今や、西側諸国からは「魔の独裁者」あるいは「強欲な侵略者」として扱われている、ロシアのプーチン大統領。もちろん、今回のウクライナ侵攻については疑いなく「蛮行」であることは明らかですが、それでは、最初にロシア大統領になった頃のプーチンと、今のプーチン、全く別人のように変わってしまったのか⁉ あるいは、もともと「強欲な侵略者」「魔の独裁者」だったのが、ここへ来て本性を現しただけなのか!?
自分の考えですが、20年以上も国のトップを続けていたら、誰でも同じような病にかかる、すなわち「絶対神」病、あるいは「唯一神」病になってしまうというだけの気が致します。
国のトップでも、企業のトップでも、トップに就任すると、全ての最重要情報が集まってくると同時に、日々の最重要判断項目が、次から次へと降りかかってきます。最初は戸惑いますが、周囲のスタッフと相談しながら、短時間で「最適解」にたどり着いて、それを実行していきます。万が一「最適解」でなかったとしても、すぐに周囲のスタッフと協議の上、「修正案」を作って、即実行に移していきます。
そうこうしているうちに、トップとしての判断力が研ぎ澄まされていき、施政者としての能力がアップしていきます。と同時に、周囲からも崇め奉られていって、自分が優秀なリーダーになったことを実感していきます。この頃はまだ良いのですが、ここから10年、20年と長い時間が経っていくと、面倒な状況へ陥っていきます。
長期政権になると、トップがたまに判断を間違えても、その修正は周囲のスタッフがテキパキやってしまうので、自分のミスに気付かなくなります。また、なかなか施策の実効性が上がらないと、それは施策自体の問題ではなくて、執行する部下の責任だと思うようになり、担当ラインをすぐクビにするようになります。
もう、こうなると自分は「絶対神」「唯一神」の域に達していると勘違いしてしまい、周囲のスタッフも、何か不用意な発言をしてしまうことを恐れて、現在の正しい状況(すなわち悪い状況)の報告が出来なくなっていきます。
ここまで来ると末期症状。組織として機能しなくなるばかりか、世論からも支持を失うことになってしまいますので、それを恐れて、国民にも正しい情報を流さなくなります。
企業トップも同じです。日本のコンビニ市場を創り出した経営の天才S氏。コンビニ会社のトップを40年近くも務めて、常に新たな視点でコンビニ業界の発展に貢献してきた天才起業家です。しかし、そのS氏が、80歳を過ぎたある日、自分の子息を跡継ぎに就けようと画策を始めます。S氏はオーナー家でもなく、その子息に経営の才が溢れている訳でもないのに‥です。
当然のように、周囲からは異論が出ますが、本人はいっこうに気にしないまま。この会社に関して、自分の言うことを聞いていれば間違いなかったと、40年の歴史を信じろの一点張りで、何も疑問に感じず、事を進めようとしたのです。結果として、オーナー家の創業者と、社外取締役として就任していたガバナンス論を専門とする大学教授の方が動いて、この天才経営者の解任劇となりました。
国のトップは、どんなに長くても10年。同じく、上場企業トップも、どんなに長くても10年。このあたりが、弊害を避ける限界の長さだと思います。
ちなみに、資金を供給する機能がある「銀行」「証券」「総合商社」といった会社のトップには、さらに大きな力が生まれやすくなるので、こちらは長くても6年、出来れば4年程度を限度にすべきです。
【追】ちなみに、非上場のオーナー企業の場合は、期限を定めてもダメで、長期政権が当たり前になります。ただ、これは全てのリスクをオーナー自身が負っている上に、幹部は家族や親戚が固めていますので、最初から「問題が起きてもやむなし」という内輪なりの覚悟があります。
勤めている従業員にしても、最初からオーナー企業だって知っている訳ですから、「お殿様」に仕える覚悟がある人が入社しているということ。ちなみに、私だったら、そんな企業は遠慮させて頂きますが‥。