今の時期、新人研修まっさかりだろう。今朝もＮＨＫでいまどきの新人研修を
取材した様子を放送していた。いわく、いまどきのいわゆる「ゆとり世代」と
いうのは、個性を重視した育てられ方をされたせいか、厳しく叱られた経験が
少ない。なので、研修で新人たちに厳しくあたることで、実際の職場に配属
されて上司や先輩から叱られたときに精神的に折れないように鍛えあげる、
とかいうようなことをしていた。
しかし、これってどうよ？そんな旧世代のやり方を今の子供たちにやって、
本当に意味があるんだろうか。『新しいぶどう酒は新しい皮袋に』じゃないけど、
もっと適したやり方を真剣に模索したほうがいいんじゃないんだろうか。私が
人一倍平和主義で、こういうスポ根ぽいのが嫌いだからそう思うのかもしれない
けど、もっといい方法を考えてみたらどうだろう。
確かに今の新人たちが、学校でも家庭でも厳しく躾けられなかったのは事実
だろう。だからといって、それを補うために厳しく接すればいいかといえば、
そうではないはず。わかりやすくするため、ちょっと話題を変えて、たとえ
話をしてみよう。昔も今も、歯医者に行きたがる人はいない。歯医者での治療の
話をしただけで「うわ～～～、話題変えてよ」と拒絶反応をする人は少なくない。
しかし、今の歯医者なんて私らが子供の頃に比べたらまるっきり痛くないのだ。
こないだ歯がかけてしまって治療したばかりの私から言わせていただければ、
ただ寝ているだけで終ってしまう。額に脂汗をかいて、こぶしをギュ！っと
握り締めて痛みに耐えるなんてことは、まるでない。まず最初に麻酔をするし、
その麻酔も昔のみたいに痛くはない。あっという間に終ってしまう。
しかしそれでも、歯医者に行きたがる人は少ない。今の歯医者がこんなに楽で
痛くないという話をしても、頑として行こうとしない人のほうが圧倒的に多い。
「そうか、そんなに痛くないなら、行ってみるか」なんて人はまずいない。
「いや、いいのいいの。痛くないときもあるから」みたいに逃げ回る人ばかりと
言っても過言ではあるまい。
じゃ、そういう弱腰の人を歯医者に行かせるよう意識改革するにはどうするか。
「麻酔なんかして甘やかすからいけないんだ。昔みたいに、麻酔なしで気絶
するまで痛みに耐えさせながら治療をすればそれでいい。かえって、患者の
精神力が鍛えられるだろうから、歯医者を怖がらないようになるだろう」
なんて歯医者がいたらどうなるだろう。３日でつぶれる。
スパルタ式新人研修というのは、これと同じことだ。昔の人は叱られ慣れて
いたから打たれ強い、今の子供は叱られ慣れていないから打たれ弱い。だから
鍛えるためにもどんどん叱ればいい、なんていうのは暴論以外の何物でもない。
そういう人は、昔の歯医者のように麻酔なしで治療してもらえ。君の精神力と
やらを見せてもらおうじゃないか。
今の年寄りが打たれ強いように見えるのは、世の中がやさしくなったからだ。
昔の人間関係に比べれば楽なので打たれ強いように見えているだけで、実際に
強いわけではない。それはちょうど、昔の歯医者によく通っていた人が今の
歯医者をそれほど怖がらないのと同じことで、痛みに強くなったわけではない。
昔と同じ治療をすれば、昔と同じように痛い。
それに今の年寄りが若い頃、職場で叱られても何もストレスがたまらなかった
かといえば、そんなことはない。それどころか、ストレスの塊のような状態に
なっていたはずだ。だからこそ、浴びるように酒を飲んでは体を壊していた。
今の子が昔に比べて酒を飲まなくなったのは、世の中がやさしくなってあまり
ストレスがたまらなくなったこととも無関係ではないだろう。これはいいこと
なのだ。
なのに、また昔と同じように厳しく接して、ストレスに対する耐性が強くない
今の子供を無理に鍛えようとしたらどうなるか。下手したら鬱病になるぞ。
大先輩の無用のしごきはやめろ、ただ新しい才能を萎縮させるだけだ。それに、
なにを勘違いすると昔のやりかたのほうがいいなんて、過去を美化することが
できるのだろう。厚顔無恥にもほどがある。人類は進歩しなければいけない、
退化しちゃいけないのだ。
日本人がサラリーマンとして働くようになって、まだ１００年くらいしか
経っていない。つまり、日本人はサラリーマンとしてはまだ新人のようなもの。
何もかもが、まだまだ試行錯誤の段階なのだ。これに対して、サラリーマン
以前の武家社会はどうか。平安時代後期に有力豪族たちが、自分たちの土地や
財産を守るために武装しはじめたのが武家社会の始まりだとすれば、武家
社会は１０００年ほど続いたことになる。
その武家社会が安定するのは徳川家康が江戸幕府を開いてからだから、
武家社会ができて実に８００年近くも経ってからのことだ。それと照らし
あわせてみると、たかだか１００年程度のサラリーマン社会の今の日本は、
まだ戦国時代にすら入っていないような「お子ちゃま」状態だと言える。
そんな状態の今の我々は、ただ進歩することだけ考えるべきで、後ろを
振り返るような段階ではまだぜんぜんない。
だから、無用な精神論を振りかざすのは、やめたほうがいい。そんなこと
するくらいなら、無い知恵絞ってもっといい指導方法を考えたほうがいい。
取材した様子を放送していた。いわく、いまどきのいわゆる「ゆとり世代」と
いうのは、個性を重視した育てられ方をされたせいか、厳しく叱られた経験が
少ない。なので、研修で新人たちに厳しくあたることで、実際の職場に配属
されて上司や先輩から叱られたときに精神的に折れないように鍛えあげる、
とかいうようなことをしていた。
しかし、これってどうよ？そんな旧世代のやり方を今の子供たちにやって、
本当に意味があるんだろうか。『新しいぶどう酒は新しい皮袋に』じゃないけど、
もっと適したやり方を真剣に模索したほうがいいんじゃないんだろうか。私が
人一倍平和主義で、こういうスポ根ぽいのが嫌いだからそう思うのかもしれない
けど、もっといい方法を考えてみたらどうだろう。
確かに今の新人たちが、学校でも家庭でも厳しく躾けられなかったのは事実
だろう。だからといって、それを補うために厳しく接すればいいかといえば、
そうではないはず。わかりやすくするため、ちょっと話題を変えて、たとえ
話をしてみよう。昔も今も、歯医者に行きたがる人はいない。歯医者での治療の
話をしただけで「うわ～～～、話題変えてよ」と拒絶反応をする人は少なくない。
しかし、今の歯医者なんて私らが子供の頃に比べたらまるっきり痛くないのだ。
こないだ歯がかけてしまって治療したばかりの私から言わせていただければ、
ただ寝ているだけで終ってしまう。額に脂汗をかいて、こぶしをギュ！っと
握り締めて痛みに耐えるなんてことは、まるでない。まず最初に麻酔をするし、
その麻酔も昔のみたいに痛くはない。あっという間に終ってしまう。
しかしそれでも、歯医者に行きたがる人は少ない。今の歯医者がこんなに楽で
痛くないという話をしても、頑として行こうとしない人のほうが圧倒的に多い。
「そうか、そんなに痛くないなら、行ってみるか」なんて人はまずいない。
「いや、いいのいいの。痛くないときもあるから」みたいに逃げ回る人ばかりと
言っても過言ではあるまい。
じゃ、そういう弱腰の人を歯医者に行かせるよう意識改革するにはどうするか。
「麻酔なんかして甘やかすからいけないんだ。昔みたいに、麻酔なしで気絶
するまで痛みに耐えさせながら治療をすればそれでいい。かえって、患者の
精神力が鍛えられるだろうから、歯医者を怖がらないようになるだろう」
なんて歯医者がいたらどうなるだろう。３日でつぶれる。
スパルタ式新人研修というのは、これと同じことだ。昔の人は叱られ慣れて
いたから打たれ強い、今の子供は叱られ慣れていないから打たれ弱い。だから
鍛えるためにもどんどん叱ればいい、なんていうのは暴論以外の何物でもない。
そういう人は、昔の歯医者のように麻酔なしで治療してもらえ。君の精神力と
やらを見せてもらおうじゃないか。
今の年寄りが打たれ強いように見えるのは、世の中がやさしくなったからだ。
昔の人間関係に比べれば楽なので打たれ強いように見えているだけで、実際に
強いわけではない。それはちょうど、昔の歯医者によく通っていた人が今の
歯医者をそれほど怖がらないのと同じことで、痛みに強くなったわけではない。
昔と同じ治療をすれば、昔と同じように痛い。
それに今の年寄りが若い頃、職場で叱られても何もストレスがたまらなかった
かといえば、そんなことはない。それどころか、ストレスの塊のような状態に
なっていたはずだ。だからこそ、浴びるように酒を飲んでは体を壊していた。
今の子が昔に比べて酒を飲まなくなったのは、世の中がやさしくなってあまり
ストレスがたまらなくなったこととも無関係ではないだろう。これはいいこと
なのだ。
なのに、また昔と同じように厳しく接して、ストレスに対する耐性が強くない
今の子供を無理に鍛えようとしたらどうなるか。下手したら鬱病になるぞ。
大先輩の無用のしごきはやめろ、ただ新しい才能を萎縮させるだけだ。それに、
なにを勘違いすると昔のやりかたのほうがいいなんて、過去を美化することが
できるのだろう。厚顔無恥にもほどがある。人類は進歩しなければいけない、
退化しちゃいけないのだ。
日本人がサラリーマンとして働くようになって、まだ１００年くらいしか
経っていない。つまり、日本人はサラリーマンとしてはまだ新人のようなもの。
何もかもが、まだまだ試行錯誤の段階なのだ。これに対して、サラリーマン
以前の武家社会はどうか。平安時代後期に有力豪族たちが、自分たちの土地や
財産を守るために武装しはじめたのが武家社会の始まりだとすれば、武家
社会は１０００年ほど続いたことになる。
その武家社会が安定するのは徳川家康が江戸幕府を開いてからだから、
武家社会ができて実に８００年近くも経ってからのことだ。それと照らし
あわせてみると、たかだか１００年程度のサラリーマン社会の今の日本は、
まだ戦国時代にすら入っていないような「お子ちゃま」状態だと言える。
そんな状態の今の我々は、ただ進歩することだけ考えるべきで、後ろを
振り返るような段階ではまだぜんぜんない。
だから、無用な精神論を振りかざすのは、やめたほうがいい。そんなこと
するくらいなら、無い知恵絞ってもっといい指導方法を考えたほうがいい。