年金ふわふわ

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遺族年金は所得補償か?

2016年03月25日 | 新聞連載記事
遺族基礎年金は、国民年金の加入者などが死亡したとき、死亡者の子、またはその子と生計を同じくする死亡者の配偶者に支給されます。子は高校生以下の子どもです。

以前は夫には支給されませんでしたが、2014年4月の制度改正によって、妻が死亡して子と夫が残されたときにも支給されるようになりました。

この改正の際、「国民年金の3号加入者が死亡したときは遺族年金を支給しない」という案が検討されました。これは「遺族年金は家計を支える者が死亡した場合に、残された遺族の所得保障を行うものである」という考え方からです。

たとえば、夫が厚生年金に加入する会社員で妻が収入のない専業主婦だとすると、妻は3号加入者とされます。この妻が死亡しても、妻は収入を得ていたわけではなく、残された遺族の所得が減ったわけでもないから、遺族年金は必要ないという理屈でしょうか。

国民年金法には、「年金制度は憲法の生存権の理念に基づき、老齢、障害、死亡によって国民の生活の安定がそこなわれることを防ぐことを目的とする」とされています。厚生年金保険法も同様です。

専業主婦の妻が死亡して、会社員の夫と幼い子どもが残された場合、その家庭の生活の安定はそこなわれないのでしょうか。年金は所得保障ではなく、生活保障だと思います。案は結局見送られましたが、いまだに年金審議会などにおいて検討課題とされています。

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