ジャーナリストの安田純平さんが、3年の長い拘束のすえ、カタール政府の
働きかけでようやく解放された。とてもすばらしいニュースなのだけど、
ネトウヨたちからはバッシングの嵐が吹き荒れている。ここでその声を
ひとつひとつ紹介するのはスペースの無駄なので要点を言うと、彼らが
安田さんを非難する最大の理由は、安田さんを解放するために払われた
身代金がテロリストの資金源になる、ということだ。
この意見は一見すると正しいことを言っているように見える、確かにその
払われた身代金はテロリストが新しい武器や弾薬を購入するための資金に
なることは間違いない。しかし、それは物事の枝葉末節だけを見ての意見に
すぎない。ジャーナリストが写真や映像という動かぬ証拠とともに戦地の
現状を伝えなければ、誰も戦地で実際に何が起きているのかを把握することが
できず、世論を動かすこともできなくなるのだ。
具体的な例で考えてみよう、話がシリアやイラクといった日本から遠く
離れた場所になるから、どうしても理想論や観念論に走りやすくなる。
なので、ネトウヨさんたちが好きな「中国脅威論」を基にして考えて
みよう。仮にですが、日本と中国が本当に戦争になってしまったとします。
中国が優勢に戦争を進めて日本の本土に侵攻し、日本の一部を実行支配
するまでになったという状況だとします。中国政府としては、この戦争の
大義は中国側にあり中国は正義の戦争をしている、という印象を世界に
伝えたいでしょう。なので、中国政府の息のかかったメディアを使い、
中国が人道的に日本を支配している様子(もちろんヤラセ)を撮影させて、
その画像や映像を世界に発信することでしょう。
ところが実際には、カメラの無いところでは中国の兵隊が暴行や略奪を
繰り返している。そんな様子を密かに撮影して世界に発信する人がいると
すれば、それはジャーナリスト以外には考えられません。ジャーナリストの
渾身のレポートによって国際世論が動き、中国を非難する声が世界中に広まり、
中国政府の日本統治のやりかたを変えることすらできるかもしれない。
まさに、ペンは剣よりも強し、です。なのでジャーナリストは絶対に
必要なのです、たとえ捕まってしまうようなことがあっても。彼らを
「自己責任」だの「自業自得」だのといって非難するのは、あまりに
見識不足といわざるをえない。