最近よく耳にするのが、『人的資本経営』とか『Well-being』という言葉。
新聞紙上でもよく紹介されていますし、上場企業が発行する「統合報告書」に出てくることが多くて、企業がいかに社員を大切にしているかをアピールするために使われる言葉、というイメージが強いと思います。
ちなみに『Well-being』とは、「(社員が)身体的・精神的・社会的に良好な状態であること」と定義されています。あらためて、このような言葉にスポットが当たっているのは、日本の労働人口が減り続けていることから、企業にとって優秀な人材を集めることがますます難しくなっていることが背景にあります。「従業員満足度」を上げていかないと、優秀な人材を採用できなくなるからです。
労働人口が豊富な時代=昭和の時代では、人間を使うだけ使って、役に立たなくなれば捨ててしまい、また新たな人材を雇うといった、ブラックな企業が後を絶たないことになっておりましたが、今の時代は、人材に多額の教育投資を施し育成して、しかも気持ちよく働いて貰わないと、すぐに転職されてしまいます。そうした時代背景は、実は日本だけではなく、欧州でも、北米でも同じであり、優秀な人材を集めることがどんどん難しくなっている状態。今の『Well-being』のブームは、「ESG」テーマのうち『S』の重要性が増していることと、同じ課題が根底には存在しているのです。
いずれにしても、『Well-being』も『人的資本経営』も、社員の能力やコンディションをより良い状態にすることで、「従業員満足度」を高め、それがすなわち企業価値向上に繋がる活動として、注目されている訳です。
なお、企業の中には『Well-being 推進委員会』などという横断的な組織を立ち上げて、各部署から推進委員を選んで、Well-being活動を行っている事例が数多くあります。ときどき、その中には『Well-being 推進活動』=「会社をユルくする活動」だと勘違いして活動している若い社員が散見されます。また、Well-being 自体をよく理解せず、「なぜ、わざわざ会社をユルくしようとしているのだ! バカバカしい‼」と不満を漏らす、ベテラン社員を見かけることもあります。
勘違いしないで欲しいのですが、『Well-being』は「会社をユルくする活動」ではありません。ユルい会社にしてしまったら、ライバル会社との激しい競争には勝てなくなり、企業価値向上どころか、社員の生活すら守れなくなってしまいます。むしろ、全ての社員が後顧の憂いなく、シャカリキに働ける状態にして、バリバリ稼げる会社にするための活動と言った方が実態に近いと思います。(つづく)