<両軍スタメン>
いつの間にか、10戦未勝利で定位置(辛うじて残留)近辺となっているのが湘南。
芯の定まっていないクラブが下位に沈む傾向が強い中、こうして目指すべきスタイルがハッキリしているにも拘らず、結果が全くついて来ない状況をどう解決するべきか。
町野というストライカーが控えてはいるものの、全体得点力自体は良くて中位ぐらい。
そのような状況で、今季は未だクリーンシートが皆無の守備陣を抱えていては、勝ち点3に辿り着くのは困難といった所でしょうか。
データを見ると、得点期待値はリーグ3位・被得点期待値はリーグワースト3位。(この試合も含めたもの)
こちらの数多作る好機はモノに出来ず、逆に危機を多く作った末に耐えられず失点してしまうという傾向が強く。
この日はGKを富居に代え、3バックも特別指定選手の高橋・大ベテランの山本(この日が今季3試合目)を起用と、大幅に弄りテコ入れを図りに来ました。
代表ウィークなためリーグ戦は2週間の空きを経ての開催。
丁度2巡目の始まりという試合で、相手も開幕節と同じ鳥栖。
その際は鳥栖の完成度の低さもあり、5-1の圧勝を演じたものの、今や成績的にチーム力の逆転を懸念せざるを得ない状況。
むしろその試合が重圧となる危惧も高く、再現を果たすと言わんばかりに、その試合でハットトリックを決めた大橋をスタメン起用してきました。
しかし鳥栖のキックオフで始められた試合、鳥栖はいきなりセンターサークルから前進という意表を突く選択肢。
小野が持ち運び左へ展開、菊地のクロスにまで繋げる攻撃で、湘南サイドは色を失った感がありました。
そして立ち直る暇も無い前半2分、鳥栖の攻撃を断ち切るもゲーゲンプレスを受ける湘南、自陣左深めでのミドルパスを原田にカットされるという苦し紛れな絵図。
ここからエリア内へ縦パスが撃ち込まれ、受けた小野が右斜め45度といった場所から狙いすましたシュートを放つと、左サイドネットを揺らします。
早々の先制点で勢いに乗る鳥栖。
ボール奪取からの好機や、中盤でのルーズボールを素早く繋ぐ事で湘南のベクトルの逆を突くように好機を量産。
5分にはこぼれ球を繋いで中央で確保ののち、左サイドを岩崎が突破した末に、カットインからミドルシュートを放つもGK富居がセーブ。
何とか鳥栖の攻勢を防ぎ、反撃体制を築く湘南。
最終ラインからショートパスを繋ぐスタイルは変わらずも、ビハインドならびに最近の不調を跳ね返すには何か劇的な事象が欲しい所。
12分、鳥栖がエリア内へスルーパスを送るも高橋がカットして防ぎ、すかさず掛けられたゲーゲンプレスも左へ流れつつのミドルパスでいなす事に成功。
ここから縦に運び、右へのスルーパスに走り込んだ石原のクロスにまで辿り着く攻撃。(クロスは誰に合わず)
鳥栖の圧力に屈しない組織力を発揮します。
鳥栖のポゼッションに対しても、前線5人の組織立ったプレッシングで、ショートパスでの繋ぎを許さず。
しかし一体感は示せても、それをチーム力で強引に剥がされるようになると弱い。
鳥栖は最終ラインで繋ぐ事でポゼッションを高めても、GK朴のロングフィードを良い形で送るという「疑似カウンター」的なスタイルでそれを果たさんとします。
これに岩崎の突破力も加える事で、手数の掛けない攻めでプレッシャーを与え、湘南の意識をひっくり返しに掛かり。
27分には、原田の飛距離の長いスローインを武器に加え。
ここで原田は低い弾道のボールで右サイド奥を突くという変化を付け。(堀米の手前でクリアされ実らず)
キックオフのシーンといい、突然の変節で相手を揺さぶりに掛かります。
湘南は敵陣でボールポゼッションを高めるも、そうした鳥栖の姿勢を受ける事で腰が引けてしまったでしょうか。
30分、右サイドでのパスワークで隙を窺わんとするも、戻しを選択した結果小野にカットされてカウンターを浴びてしまい。
そしてスルーパスを受けた岩崎が左奥を突いてポケットへパス、受けた堀米のクロスこそ杉岡がブロックするも、こぼれ球が小野の下へ。
今度は先制点の状況とは逆の左ポケットからのシュートで、右ポスト内側を叩いてゴールネットを揺らします。
ボール保持に意識を割いた結果、攻撃権の確保どころか追加点を献上してしまった湘南。
意気消沈の相手を尻目に、鳥栖は尚も得点を重ねるべくの攻勢に入るというある意味至福の時間に。
33分には再び右スローインから、今度はサイドチェンジを経て左で攻め、岩崎が左ポケット奥を突いてマイナスのクロス。
そして中央で手塚が合わせるも、このシュートはGK富居が足でセーブと瀬戸際で防ぎ。
その後もゲーゲンプレスと疑似カウンターという二大武器を如何なく発揮し、反撃の機会を与えずに攻勢のまま時間を進めます。
湘南は糸口を掴めないまま、アディショナルタイムに突入。
そこでGK富居のロングフィードからの攻撃や、右スローインから奥を突いてクロスという具合に、鳥栖がやったような攻めで好機を作り。
コーナーキックを得たもののそこでの得点は無く、結局0-2のまま前半が終わります。
にわかに尻上がりとなった終盤を受け、温存していた?町野を後半頭から投入した山口智監督。(タリクと交代)
その入りの後半1分にも、GK富居ロングフィード→平岡収めてスルーパス→大橋(繋がらず)と、終盤の姿勢を維持する事で反撃体制を作りにかかったでしょうか。
しかしその構築がままならないまま、3分に鳥栖が敵陣でのボールカットからショートカウンター。
長沼がドリブルで右ポケットに進入し、奥に切り込まんとする所を杉岡にスライディングで倒されると、反則の笛が鳴ってPKが与えられます。
流石にボールに届かずモロに長沼の足に入れてしまった絵図とあっては言い訳は利かず、カードの類が出なかっただけ良かったと言うべきシーンか。
キッカーは小野が務め、ゴール左へ強く蹴り込み、GK富居は触れるものの勢いは殺せず。
ゴールネットを揺らして3点目、小野がハットトリック達成と、完全に開幕節のお返しという格好となった鳥栖。
これで攻めるしか無くなった湘南、再びボールポゼッションを高めての攻撃にウェイトを置き。
しかし3点リードの鳥栖もプレッシング意欲は依然として旺盛で、それをかわした際は絶好機が生まれ。
6分に左から畑が斜めの縦パス→町野ポストプレイで中央を経由したのち右へ展開、石原がスルーパスに走り込んで低いクロス。
ニアサイドで走り込む小野瀬には僅かに合わずも、何かが後一つ巧くかみ合えば得点は決して不可能ではない、という流れを得ます。
それを実現するべく10分にベンチが動き、平岡→山田へと交代。
高橋がボランチに回る事で4-4-2へシフトと、フォーメーションも併せて変える事で勝負を賭けにいきます。
そして11分、ポジションが移った高橋のパスカットから素早く前へ運ぶ攻撃で好機。
小野瀬がドリブルで右奥を突いて低いクロスを入れると、今度は中央で大橋がしっかり合わせてシュート。
しかしGK朴にセーブされ、跳ね返りを自ら詰めて追撃しますがこれも朴のキャッチに阻まれてゴールはなりません。
鳥栖ディフェンスの寄せもあり、ダイレクトシュートではどうしてもコースを突く余裕が無くなるのが災いした格好で、それは今後も付き纏う事となり。
逆に直後の12分、鳥栖はクリアボールを巧く繋いで再び小野の下に絶好機。
左ポケットからのカットインで、中央からシュートしますが石原がブロックで何とか防ぎ。
尚この流れの中で原田が頭部へのダメージで蹲ってしまい(原因は不明)、脳震盪による交代措置が採られます。(樺山を投入、長沼が右サイドバックに回る)
良い流れを切られた格好となった湘南、その後自陣でのパスミスを連発してしまい再び迷走気味となり。
そうなると隙を突かれるのは当然で、18分の鳥栖は最終ラインから繋ぐ攻撃で、右→左へのサイドチェンジが決まったのちに岩崎が左ポケットを突くというお馴染みの流れ。
そして追い越した菊地へのスルーパスを選択し、その菊地からのマイナスのクロスを綺麗に堀米が合わせて仕上げます。
止めというべき4点目が入りましたが、これだけでは終わらなかったのがこの日。(キックオフ前に菊地→楢原へと交代、長沼が左SBへ回る)
このまま惨敗となるのは避けたい湘南。
21分に再び交代敢行するベンチ、奥野・山本→阿部・舘へと2枚替え。
これで高橋の1ボランチとなり、阿部がトップ下に回る事で4-1-3-2というレアなスタイルに。
そして22分、町野の右からの斜めの縦パスをポケットで受けた大橋、ポストプレイを経て後方から石原がシュート。
しかしこれもGK朴のセーブに阻まれ、すっかり朴の厚い壁に呑まれるという展開が出来上がった感があり。
最終ライン裏を突くスルーパスも、前に出る朴によってクリアされるなど無効化される事が増えていきます。
(25分に鳥栖は小野→富樫へと交代)
26分に再びシュートチャンスが訪れ、またも町野のラストパスが(中央から)右ポケットに入り、今度は大橋が走り込んでシュート。
GK朴がセーブとこれも防がれると、苛立ちを隠せない状況にピッチ外ではたまらず山田が大橋に対して小突くシーンが描かれる事態に。
議論をかもす一幕が生まれた事で、運気は地に落ちたようでありました。
その山田も、続く27分に石原クロス→町野ヘディングシュートが例によってGK朴のセーブに阻まれたのち、こぼれ球を追撃しましたが枠を捉えられず。
乱れる組織力という絵図で、こうなると頼みの綱は個の力と言わんばかりに、30分に縦パスを受けた町野がドリブルで左ポケットを突いてシュート。
しかしこれもGK朴に防がれ、どうしても得点に辿り着けません。
鳥栖サイドも、度々作られる決定機に意識は徐々に尻込みしていたでしょうか。
27分にスローインの際に楢原が、29分にはフリーキックの際に堀米が遅延行為を取られ、いずれも警告を貰ってしまう等良くない流れが生まれかけ。
湘南がシュートを撃ちまくるも決められない、そんな流れが続いた末に38分に鳥栖ベンチが動き。
3枚替えを敢行し、長沼・手塚・堀米→田代・藤田・藤原へと交代。
これで田代が中央に入る3バックへとシフトし、3-4-2-1つまり5バックシステムに。
これ以降プレッシングの意欲は薄まったものの、ボール保持の色は濃くなる鳥栖サイド。
敵陣でのパスワークを続けて相手の攻撃意欲を削ぎながら、生まれる隙を確実に突くスタイルを採ります。
そして41分、左サイドからのスローインで、投げ込まれたボールを樺山が入れ替わりで右ポケット奥を取ってそのまま浮き球でマイナスのクロス。
これを中央で藤原が合わせシュートと、4点目同様に「マイナスのクロスを合わせてのゴールは綺麗な流れ」という事を改めて実感する得点が生まれました。
守備のテコ入れどころか、今季最多失点を更新する事になってしまった湘南。
それでもホームの舞台で諦めは許されず、少ない残り時間のなか攻勢を続けます。
43分にはCKからの二次攻撃で、右から小野瀬がカットインシュートを放つも河原のブロックに阻まれ。
続く44分は左から阿部がクロス、山田の胸での落としを経て町野がシュートするもGK朴がキャッチ。
様々な手で放たれるシュートも、徹底的に防がれてしまいます。
ATへ突入し、最早鳥栖はGK朴からの繋ぎで、時間を経過させる立ち回りへと入り
それを阻みにハイプレスを掛ける湘南ですが、それを待ってましたとばかりにファンソッコの裏へのロングパスで一気にひっくり返し。
受けた富樫が舘を置き去りにする切り返しで右ポケットへ進入、そしてクロスを送った先に走り込んでいたのは樺山。
しっかりとゴールネットを揺らし、文字通り終焉を告げる6点目を交代選手の働きで生み出しました。
こうなると湘南は体力も気力も無いといった格好で、一度も攻撃機会を作り出せず。
鳥栖のボールキープが続く中、試合終了を告げる笛が吹かれます。
0-6の大惨敗に、順位的にも暫定ではありますが最下位に転落してしまった湘南。
一生逃れられない残留争いの呪縛といった格好ですが、断ち切る術はあるのか。