいかず、アクシデントが襲います。
39分最終ラインで高木がボールキープする所、大崎のチャージを受けてしまい反則。(大崎に警告)
この時に足を攣らせたか痛めたかして、起き上がれなくなってしまった高木。
既に交代枠は使いきっており、思わぬ形でピンチが到来します。
そしてプレー続行という選択をした高木ですが、ディフェンスに入る余力は無くホナウドがCB・西澤がボランチ・北川がSHに回る事で埋めに掛かり。
最前線のFWに移動した高木、42分に再び倒れ込み、続行不可能かと思われましたが自ら起き上がりピッチ外→復帰で尚も続け。
感動を呼び込むと同時に、「まだ正式契約もしてない段階でここまで使い潰すとは何事だ」という懸念も過るシーンでもありました。
にも拘らずの高木のポストプレイも交わり、サンタナが2連続でシュートを放ったのが44分。(いずれもブロック)
そんな光景に圧されたか、反撃の機運を生み出せない熊本。
ATに入り島村がミドルシュートを放つ(ブロック)も、同時に足を痛める事態となってしまった島村。
これで土信田と交代する事となり、攻撃の主役は平川のみとなってしまいさらにそれに拍車を掛け。
その島村のシュートで得たCKで、GK田代も上がって何とか同点への道筋を作らんとします。
しかし大崎のヘディングシュートがGK権田にキャッチされると、逆にGK不在のゴールに決められる危惧が生まれ。(ディフェンスが何とか防ぐ)
そして最後は岸本が自陣からドリブルを仕掛け、一気に左奥まで運び時間を消費した清水。
這う這うの体ながらも、ウノゼロで勝利を挙げました。
万全とは言い難いながら、接戦をモノにしての勝ち点3が、昇格へのエンジン搭載となる事を祈るばかりでしょう。