日本のワクチン接種率(2回終了)は、8月22日現在で国民全体の40.1%と、当面の目処値である4割を超える水準まできました。このワクチン接種率という数字は、マクロでみると大変重要な指標であり、個々人ベースの安全という意味でも、最も重要な指標になります。
というのは、米国のCDC(疾病予防センター)が8月5日に公表したデータによると、2回接種済の米国国民にとって、いわゆるブレイクスルー感染(2回接種してもコロナ感染すること)における重症化率および死亡率が、とんでもなく低い数字に抑制できていることが判明しているからです。
7月26日基準で、米国で2回接種が終了している国民の数は1億6千3百万人。うち重症化した人は6,587人で、その比率は0.004%。うち死亡した人は1,263人で、その比率は0.001%。
すなわち、ワクチン2回接種が終了した人は、その後にコロナに感染したとしても、重症化するのは0.004%、死亡するのは0.001%に留まるということで、交通事故のリスクはもとより、転んで怪我をするリスクよりも遥かに低く抑え込めているのです。
しかし、それでもアメリカのワクチン接種率は、51%を超えたところで急速に伸び悩み始めています。イギリスでも、60%を超えたところで同様に伸び悩んでいます。なぜでしょうか?
まずはマスコミの伝え方に問題があります。上記のように、重症化比率0.004%と伝えるか、「6,587人もいる」と人数で伝えるかで、受け手の印象は180度変わります。また、政治的な悪用も見られます。米国共和党の一部は、ワクチンのリスクを必要以上に煽って、ワクチン接種を跨げる行動を取っていました。
しかし、それ以上に、何よりも、民主主義の世界では、最終的な接種の判断は個々人に委ねられる「自由」が存在することにあります。個々人が何らかの不安を感じているのであれば、それ以上の強制を強いないのが民主社会のルール。
そんなことはお構いなしの中国では、おそらく100%近くのワクチン接種率を、近々達成してしまうでしょう。それに対して、USやUKの接種率は7割に届くことはまずないと思います。村社会の日本ですら、このままの自然体では、接種率が80%に届くのは難しいと思います。
上記の米国CDCのデータ公表や、日本でも「日本産科婦人科学会」「日本産婦人科医会」「日本産婦人科感染症学会」が連名で、妊産婦宛てに『妊婦さんは時期を問わずワクチンを接種することをお勧めします』とのメッセージを公表しているのは、少しでも接種率を引き上げたいからですが、そろそろ限界感が出てきています。
まさか、自由社会を守るために、国民から自由を奪うような「強制的なワクチン接種」を進める訳にはいきません。今、民主主義国家は大いなるジレンマの中で、悶々としている状況にあります。(続く)