<両軍スタメン>
前年あれだけ大補強を敢行したにも拘らず、チーム成績は全く上がる気配を見せなかった岐阜。
人件費でナンバーワンだったのは松本でしたが、その松本が昇格を逃したのも重なり、J3からの脱出は金を掛ける事とイコールでは無いというのがはばからずも証明されてしまい。
大金を叩いたにも拘らず結果が出ない。
一昔前のJ1・神戸の状況が近く、ネタクラブ扱いされかねない成績である近年の岐阜。
その神戸は一足早くその状態から脱却し、現有戦力を活かしきる覚悟に実を据えた今季はJ1首位と結果に繋げています。反面イニエスタを有効活用できず終えるという総評が下されたのは何とも皮肉ですが
今季の岐阜も、稼働率の低いかつての名選手をなで斬りにし、新卒選手の獲得を広げるという具合に方針転換に舵を切った風であり。
名より実を取るかの如きこの政策、果たして結果に繋げて悪循環を断ち切る鉄槌と出来るかどうか。
後方に控える庄司・宇賀神のベテランの存在もあり、入りは大人びた立ち回りを展開する印象のある岐阜。
対する鳥取は積極的に攻め上がり、前半1分に早くも右スローインを直接エリア内へと投げ入れ、跳ね返りを繋いでの好機。
左からのクロスがクリアされるもさらに繋ぎ、窪田が中央からミドルシュート(枠外)とフィニッシュに繋げました。
かくして鳥取攻勢の幕が開き、4分には左コーナーキックから重松がヘディングシュート。(ゴール右へ外れる)
8分には右からのクロスが流れ、逆サイドで拾った富樫がそのままワイドの位置からシュート(GK茂木セーブ)と、ホーム(Axisバードスタジアム)の立場もあり果敢に先制点を狙い。
鳥取も、ボランチの位置にベテラン・長谷川アーリアを加入させ、一定の経験をチーム力に還元させる意思は岐阜と類似しており。
しかし長谷川アーリアはランコ・ポポヴィッチ氏の「息子」らしく、ダイレクトパスを好むスタイルであり、その影響か攻め急ぎが目立つ事となります。
得たCK(10分までに3本)もその全てがショートコーナーで早いリスタートと、せわしなくゴールを襲うものの、その反動が怖いと感じました。
放送席でも、金鍾成(キンジョンソン)監督のコメントらしい「内容よりも結果が重要」「縦に素早く運び、最短距離でゴールに迫る」という事が語られており、長谷川アーリアはその最後のピースという位置付けのような存在だったでしょうか。
そして不安が現実化したのが12分でした。
ここも増谷のロングパスを受けた富樫が左奥からカットインと、手数を掛けずに攻める鳥取。
しかし松本歩と対峙しキープする富樫が反則気味のディフェンスで奪われると、一気に岐阜のカウンターが展開され、自陣で受ける藤岡に対して喰い付いた増谷がスライディングするも奪いきれず。
そしてスルーパスがンドカに通ってGKと一対一が完成してしまうという、前掛かりな姿勢が完全に裏目に出る形となります。
そしてエリア目前という位置でGK糸原の左へシュートを放ったンドカ、難なくネットを揺らして先制点に辿り着いた岐阜。
その後の岐阜は、攻め急ぐ鳥取と対極に位置するかのように、試合を落ち着かせる立ち回りを展開。
ビルドアップは宇賀神が最終ラインに残っての3枚の形を取り、リスク管理を徹底したうえで庄司の縦パスを打ち込むというスタイル。
ディフェンスも自陣で4-4-2ブロックを敷いて構える時間が長くなり、鳥取のパス出しに対し下手な喰い付きを見せずと、得たリードを最大限生かさんとします。
20分に宇賀神の飛距離の長いスローインを起点とし、窪田が右ポケットを突いてCKを獲得した岐阜。
この右CKでキッカー生地はライナーでファーサイド・エリア手前へクロスとサインプレー、これを宇賀神がワントラップからシュートと狙い通りのフィニッシュが放たれましたが、右ゴールポストを直撃と惜しくも決まりません。
しかしベテラン宇賀神の、浦和時代らしい「バランサーを務めつつ、勝負所で一撃を放つ」プレーが光ったここまでの流れ。
そんな大人びた集団と化したような岐阜でしたが、例外は村田だったでしょうか。
27分に左サイドから攻め上がり、一旦は途切れるも相手のクリアをブロックしてさらに攻めんとする村田。
しかし田中恵にボールを確保され、奪わんとデュエル勝負を仕掛けるも反則を取られると、その田中恵を突き飛ばすという暴挙に出てしまいます。
当然これで警告を受けてしまった村田。
その後も35分に岐阜が敵陣でサッカーを展開する中、裏に抜けようとした所を田中恵と交錯してしまい痛んで倒れ込み。
止む無く岐阜はプレーを切るも、起き上がった村田は激しく不満を露わにするなど、冷静さを欠いていたのは明らかでした。
その隙を突きたい鳥取、28分に右サイド深めでスローインを得ると、またも直接エリア内へ投げ込み(ただしロングスロー体制では無い)大久保がフリックでエリア手前中央へ流し。
そこに普光院が走り込んでシュートを放ちましたが、ゴール上へと外れ。
続く29分には普光院の左→右へのサイドチェンジを受けた田中恵、奥へ切り込みクロスと見せかけてここもワイドからシュートを狙いにいきましたが、GK茂木がセーブ。
フィニッシュは放てていたものの、岐阜のゾーンディフェンスを完全に崩すには物足りず、遠目からのシュートに傾倒します。
岐阜は前述の村田の乱れを受け、前半の終盤は宇賀神が前に出るようになり攻撃をカバー。
40分には最終ラインでの繋ぎを経て、左サイドで宇賀神がスルーパス、これを受けた村田が左ポケットを突いてマイナスのクロス(誰にも合わず)という具合に一定の効果が見られ。
これで攻撃権を握った岐阜ですが、ボール支配率を高めて相手に攻撃機会を渡さない事を重視したでしょうか。
それを受けて焦る鳥取、前からの圧力を強めにいくも、45分には勢い余って重松がGK茂木にアフターチャージを敢行してしまい反則・警告。
最後に笑ったのは岐阜、という流れを描いて前半が終了します。
ハーフタイムでの交代は無く、後半に向けてメンバーは不変ながらも立ち回りの微調整は不可欠といった鳥取の状況。
と言っても、縦に速い攻撃は状況次第であり、岐阜が前に出て来ない以上何とかそれを主体的に崩しにかかるぐらいの事でしょうか。
後半5分に長谷川アーリアミドルパス→富樫落としと若干変化を付けた末に、重松が右サイド奥を突く攻撃。
ここから普光院のクロスが上がり、ファーサイドで大久保が合わせましたが枠を捉えられず。
岐阜はリードを守れば良いという立場ながら、そのリードはまだ1点であり、攻め続けられればプレッシャーは相当なものであり。
そんな雰囲気を感じていたのか、7分の自陣でのフリーキックの際には、キッカー庄司が中々蹴り出せずに遅延行為で警告を受けてしまう始末。
直後に左スローインを獲得すると宇賀神がロングスローを入れ、中央へ流れた(GK糸原が跳び出してゴールは空)所を窪田がシュートするも枠を捉えられず。
追加点の好機も、その立ち回りに若干の焦りが見られる事となりました。
左サイドバック・普光院の動きに合わせるように、彼がワイドに張る時は左サイドアタック、ハーフレーンに絞る時は中央で前進といったスタイルを取るようになる鳥取。
10分には普光院はワイドに位置するも鈴木が中央から縦パスを通し、その後の展開でワイドの普光院に渡してクロスが入り、跳ね返りを世瀬がヘッドで繋ぎ。
そのまま大久保・重松とのパス交換で前進していく世瀬、シュートまで辿り着きましたがゴール右へと外れ。
盤石では無いながらも意図的な揺さぶりの色が強まってきた鳥取、11分に大久保→小澤へと交代(富樫がFWへシフト)してベンチも勢いを付けんとします。
しかし岐阜サイドも動き、14分に松本歩・ンドカ→柏木・田中順也へと2枚替え。
生地が右SBに回り、ベテラン2名をここで投入といかにも流れを落ち着かせるべくのベンチワーク。
その最初の好機でした。
16分、左サイドで柏木が裏へロングパスを送ると、走り込む田中順の前でGK糸原が前に出てボールを確保。
しかしダイレクトで出されたボールを受けに入った田中恵、村田のプレッシャーを受ける中でバックパスを直接田中順へと渡してしまい。(村田が触ったようにも見えたが、オフサイドポジションに居た田中順がオフサイドにならなかったためそういう事なのだろう)
そして左ポケットを突いた田中順、前に出たまま防ぎにいったGK糸原の左を抜くシュートを放ち、ブロックも及ばずボールはゴール内へ。
ミスを誘発した岐阜、大人らしく労力を掛けずの追加点を挙げました。
リードを広げられてしまった鳥取、もはや金監督の理想と思われる、縦に速く突く攻撃は期待できる状況では無く。
その後は岐阜のポゼッションが冴え渡り、時間と攻撃機会を奪われていくのを止められなくなります。
中盤の舵取りを務める柏木の下、鳥取の反撃意欲を削ぐようにボールを回していく岐阜。
何とか挽回するべく、24分に長谷川アーリア・富樫→丸山・高尾へと2枚替え。
すると岐阜と同様、こちらも交代直後に結果が出ます。
25分宇賀神の縦パスを、投入された丸山がカットして反転攻撃に入る鳥取、小澤が左ポケットを抉って中央へ横パス。
そして牛之濱が放ったシュートがゴールネットを揺らし、岐阜の守備陣形が整わないうちの攻撃を成功させました。
岐阜はこの場面ボールは握っていたものの、宇賀神がダイレクトで縦パスを通そうとした選択が結果的に裏目に出る事に。
もう少し保持に努めた方が良かったという印象でした。
これで相手に焦りが生まれているうちに、一気に追い付きたい鳥取。
27分には裏へのロングパスに走り込んだ高尾が藤谷に倒され、反則・警告となったのみならずエリアからすぐ手前という好位置でのFKを獲得します。
横位置は左ハーフレーンからと若干クロスかシュートか迷うなかで、選んだ手段は軽く蹴り出し→重松シュート。
ディフェンスの間を抜けたものの、ニアサイド下を狙ったボールはGK茂木がキャッチして同点ならず。
防いだ岐阜は落ち着きを取り戻し。(33分に村田→上野に交代)
鳥取が最後方からの攻めを余儀なくされるなか、それを突くように敵陣でのボールカットを敢行。
35分に庄司が前に出て奪ったのち裏への浮き球で窪田を右奥へと走らせ、入れられたグラウンダーのクロスを田中順が合わせシュート。
GK糸原がセーブし、跳ね返りをさらに藤岡が追撃しますが枠を捉えられず。
直後にも柏木が前に出てパスカットしてそのまま右ポケットを突くシーンを作り(シュートまではいけず)、この時間帯で積極性を増しにかかる岐阜。
しかもカットしたのはベテランのボランチと、いかに試合の流れを読むのに成功しているかを証明する事となりました。
反撃の流れを断ち切られた格好の鳥取。
追い打ちを掛けるように、37分に小澤が痛んでしまい続行不可能となり、インアウトを余儀なくされます。(文仁柱を投入)
攻撃機会を全く得られなくなる鳥取を尻目に、岐阜は41分に最後の交代カードを使い。
窪田・藤岡→田口・和田へと2枚替え、DFの和田を投入した事で5バックシステム(3-4-2-1)へとシフトします。
しかし岐阜もその直後(43分)、宇賀神が牛之濱との交錯で足を痛めてしまい、続行不可能並びに数的不利となる危惧に襲われてしまい。
和田は×サインを出すもGK茂木は○を出すという具合に、「もう交代枠は無いから残すしかない」というような思惑を強いられます。
何とか足を引きずりながら立ち上がった宇賀神、その後もプレーを続け。
それでも勢いがつかない鳥取の攻撃、5分が目安のアディショナルタイムもあっさりと進んでいき。
そして4分台となったところでようやく、中盤からのFKという絶好の放り込みの機会が訪れ、GK糸原が前線に上がり。
キッカー文のロビングをエリア内右で落とす糸原、しかし重松には繋がらず。
しかしここから放り込みでエリア内を突き続ける鳥取、混戦の中シュートチャンスが生まれたものの、ボレーシュートにいった牛之濱は空振りして撃てず。
結局見せ場を作れたのは最後だけ、というような攻勢となりました。
1-2で勝利に辿り着いた岐阜、これで3連勝。
ようやくその重い腰が上がったのか、水曜に行われた天皇杯でもJ2・清水を撃破(2-1)と結果を出し。
ベテランと若手の融合と、内容的にも好循環を感じるものであり、ここから勝算を立てる事が出来るでしょうか。