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Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

今時の若いものは

2010-09-02 16:42:52 | よしなしごと
先日、おもしろいニュースを読んだ。

[ニューヨーク 30日 ロイター] 
年配の人は若い人に関する悪いニュースを好んで読むことが、
米国とドイツの大学の共同調査でわかった。自尊心が高まるためだという。

 調査は18―30歳と55―60歳の2グループに分けた
ドイツ人276人を対象に実施。新たに制作するオンラインの
ニュースマガジンの試作と伝え、一定の時間内に若い人あるいは
年配の人に関する良いニュースと悪いニュースから好きなものを読ませた。

 その結果、年配のグループは自分より若い人に関する悪いニュースを
選ぶ傾向が強く、同年代のニュースには内容に違わずあまり興味を
示さなかった。一方、若い人は同年代に関する良いニュースを好んだ。

 また記事を読んだ後、自尊心の高低を調べるアンケートを行った結果、
若い人とは対照的に、年配の人は若い人に関する悪いニュースを読むと
自尊心が高まることが示された。

 調査に参加したオハイオ州立大学の教授は「われわれの社会は若者を
中心とした文化のため、年配者は自分より立場が上のように感じる人の
悪いニュースを読みたくなるのでは」と分析する。



これを読んで、きっと年配のグループの人たちは「まったく最近の若い
もんは・・・」と思いながらニュースを読んだんだろうなぁ、と思った。
と同時に、決して「われわれの社会は若者を中心とした文化のため」に
年配のグループの人たちが若い人に関する悪いニュースを好んで読んだの
でもないんじゃないかな、とも思った。というのは、年寄りの若い者批判
というのは、なにも最近始まったことではない。

勝海舟は『氷川清話』の中で「今時の若者は・・・」とやっていたそうだし、
もっとさかのぼって、徳川家康も関が原のときに「今時の若い者は」と
嘆いたということだ。もひとつさかのぼって枕草子でも若い人批判が
書かれているそうだし、古代エジプト時代にも若者批判があったことが、
ロゼッタストーンに刻まれているということだから、別に今の若い人が
だらしないのではない。年寄りが若者を批判するのは、若い者に劣等感を
覚えているからだ。

陰口をきくのが好きな人がいる。なぜ、陰口をきくのか。それはその相手に
対して、幾ばくかの劣等感があるからだ。その劣等感を抱えたまま過ごすのは
精神的につらいので、なんとかして解消したい。じゃあどうするか、下の
ような流れで、その劣等感を解消するのが人の常だ。

1. 相手の欠点や弱点を見つけて、それを馬鹿にする
2. 馬鹿にすることでその人を自分の意識の中で自分の下に位置づける
3. 相対的に自分の地位をその人よりも高める
4. その人に対する自分の劣等感・不安感が解消される

こうした自己防衛手段によって、劣等感の強い人は崩れ落ちそうになる
自分のプライドを保っているのが現実だ。こういう流れがわかったところで
お年寄りの若者批判に話を戻すと、ここにも実は劣等感がからんでいる
ことに気が付く。劣等感の強い人にもそうでない人にも、老いというのは
平等に、しかも必ずやってくる。体が動かない、頭が回らない、白髪が
増えて皮膚がたるむ、自分が老いていくことを日々実感しながら生活して
いれば、若い者に対して劣等感を抱くなというほうが無理というものだ。

さらに、若いものは自分たちとは違う文化の中で生きている。劣等感に
加えて疎外感も覚えることだろう。テレビに出ているタレントの名前が
わからない、今流行の電化製品をどう使っていいかわからない、
どうしてあんなオシャレをしたがるのか理解できない。これでは、若い
人たちはお年寄りにとって脅威であるばかりではなく、自分たちにとって
異邦人としてしか認識できないだろう(それも変な日本語を喋る異邦人)。
陰口・悪口が噴出しないほうがおかしい。

「後世畏るべし」じゃないけど、お年寄りはこのように様々な劣等感や
不安感などを抱きつつ若い人たちを眺めているからこそ、いつの時代に
なっても後から後から悪口を並べ立てるのだ。姑の嫁いびりも、その
一形式と考えていいのではないだろうか。これは見方を変えてみると、
「若い人を批判するようになったら、歳を取ったと思え」ということかな。

別に実害はないからいいけど、お年寄りと若い人との世代の断絶が
深刻になるのはあまりいいことじゃないだろう。特に、今後は超高齢化
社会になることが確実なわけで、お年寄りが大勢で若い人に対して、
大先輩の無用のしごきの如く理不尽な批判ばかりするようになったら、
ちょっと困る。過激な煽動政治家が「今の若いものはたるんでいるから
徴兵制を復活させて鍛え上げる!私に清き一票を!」なんてやりかねない。

上の世代と下の世代が隔絶していない社会というのは、できないもの
だろうか。原因が劣等感だけに、それも不可避の劣等感だけに難しい
ものがあるだろうけど、そこは経験豊富なお年寄りのこと、様々な
人生経験から得たものから、何か考え出せないだろうか。若い者に
劣等感を持たずに接することができるような方法とか。

実際、若い人たちは若い人たちで苦労しているもの。自分たちの
若い頃を思えば、思い当たることはいくらでもあるだろう。決して
自分たちの若さを鼻にかけてやりたい放題やっていたわけではない、
むしろ上の世代から謂れのない中傷やいやがらせを受けたり、経験
不足からくる不安や悩みに苦しんでいたことのほうが多くなかったか。
若いものに劣等感を覚えているとすれば、それは隣の芝が青く見えて
いるだけだ。

「人の一生とは、前半は親によって台無しにされ、後半は子供によって
台無しにされる」という言葉がある。これは、親の立場で読んでも
子供の立場で読んでも、心に重く響く言葉だ。自分の親も、自分の子供も、
こう思っているのかと思うと、お互いに相手のことは言えなくなる
とともに、じゃあどうすれば台無しにならない人生をお互いに送る
ことができるのかを考える機会にもなる。