金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】AIと資産運用 その4 真の活用方法はプロセスの中にあり!

2019-03-22 07:46:51 | 金融マーケット
 過去2回は、AIと資産運用というと、よく勘違いされやすい2つの事例についてお話ししました。一つはAIが万能だと思い込むがゆえに迷い込む世界、もう一つは大したこともない内容を、AIという言葉であたかも凄いものとして見せる世界、です。

 それでは、逆にAI技術をきちんと活用している事例というのは、どのようなものがあるのでしょうか? 資産運用の世界では、この部分は比較的はっきりしています。「従来の運用商品の運用プロセスの中で活用し、品質向上につなげている事例」ということです。こう言うと「何だ、つまらない。当たり前じゃないか!」と叱られるのですが、現実はそういうものなのです。

 例えば、従来はアナリストが地道に読みこなして判断していた日銀短観やエコノミストの経済見通し、さらにはセルサイドアナリストの分析レポートなどの「変化度合い」、すなわちネガティブな変化なのか、ポジティブな変化なのか、それがどの程度なのかを、「テキストマイニング」というAI技術を使って、レポート発表後数秒で素早く判断できるプロセスを作り上げている運用会社があります。今までは早くても数時間、遅いと数日もかかっていた作業が数秒で終わりますから、大きなアドバンテージになります。

 また、株式のポートフォリオを組む場合、業種毎に銘柄を管理していく手法は一般的ですが、現在は各企業ともに新分野へ参入したり、伝統分野から撤退したりで、企業の業種自体が日々変化する時代に入っていることから、業種分類を常に株価の動きだけで、日々分類し直すというプロセスを導入している運用会社もあります。その作業には、過去の膨大なデータも含めたディープラーニングによる判定が適用されており、このプロセスは「スマートβ」と呼ばれる新たな指数の構築にも利用されています。

 このように、伝統的な資産運用プロセスの一部において、AI技術を取り入れることで、今までは見えなかった関係性が明らかとなり、その結果、運用商品の品質が格段にアップするということが現実に発生しています。その際に大切なのは、AIにすべてを任せるのではなく、AIによって得られた関係性の理由を、卓越した仮説力により普遍化するプロセスが入るということ。このプロセスは人間にしかできない仕事であり、そこで差別化する力を持った者だけがAI技術を真に活用できるという事実です。

 「データをただ大量に集めて、ディープラーニングを使い、その結果にベットしていけば、勝利はあなたのもの」などと、コンサル会社やIT会社は営業をかけてきますが、多額のシステム経費と、ごく当たり前の検討結果だけが「成果」として残ることになります。そうした甘い言葉に乗るべきではないのは当然ですが、AI時代こそ、人間としての総合能力=仮説力が、より重要な付加価値となり、それが差別化要因になることを強く申し上げておきたいと思います。


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