年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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増えたのか減ったのか?

2015年04月09日 | 新聞連載記事
平成27年度の老齢基礎年金などの年金額は、26年度と比べて0.9%増えました。ところがこれは、賃金や物価の動き(上昇)と比べると0.9%減ったといえます。

年金額は、67歳までは現役世代の賃金の動きに合わせて増減され、68歳以後は物価の動きに合わせて増減されます。賃金すなわち現役世代の収入の増減と連動させ、生活に必要な物品やサービスの購買力を維持するためです。

27年度の年金額の増減に反映される賃金は2.3%の伸び、物価はそれを上回る2.7%の伸びです。このような場合には、68歳以後の年金額も伸びが小さい賃金に合わせることになっているので、27年度の年金額は年齢にかかわらず、賃金の変動に応じて2.3%増額されるはずです。

賃金や物価に応じて増減されるのは本来水準の年金額です。26年度の老齢基礎年金などは、本来水準を0.5%上回る特例水準の年金額が支給されていたので、その特例水準と比べると、2.3%から0.5%を引いた1.8%の増額となります。

しかし、これが「マクロ経済スライド」による調整で、0.9%の増額に抑えられました。額面上は確かに0.9%増えましたが、現役世代の賃金と比べると実質的には0.9%減った、ということになるのです。

マクロ経済スライドは、高齢化で将来世代の負担が重くなりすぎるのを防ぐ仕組みです。27年度の調整、すなわち引き上げの抑制は1%ほどですが、マクロ経済スライドは今後30年程度続けられる予定です。その結果、将来の年金額の実質価値は、現在の8割ほどになると見込まれています。こうした状況を踏まえた上で、生活設計をする必要があるのです。

スキルin東京「本来水準の27年度額とスライド」

2015年04月02日 | 年金講座・研修・セミナー
次の次の日曜日、4月12日に東京で開催するスキルアップ研修の宣伝です。今回のテーマは「本来水準の27年度額とスライド」。

スライドと新年度額の研修は、毎年この時期の恒例。とくに27年度は、過去10年にわたって支給されてきた特例水準がなくなって、いよいよ…というかようやく本来水準が支給されます。また、マクロ経済スライドによる調整がいよいよ…というかようやく本格実施されます。「本格」実施というのは、マクロは26年度に一部実施されたからですね。

ご興味のある方は、このページの左のほうにある、年金相談サービスのHPからお申し込みください。




在職停止と年金の増額

2015年04月02日 | 新聞連載記事
2015年度に60歳になる男性の老齢厚生年金は、62歳から支給されます。支給開始年齢は今後、63歳、64歳とさらに引き上げられます。今や60歳以後も勤めるのが当たり前の時代です。

60歳以後の働き方を考える際、検討材料の一つが「在職年金」です。支給開始以後、厚生年金加入者として勤めていると、年金額の一部もしくは全部が停止されます。これを在職年金といいます。

停止額は、月給と過去1年間の賞与の12分の1との合計額(総報酬月額相当額)、簡単にいえば賞与込の月収と、年金月額(基本月額)、それに28万円という基準額に基づいて計算されます。

例えば月収が24万円、年金月額が10万円の場合、両者の合計額から基準の28万円を引き、残った額の2分の1に当たる3万円が停止額です。10万円の年金額のうち支給されるのは7万円というわけです。

月収が2万円増えると、停止額が1万円増え、支給額が1万円減ります。この例では、月収が38万円以上の場合、年金は全額停止となります。なお、年金月額が28万円を超える場合や、月収が47万円を超える場合の停止額は、別の計算式です。

例えば62歳から3年間、毎月3万円停止されると、停止総額は108万円。この年金は勤めなければ、あるいは厚生年金加入者とされないパート勤務であれば、受給できた年金です。

ただし、厚生年金に加入することで退職後、あるいは65歳以後の年金が増えます。働く側が自由に働き方を選べるわけではありませんが、年金が停止されることだけに気を取られるのではなく、将来の年金が増えることも含めて検討しましょう。