※前回の長崎の記事はこちら(6節・秋田戦、5-1)
※前回の鳥栖の記事はこちら(6節・富山戦、1-0)
<長崎スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 水曜(4/9)にルヴァン杯2回戦(J1・湘南戦、延長1-2)が挟まる。そこからの継続スタメンは高畑・名倉・松本天の3名で、高畑は120分フル出場。また山田陸・増山・ジェズス・ギリェルメの4名が途中出場。
- 6節で負傷交代した山口は以降ベンチ外が続く。
<鳥栖スタメン>
- 松本凪がJ1・セレッソからレンタルで加入し、7節(熊本戦、1-3)から登録されて即途中出場。
巨大戦力かつ、圧倒的なホームスタジアム(PEACE STADIUM Connected by SoftBank)を持って昇格までひた走る。
そんな青写真を描いていた長崎でしたが、ここに来て連敗とそれが覆されかねない流れに。
故障者が膨らんだ事で、難しい局面を強いられているのが現状。
ジェズスを中心としたマンパワーも活きなくなり、かつディフェンス面の弱さが露出する格好に。
それを隠すべくの戦いを余儀なくされる中、「ホーム無敗伝説」に縋る事が出来るかどうか。
この日迎えたのは、長崎とは対照的に調子は上向きな鳥栖。
弱点を隠すための戦い。
即ち相手に攻撃機会をなるべく与えないという立ち回りが求められますが、幸い長崎のスタイルはそれに近く。
攻撃時では最終ラインでパスを多く繋ぎ、プレス回避を果たす事で保持の時間、つまり相手がボールを持つシーンを減らす事に努め。
守備時では既に持ち併せている「ハイブロック」の思考の通り、無理に奪いにはいかず相手の縦狙いをケアする事で、チャンスクリエイトさせないという意思を押し出し。
しかし客観的に、それは一重に消極的とも取れる印象を与える事にも繋がり。
それでも前年のスタジアム開場後の初戦(34節・大分戦、4-1)では、そうしたスローペースな立ち回りで入ったため、受け入れられる下地は備わっているはず。
かくして難しい試合に挑んだ長崎ですが、それを尻目に入りからボール保持に入ったのは鳥栖の方。
最終ラインから長短交えたパスワークで、山田寛のポストプレイも絡めて前進を果たし、ペースを掴まんとします。
それでも長崎の「ハイブロック」を受けるや、むやみに前進しないという姿勢をこちらも見せる鳥栖。
主に自陣で我慢の繋ぎを展開します。
名倉がFWの位置へと上がり、前線4人で規制を掛ける守備時の長崎。
それに対し、3センターバック+ドイスボランチの5人に加え西川が降りて数的優位と出口を確保するやり口(西川の他にも降りる選手がいると、長崎ボランチも前に出るので6枚のプレスをかわす事を強いられる)で、その間を縫いながら隙を探し。
崩しのキーとなるのはやはり1トップに入った山田寛で、長崎選手の間に位置して縦パスを受ける体勢を取る所に、櫻井を中心に出し手が素直に当てていくというのが主な手法となりました。
そんな相手の姿勢により長崎は、レイオフに喰い付いて崩される……という醜態こそ晒さなかったものの、自身が攻撃機会を減らされているような感覚に。
しかし12分新井晴から奪取して攻撃権を得ると、すかさずこちらもボール保持に入り、関口の右→左へのサイドチェンジは遮断されるもギリェルメが拾い直し継続。
そしてアタッキングサードに進入し、左からのクロスの連続と波状攻撃の末に、跳ね返りの確保からギリェルメがミドルシュート(GK泉森キャッチ)とファーストシュートを生み出しました。
それを受けた鳥栖、前述のような睨み合いの姿勢から、裏へロングパスを送る事も見せ始めますが有効打にはならず。
静かな立ち上がりから、徐々に前への意識を高めるという意識は伺えますが、一歩間違えると焦りにも繋がりかねないその思考。
18分、スリヴカのポストプレイが櫛引のアフターチャージを受け倒れた事で反則、櫛引に警告。
その焦りが長崎サイドに降りたかに見えましたが、直後の19分に再度スリヴカのポストプレイで繋がんとするも、ズレた所を遮断されて長崎の好機に。
そして敵陣右サイドで名倉がキープする所を西矢が反則と、激しいチャージ・判定という部分が顔を出し始める展開に。
しかしその負の部分を受けてしまったのが長崎の山田陸で、23分にスリヴカのチャージで足を痛めてしまい、起き上がるのに1分程かかるも何とかピッチ外→復帰。
そうした乱戦模様な時間帯をやり過ごした鳥栖は、保持時でパスのスピードを上げ、非保持時はプレッシングにウイングバックも加わり奪いにいく体勢に。
前半も半分を過ぎたからか、能動的に相手を動かす意識へとシフトした、という事が良く伝わる立ち回りへと移ります。
これに長崎サイドは難色を示し、特にプレス回避に四苦八苦。
そして31分その局面で、ボールキープする関口が新井晴のプレッシャーでロスト、拾ったスリヴカがすぐさまエリア内へ切り込むというショートカウンターに。
入れられた中央への横パスを山田寛がゴールへ蹴り込み、最短距離で見事完遂させて先制点に辿り着きます。
入念なゲームプランを感じさせる経緯で、リードを奪った鳥栖。
そんな相手の流れに付いていけず、綺麗に後手を踏んでしまった長崎。
水曜にルヴァン杯2回戦を戦い、延長までもつれ込んだにも拘わらずその際のスタメン選手を起用した事が拙かったでしょうか。
ここまでのスローペースもそれを考慮した感がありましたが、相手の変節の見極め・対処という面で、スピードについていけなかった感があり。
ともかくここから攻勢に入らなければならず。
ボール保持の姿勢は相変わらずも、サイドへ展開→鳥栖WBのプレッシャーで前進出来ずという事を繰り返し。
その背後を取る策も、鳥栖の守備組織はかなりのもので、周囲のパスコースを抑えられかつロングボールの出所にもプレッシャーを掛けられるのでままならず。
結局、サイドバックとウイングの2人掛かりでのサイドからの攻めで、入れ替わりを駆使して崩しに掛かる事ぐらいしか出来ずに時間を浪費していきます。
一方で「ハイブロック」の姿勢は変わらずも、鳥栖のパスワークがその間を果敢に縫っていく意識を強めると崩されるようになり。
40分、最終ラインからのパスを西矢が間で受けた事で右サイドから前進、スルーパスを受けた松田がカットインを経てミドルシュート。
エドゥアルドがブロックするも櫻井が拾い継続し、そのまま左ポケット奥へ切り込んだ所関口に倒されるも反則の笛は鳴らず。
攻勢どころか、際どい凌ぎを余儀なくされ反撃の雰囲気が高まらないという絵図に。
結局0-1のまま前半終了。
ギアを上げたい長崎ですが、ハーフタイムでは動く事無くそのまま後半開始を迎え。
そして変化が無かった事に従うように、その立ち上がりも鳥栖ペースが続き。
特に長崎のロングパスやクリアを回収してから攻撃と、長崎が前に出たいというタイミングで仕掛ける事で押し込み。
新井晴のロングスローも活用しながら(ただしセンターバックは上げない)、敵陣でサッカーを展開しリードを最大限活用していきます。
そんな中で、前半に足を痛めていた山田陸が、悪化させたのか早々に交代となってしまい。(後半5分)
加藤を投入し何とか綻びを見せずと振舞うも、山口の離脱が響いている状況が重くのしかかり、更なる苦境が襲い掛かるという雰囲気を変えられません。
覚悟を決め、最終ラインからボール保持での前進の体勢に入る長崎。
それでも鳥栖は前半のようなハイプレスに出る事は稀となり、リトリートに徹して「ボールを持たせる」状況を押し付けに掛かります。
それにより、山口不在の状態では中央から崩す意識も中々取れず(労せずして敵陣には入れるため、相手の前線五角形の中から崩す姿勢も殆ど見られず)、結局サイドからどうにかするしか無く。
奥へと切り込まず、手前からのクロスを連発する事でモノに出来れば……という攻め手が目立つのみとなりました。
そんな中、CBのエドゥアルドまで足を痛めてしまう事態が発生。
この試合のみならず、今後の事を考えてもこれ以上の負傷者は避けたい所でしたがそうも言っていられず。
併せて2枚替えを敢行し、エドゥアルド・名倉→新井一・フアンマへ交代。(ジェズスが一列下がりインサイドハーフに)
クロスの数が膨らんできた事で、フアンマに状況打開を託す形となります。
その直後の17分、左→右へのサイドチェンジを直接ヘッドで落とした増山、関口のリターンを受けると奥へ切り込みに成功してクロス。
ようやく崩した形で送られたこのボール、中央に走り込む松本天に合わせるものとなった所をGK泉森が掻き出すも、ファーに流れた所をギリェルメがヘディングシュート。
バウンドしてGK不在のゴールに向かったものの、井上が寸前でブロックと、訪れた決定機もモノに出来ませんでした。
肝を冷やした鳥栖は、19分にベンチが動き松田→上原へと交代。
20分の長崎、関口が対角線(右→左)のロングパスをギリェルメに送り、クリアのこぼれ球を拾ったギリェルメ。
こうした一手でサイドを変える行為も、中央を固める鳥栖の前では効果が薄く、ブロックの外で繋ぎ再び右へ移した末に関口のアーリークロス。
ファーへ上がったボールに、期待通りフアンマが合わせにいくも、跳び出して直接抑えにいったGK泉森と交錯。
そしてこぼれ球をジェズスがワントラップからのボレーシュートでゴールネットを揺らしますが、フアンマの反則で無効となり。
決定機逸に加えぬか喜びまで発生してしまった事で、精神的にも厳しい戦いを強いられます。
それでもフアンマ狙いの手法を続けていくぐらい、余裕は既に無く。
26分、FKでの二次攻撃で再度同じシチュエーション、ファーサイドに上がった(右から増山の)クロスをフアンマが合わせにいき。
しかし今度はその手前でキャッチしたGK泉森と、集中力を切らす事無く守り続ける鳥栖により不発。
その集中力というファクターは、主に守備面で試されるのは言うに及ばず。
相手がそうした戦いを続ける事で、自身がそれを喪失するに至ってしまったでしょうか。
幻のゴールの後ぐらいから、ギリェルメが前年観られたような、フリーマン的に動き回る姿勢となったのもそれに拍車を掛け。
28分、鳥栖は自陣深めでのボール保持という局面で反則を受けると、FKでの再開は相手の様相を見て素早い運びを選択。
櫻井が持ち運びから送ったスルーパスに対し、反応が遅れた長崎サイドは一気に最終ラインの裏を突かれる(慌てて櫻井にプレスバックするジェズスや、パスカットを空振りする新井一の姿が痛々しい……)事態を招いてしまいます。
そして走り込んだ山田寛のダイレクトシュートが、前に出てきたGK後藤の足下を抜いてゴールに突き刺さり。
仮にも攻勢を貫いていた状況も重なり、長崎にとっては致命的という他無い追加点となりました。
2点差となるも、それを挽回できる都合の良い手法はある訳も無く。
31分に双方ベンチが動き、長崎は高畑・増山→米田・青木へと2枚替え。
鳥栖は櫻井・スリヴカ→松本凪・日野へと2枚替え。
33分長崎の保持に対し、プレスバックで奪いにいった山田寛が、加藤へのスライディングが反則を取られかつ警告対象に。
それに加え倒れた加藤との交錯で痛んでしまった山田寛、ここで交代の運びと鳥栖サイドにも(自滅の形とはいえ)アクシデントが発生。
間を置かずに再度交代を選択し、山田寛・新井晴→新川・今津へと2枚替え。
今津が右CBに入った事で、井上が左WBに回りました。
それでも、自陣で5-4-1ブロックを固める体制は不変な鳥栖。
単純なクロス攻勢は避けたいという思考は伺えた長崎(39分に右奥を突いた関口がポケットへ横パス→さらに松本天がフアンマへ横パスもクリア)ですが、ポケットを突きにいっても鳥栖の人数を掛けるディフェンスが破られる気配は無く。
結局クロスを選択し、後をターゲットに託す他ありません。
コーナーキックも量産される中、何本もエリア内へ浮き球が上がりますがモノに出来ず。
43分にCKでの二次攻撃で米田がヘディングシュート(GK泉森キャッチ)、アディショナルタイムにこれもCKでの二次攻撃からクロスを櫛引が折り返し、中央でフアンマが合わせにいくも撃てず。
決してノーチャンスではありませんでしたが、半分運頼みの側面も強く出てしまう、苦し紛れの攻勢の感は否めません。
地上での好機は、中央でのパスワークを経て米田がフアンマとのワンツーで左ポケットへ進入と、変節で迎えたシュートチャンス。
しかし切り返しを経て放たれた米田のシュートは、上原がスライディングでブロックと身体を張られ実らず。
いよいよもって厳しくなる長崎。
その中でふとした事から鳥栖がカウンターチャンス、という所でこぼれ球を拾わんとした新川を米田が倒してしまい反則・警告。
このプレーに対し、カウンター阻止+ラフプレーによる一発退場を一斉にアピールする鳥栖サイドでしたが判定は覆らずと、一悶着あった最終盤。
これによるFKから、上原がエリア内へ入れたロビングが収まり、新川がシュートチャンスを迎える(ミート出来ず)も追加点は奪えず。
ひたすら専守を強いられてきた鳥栖、これが実に2点目以来の攻撃機会と、息継ぎもままならない中で良く無失点で凌いだと思います。
結局0-2のまま試合終了し、鳥栖が勝ち点3をゲット。
これにより、明暗分かれたシーズンの入りも、両者ともに4勝で並び勝ち点差は1となり。
決して長崎のような個の力は持つに至らない鳥栖も、昇格に向けた戦いに入る資格を得た一戦となったでしょうか。