新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

ホジキンリンパ腫についての質問より:ついでに生存曲線の見方

2017-10-03 05:03:25 | 医学系

おはようございます。

 

先程、コメントでホジキンリンパ腫に関してのコメントをいただきました。僕の本のデータがありますので、データをアップさせていただきました。

 

使用した論文は画像の中に記載されていますので省略します(JCO 2012)。ホジキンリンパ腫の国際予後スコアが古いデータ(NEJM 1998)だったため、最近の患者さんではどのような成績になるのかを示した論文になります。

 

 

上の表はそれぞれの論文で示されている生存率(国際予後スコア:IPSごと)、下の図はJCO 2012で示されている生存曲線になります。今、画像をアップして間違いに気がつきましたがPFSではなく、EFSですから「無イベント生存率」なんですが、PFSが多かったからか無病生存になっていますね(汗

 

これ3校だから・・・直しているかな?帯広に帰ったら確認しよう・・・(汗

 

話を戻しますと・・・イベントフリーなので、イベント(多分死亡や合併症、その他のイベント)がない生存期間を示しています。

右は全生存期間(生きている患者さん、再発してもOK。逆に再発以外で無くなるのもカウントされる) 

 

下に下がるほど患者さんの数が減っている(再発や死亡)ことを示し、それは100%(1.0)から0.0(0%)までで示しています。

 

最初のあたりで左のグラフで下がっている患者さんがおりますが、これは再発(というよりは合併症や難治:寛解に至らない、治療抵抗性)や死亡が初期に生じているものを示しています。

 

治療が終わってからも初期(2年くらいまで)は下がっていますが、これは再発していることを示しています。しかし、2年以降はかなりなだらかになり、再発率が低下していることを示しています。

2年以降の再発は少なく、5年以降の再発(イベントなので、合併症か何かかもしれません。論文を再確認はしませんので、すいません)はほとんどなく、質問にあった7年目の再発はまず考えにくいです(妊娠OKだと思います)

 

一方、右のグラフ(と表)からわかることもあります。再発した患者さんがどの程度治療でレスキューできているかということです。全生存率はどういう状態(再発、治療中)でも生存していればグラフは下がりません。一方で、再発以外に心筋梗塞などで亡くなっても、グラフは下がっていきます

 

わかりやすいのでIPS 4点や5点以上の生存曲線を比較してみます。EFSは4点では70%前後、5点以上では60%前後ですが、OS(全生存率)は4点では85%、5点以上では67%前後となっています。5点以上の人は再発後の生存率に改善が少ないため、再発した後の改善がこの時点では乏しいことを示しています。もちろん、背景因子(ホジキンリンパ腫は若年者は限局期が多いため、IPSが高い=45歳以上の可能性が高い・・というのもあります)があり、サルベージの治療がしにくいということもあるかもしれません。

逆に4点の方はOSは15%上昇しています。基本的に再発しても半分の方は完治に近い状態に持ち込める(治療が有効)ということを示しています(まだ、再発してからは5年以上は経過していませんのでなんとも言えないですが、多分大丈夫と思います・・・2年は経過してると思うので)。

 

このように再発後の治療反応性などの推測も可能で、それを見ながら次の手をどうするか、再発しないように手を打つべきか・・・などを個人個人に合わせて対策を決めます。なお、これは統計学的な資料でしかありません。もし、IPS5点以上の方が再発したとしても、全体と個人は違います。全てのデータで言えることですが、全体のデータがどうであっても患者さん個人がうまくいくかどうかが重要です。

 

昔、ある予後不良因子を複数持っている患者さんのOSがかなり低いことがわかっていました(論文上まとまったデータがなく、個別の報告を見ても誰もうまくいっていない)が、どうにか治療法を変えることで寛解に持ち込み、そのまま移植に突入しました。もう7〜8年経過しますが、無再発です。このようにデータはデータ、個人は個人と思っていただければと存じます(都合よく考え、前向きに治療は行う方が結果もついてくるように思います)。

 

この記事はいただいたコメントを見て作成したものですが、少しでも多くの方の参考になれば幸いです。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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6 コメント

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インフルエンザも気をつけてください (アンフェタミン)
2017-10-17 05:23:04
>女王様さん
おはようございます。コメントありがとうございます。

LDの上昇はCMLだったかもしれません。白血球が30000/µlあれば白血病は鑑別になりますが、貧血や血小板減少がなかったので急性白血病とは思われなかったのだと思います。急性白血病で白血球が30000/µlあったら結構多い方です。

あとステロイドでも白血球が20000/µlくらいなら上昇した人は何名も見たことはあります。30000/µlは僕はないですが、もしかしたらあるかもと思ったのかもしれません。

甲状腺はちょっと?ですが。

ドクターGというのを見たことはないのですが、話には何度か聞いております。結局知識の量が鑑別診断の量になります。どの診断確率がどの程度かを見積れなければ、どの検査をしても意味がないです。検査はある疾患の診断確率を上げ下げするだけなので。

そういう意味では一生勉強です。こんなことを言うとなんですが、僕も他の領域の抗がん剤など聞いたこともないものもたくさんあります(薬の本で眺めたりはしていますが)。全て勉強するのは難しいほど、細かく範囲が広くなってきた最近の医学です。

ただ、ポイントだけは外してはいけないと思っていますが。診断学や救急対応のように。

また、コメントいただければと存じます
返信する
なんとなくわかりました! (女王様)
2017-10-17 04:13:04
卵もとびっこも同じ量。
そういえば魚卵はプリン体たっぷりだとかテレビでやっていました。
鶏卵は一度に1つくらいしか食べないけれど タラコなんて一腹にたまごがびっしり詰まってますもんね。
なるほどー。

LDも昔から高くなっていました。
LDって何だろう?と気にはなっていたけれど、腎臓が悪いから高くなる という医師の言葉で、そんなもんかとしか考えていなかった。
よくよく考えると 気管支炎で3万もの白血球は高過ぎますよね。
ステロイドと抗生剤で上がったというのもどうだったのか。

市中病院の呼吸器で そうはCMLなんて思いつかなかったのでしょう。
激しく白血球が下がれば AMLは疑ったかもしれないけれど‥。
この数年後にアナフィラキシーで入院したとき(別の病院) 検査結果表を見ながら 「だいたい正常値だから退院していいんだけど」ややあって
甲状腺の数値が若干高いのが気になる、と。
どの項目かわからなかったのですが、あまり慌てるほどでもないから追々経過みればいいかな? で終わってしまいました。
もしかしたら これもLDや白血球数から疑われたのかも。

私の担当になる医師は いつも5年6年の後期研修医です。
専修医 と名札にありますが、呼吸器なり腎臓なりを選択して鍛えてる時期ですよね。
そうなると 血液内科的な異常まではなかなか結びつかなかったりするのかも。
これからまた新たなシステム(肩書き?) で 総合内科医から内科専門医とかいうのができるそうですね。
NHKの ドクターGで聞きました。 新人研修医3人が問診から病気を探る番組で。
指導する医師が もっと目と耳を使いましょう と教えていました。
沢山疑わしい疾患を並べてみる。そこから違うものを消去していく作業が内科専門医には必要である と。

しかし… 総合内科医があるのにまた 内科専門医なんでしょう?
本当に生涯勉強ですね。
今の呼吸器担当医も 当初はタシグナをご存知なく、うちの病院じゃ使わないからPCに出ないんだよ と言ってました。
それでもいろいろ調べてくれて
間質肺炎にだけは気を付けるように と。
呼吸器が弱いからリスクが高いし 命取りになるそうで…。

腎臓も呼吸器もCMLも 風邪や感染症に気を付けて と言われていたのに、急に冷え込んだせいか鼻風邪をひいてしまったようです。
インフルエンザの注射をしなきゃと思った矢先。

なんでも数が少ないので、小児→高齢者→重篤な持病がある人 の優先順位だとか。 私は後回しかなー。
2年続けてA型にやられたので どこかで早めに受けなくては。

自分の体は自分で守る。 鉄則ですよね。
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CMLと尿酸値 (アンフェタミン)
2017-10-14 13:16:16
>女王様さん
こんにちは、コメントありがとうございます

細胞数が増えると・・・わかりにくいですね。プリン体というのはDNAの分解産物です。DNAというのは細胞1つ1つが持っている遺伝子の「物質名:デオキシリボ核酸」のことです。
鶏の卵1つでもとびっ子の卵1つでも同じ量(厳密にいうと違いますが)のDNAがあるわけです。

CMLを発症した時点で、白血球を中心に全ての血液細胞が「増加」の方向に向かいます。細胞1つが出すプリン体の量が同じであれば、数が増えれば増えるほど尿酸値は上がります。

体の中の尿酸値の8割は「体の中の細胞数」に依存すると言われます。2割が食事などからと言います。

まぁ、血液内科医であれば、白血球数と尿酸値、多分上がっていたであろうLDH(乳酸脱水素酵素)の値でCMLという推測をしたかもしれませんが、一般内科医でそこまで推測しなくてはいけないとは言えないかな〜と思います。

事務作業については「ある程度までやってくれる病院」もありますが、医師に全て丸投げというところもあるかと思います。そういったもので、時間が取られている医師もいると思います。

海外などでいろいろな経験をされているので、ものの見方が素晴らしいのですね。また、英語などもいろいろ堪能と伺っておりますし、素晴らしいですね。

過去は過去、今は今と考えてできることをして行くことは重要かなと僕も思います。

また、コメントいただければと存じます
返信する
CMLでプリン体が?? (女王様)
2017-10-11 01:16:13
細胞数が増えると‥。
はて。わかるようなわからないような(汗

全くお酒を飲まないし いわゆるプリン体食品と言われる臓物や何やらはむしろ苦手だし、何故だろうとは思っていました。

高いねー と最初に言われたのが10年前。
13.8もあるよー? と。 それって高いんですか?
「上限値の2倍もあるんだよ‥」。
ひえっ。
下戸の自分には関係ないと思い込んでいた尿酸値。
腎臓はそのころは今ほど悪くなかったのだけれど、とりあえずユリノームを投与されました。
が 一向に10を割らない。
もしかしたらこの時に 既にCMLで何かが起きていたのかもしれませんね。
だとしたら 10年…。

この緊急入院は 気管支炎で重篤な喘息発作だったんで、だから白血球が3万あるという説明でした。
本当にそうだったのか 今になって気になります。
生食・ステロイド・テオフイリン・抗生剤と 24時間点滴を4本もぶら下げて 鼻カニューレつけて。
症状が治まってもまだ白血球が2万くらいあるので もう数日入院して下さいとのこと。
「ステロイドや抗生剤をたくさん使ってたからだと思う」「やめたら下がるだろうし、テオフイリンだけ続けよう」みたいなことを言っていましたが この白血球数も今更ながら、ですねえ。

CMLが見つかり グリベック治療が始まってから 尿酸値も8くらいに下がりました。
関連があったんですね。
フェブリックも使い、まあまあ正常値になってましたが 例の肝機能数値異常で止めていて。さらに急にネフローゼ状態でまた少し上がってしまいました。

というか CMLじゃなくネフローゼのせいだ!と自分に思い込ませています。
痛風にさえならなきゃいいかなー なんて呑気に考えていましたが、尿酸が高いのも腎臓に負担なんだそうですね。

クリニックの医師が 腎臓は真綿で首を絞めるように悪くなるから 白血病よりタチが悪いんだよ とイヤ~な言い方をしていました。
イヤ~な言い方ではありますが、難病の補助がネフローゼならあるだろうから保健所で書類をもらって 腎臓内科の医師に申請書を書いてもらうよう教わりました。

薬で数値が若干下がっているので 条件に入らないかも知れないですが。
忙しい医師に 非常に頼みにくい。 申し訳ないなぁ と思ってます。
こういう余計な事務的作業、生命保険屋の書類とか たくさんの患者が持ち込むと結構な量になりますよね。
外来や当直以外にも こういう雑務で時間外労働が増えるのだろうと 改めてわかりました。

CMLも難病指定で2割負担なら
どれほどラクか‥ なんて厚かましいことが頭をよぎったりして。
病気は体も心も蝕むけれど お財布も蝕む。 それがさらに精神的に追い討ちをかける。

年間の医療費で 毎年1回は海外旅行できたなー なんてガッカリします。
若いころはエジプトやマチュピチュみたいな秘境オタクだったんですよ。
ハワイやタヒチに ちょっとスキューバしに行ってくるか~ というくらい 先を考えずに生きてきました。
まあ そのツケが回ったのかもしれません。 大きなスーツケースは今や入院セットかばんに。

人間は不摂生していなくても いつ病に襲われるかわかりません。
元気なうちに、出来るうちに楽しむのも間違いではないと 最近思うようになりました。
逆に 海外なんて行けなくても、犬と散歩しながらドングリ(シイの実)やキンモクセイを見つけることもまた 幸せであると学びましたし。

嘆くのも悔やむのも時間の無駄ですね。
CMLだけでもせめて 維持できれば‥ が目標です。
返信する
腎臓は気になりますね (アンフェタミン)
2017-10-04 20:26:57
>女王様さん
こんばんは、コメントありがとうございます。

血液内科でも他の病気の話はよくします。僕もたまに「そっちの診療科の主治医ではないぞ・・・(汗」というくらい、別の診療科の話をしていました。

タシグナはPDGFRの抑制がそれほど強くないので、体液貯留は少ないと思います。昔、書いたかもしれませんが無尿だった方がタシグナに変えたら尿がではじめたこともあって・・・。
メカニズムがわかれば論文にできたのですけど。

腎機能が悪いことの方が、僕は気になってしまいます。やはり専門家なので、自分の分野のことはどうにか考えられると思ってしまうのかもしれません。

タモリと山中先生がやっている番組があるのですね。知りませんでした。腎臓が酸素を欲しがる・・・というのは「酸素」を感知して赤血球を作らせるというような話でしょうか?
まぁ、酸素が不要なものは「赤血球(解糖系しかない)」以外はないと思いますが・・・。

CMLで尿酸値が上昇するのは、尿酸値の上がる原因であるプリン体が増えるからです。プリン体は細胞数が増えたら上昇します。
ビールやワインなどでは酵母から溶け出したプリン体が原因で尿酸が上昇しやすいわけです。CMLで細胞数がグングン増えていけば、尿酸を作る材料のプリン体が増えるために尿酸も増えます。
腎臓が悪くなると尿酸値が上がるのは排泄経路の問題ですが。

腎機能が改善する薬ができるかはわかりませんが、近い将来iPSから作られたりするかもしれないですね。そうなったら良いなと思います。

また、コメントいただければと存じます

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都合よく考える (女王様)
2017-10-04 03:47:13
なるほど。
そうしよう、例外もあるかもしれないし。 とこの記事で前を向くようにしました。

久しぶりの血液外来。
案の定 クレアチニン2.8 は 高いねえ。 アルブミンも良くないねえ。 と血液科じゃないような会話が淡々と続く。
ここまでは少しづつISが落ちてくれたけど 下げ止まりかもしれない。 「200に増やしてみようかね、タシグナ」。

半ばヤケクソで お願いしました。
150から200ならさほど副作用はないだろうとはいうけれど、腎機能が良くない私には むくみや体液貯溜は少し怖いところではあります。

病名だけならCMLのほうが重く深刻なんだろうけれど、CMLだけならさして自覚症状もないし、制限もなくラクなんですよね。
クレアチニンや尿素窒素を下げるには 塩分と共にタンパク質も制限しないとならない。
タンパク質のない食品なぞまずないし、足りないと筋肉から補充しちゃうんだそうですね。
オバサンで筋肉なくなると 歩けなくなったらえらいことに‥。
肉類魚類を減らして野菜にすると それはそれでカリウム過多になる、 なんて厄介な病気だろうと頭が痛くなります。
食べることが好きなので CMLよりガックリきました。
梨、食べすぎたかな?
甲殻類はアレルギーがあるし、なんでも食べられることが如何に幸せか痛感します。

NHKで タモリと山中先生がやる人体の番組。
とても楽しみにしてるんですが 第一回がのっけから「腎臓が寿命を決める」。
ありゃー。
腎臓は酸素を欲しがる とは知らなかったので録画して見るつもりです。

主治医は 使ってみなきゃわからない と申しますが、アンフェタ先生は150を200にすると何か変わると思いますか?
効果とリスクと。
1錠が千円も高い!これもなかなか患者には重荷ですが。

そういえば。 尿酸も9に上がりトピロリックという薬が出されました。
腎機能だけじゃなく CMLで尿酸値が上がることもあるそうで、少し気にしてます。
なぜ CMLで尿酸が上がるんでしょうか。
初診のときは葉酸も高く、女性には必要だとかで葉酸サプリを飲んでたくらいでしたから 何故だろう?と。

医療は日進月歩ですが、病気もまたどんどんタチ悪くなりますね。
なんとなくネットのウイルスとか、ネット犯罪のいたちごっこみたいです。
腎機能が完治する、ノーベル賞クラスの薬が出ないかなー と心待ちにしています。
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