先週の広州・深圳への出張で最もショックだったのは、変化のスピード感です。今日はそのテーマを少しお話いたします。
日本やアメリカでは、3年から4年かかる変化を、おそらく深圳では1年から1年半で実現してしまっています。それは建設現場や法律改正のスピードだけでなく、人材のリクルートや、新たな技術の開発、あるいはスタートアップ企業の新陳代謝など、国や地域があらゆる手段とお金、さらには強権を発動して、圧倒的なスピード感を醸成しているということです。
この原動力は数多くの事象の融合体なのですが、そのうち最も大きな影響力を及ぼしている背景には以下の事実があります。広州・深圳が存る広東省は、人口8000万人で、GDPは全中国の約1/4の経済圏なので、習国家主席の次を担う人物が総責任を負っている地域です。したがって、この地域の成長の実現には、国の命運とともに、次の国家主席の 命運が懸かったテーマとなっているのです。
ということで、中国からアメリカなどに留学して、海外に渡っていった才能あふれる人物たちを、また深圳地区に集める工夫が数多く施されています。それらの原資は国・省・市・区の予算であり、公的資金を集中投下して実行しています。日本やアメリカでは、経済合理性がないと思われるところまで設備投資が行き届いていることから、とにかく世界中に散らばった才能が一気に集まってきています。
このやり方は、日本で言えば、戦国時代に信長や秀吉が、例えば安土城を2年で造ったとか、京都の聚楽第を1年で完成させたとか、という世界と同じで、圧倒的な経済力と、数多くの労働者の犠牲によって成り立つ世界です。驚異的なトップダウン経済によってのみ、実現できる空間なのです。もちろん、こういうやり方は長く持たないのですが、その間に、天下を取ってしまえば、過去の矛盾を帳消しにできる利益・利権・領土を得ることが出来て、それを狙った戦術ということが言えます。
民主主義による資本主義が勝つのか? それとも国家資本主義の方が勝つのか? どっち?
と、中国から問いかけられた1週間でした。本件は、また別の機会にお話をしたいと思います。