先ごろ大阪地裁は、夫の死亡から28年後に遺族年金を請求した女性に対し、国が時効によって23年分を支給しなかったことは信義則に反するとして、その遺族年金約2200万円の支給を命じました。
年金の支給は5年で時効とされます。夫の死亡によって妻に支給される遺族年金は、夫が死亡した月の翌月分から支給されます。ただし、妻が請求手続きをしないと、その支給を受ける権利は5年で時効消滅します。
例えば夫の死亡から3年後に請求すれば、5年たっていないので過去3年分の年金は全て支給されます。今回は28年後に請求しているので、過去5年分だけが支給され、それ以前の23年分は支給されなかったのです。
この時効の取り扱いは、老齢年金や障害年金についても同じです。なお、加入記録が訂正されたことによる年金の支給については、特例的に時効は適用されないことになっています。
今回の女性は、「何度も年金事務所に足を運んだのに、夫の記録を見つけられなかったのは国の責任だ」として時効特例を主張したようです。裁判所は時効特例とは認めませんでしたが、年金事務所の対応に問題があったとして過去分の支給を命じました。
今回とは別の障害年金の裁判では、「年金の支給を受ける権利は請求してはじめて行使できるものだから、時効は請求してからスタートする」という判決もあります。これらが全てのケースにあてはまるものではありませんが、時効についても、よりきめ細やかな対応を求めたいと思います。
★中日(東京)新聞生活面掲載「みんなで年金」から
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年金の支給は5年で時効とされます。夫の死亡によって妻に支給される遺族年金は、夫が死亡した月の翌月分から支給されます。ただし、妻が請求手続きをしないと、その支給を受ける権利は5年で時効消滅します。
例えば夫の死亡から3年後に請求すれば、5年たっていないので過去3年分の年金は全て支給されます。今回は28年後に請求しているので、過去5年分だけが支給され、それ以前の23年分は支給されなかったのです。
この時効の取り扱いは、老齢年金や障害年金についても同じです。なお、加入記録が訂正されたことによる年金の支給については、特例的に時効は適用されないことになっています。
今回の女性は、「何度も年金事務所に足を運んだのに、夫の記録を見つけられなかったのは国の責任だ」として時効特例を主張したようです。裁判所は時効特例とは認めませんでしたが、年金事務所の対応に問題があったとして過去分の支給を命じました。
今回とは別の障害年金の裁判では、「年金の支給を受ける権利は請求してはじめて行使できるものだから、時効は請求してからスタートする」という判決もあります。これらが全てのケースにあてはまるものではありませんが、時効についても、よりきめ細やかな対応を求めたいと思います。
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何故、時効特例扱いでなく、信義則に反するということになったのでしょうか。詳細がわかればと思っています。ただ、少なくともこの事案は個別性があると思っています。
〈名古屋高裁判決について〉
一方、「時効は請求してからスタート」するという名古屋高裁判決(ですよね?)の方はいかがでしょうか。まず、国と個人との間には、圧倒的な情報格差がある中、年金の遡及請求が5年以上に渡って認められたこと自体は喜ばしいことと存じます。
もっとも、ブログ主さんによれば、「これら(両判決)が全てのケースにあてはまるものではありません」とのこと。おそらく、今後も国は名古屋高裁判決の類似事案があったにしても、個別対応ということで対処するのではないかと推察いたします。
しかし、こちらの裁判の主要論点は支分権の消滅時効の起算点にあり、この論点は個別事案のみならず、本来年金制度全体に係わることなのではないでしょうか。つまり、個別事案にとどまらない論点を有していると考えます。
この名古屋高裁判決は、最近、最高裁上告申立不受理とのことで、確定判決となったと存じます。
時効問題については、数年来、頭を悩ましてきました。ただ、確定判決になったとはいえ、名古屋高裁判決が示す年金の時効に関する考え方について、浅学な私にはわかりかねるところがあります。今一度、勉強し直さなければと思っている次第です。
夫の記録自体は、消えていた一部が付け加えられるなど、訂正されたわけではないので、いわゆる時効特例にはあたらない。ただし、本来見つけられるべき記録を見つけられなかったのは国の落ち度であり、この妻に対して時効消滅を適用するのは公序良俗に反するということで、時効分についてもすべて支払えという判決となったもようです。