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新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

卵子保存で妊娠:可能性を残す治療というだけで素晴らしいと思う

2012-03-09 21:12:26 | 医療

もうひとつだけ

 

僕も白血病や悪性リンパ腫などの疾患と患者と一緒に戦う医師(いまは臨床現場にいませんけど)のつもりですが、若い患者さんはやはり抗癌剤治療によって子供を作る能力(生殖能力)に影響が出ることもあります。

 

もちろん、抗癌剤の組み合わせ、種類によっては大きく影響を受けないものもあります。全例ではないですけど、CHOPやABVDは女性の生殖能力に大きく影響しないといわれます(卵子はあまり分裂しない。大量だとダメージは受けますが。ただし、精子は分裂能力が高い:よく増えているのでダメージは大きい)。男性はよく精子保存をするのですが、卵子保存はあまりおこなわれていません。

 

一度、若年女性の移植の時にそういう話もしたことがあるのですが、あの時は必要ないといわれました。

 

ただ、この話はいろいろな意味で素晴らしい話だと思いましたので、紹介させていただきます。

 

がん克服後、冷凍保存卵子で妊娠 国内2例目、経過は順調

http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20120309142723876

(2012年3月9日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】
悪性リンパ腫を乗り越えて

 国内の民間不妊治療施設でつくる「A−PART日本支部」は8日、がん治療で卵子ができなくなる恐れのあった女性(35)が、事前に冷凍保存しておいた卵子を使ってがん克服後に妊娠したと発表した。同様の治療では国内2例目という。6日時点で妊娠9週目、経過は順調としている。

 卵子を保存した「加藤レディスクリニック」(東京都新宿区)によると、女性は血液のがんである「悪性リンパ腫」を乗り越えて妊娠。冷凍保存の卵子でがん治療経験者が妊娠したのは、2011年に大阪府で無事出産した例があるという。

 女性は悪性リンパ腫の抗がん剤治療中の07年3月、治療により卵子ができなくなる恐れがあったため、未受精卵子7個を採取。病気を克服した後に結婚し、11年8月から保存していた卵子を使った体外受精による不妊治療を始めていた。

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抗がん剤前に卵子を凍結保存、治療後に妊娠成功

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120309-OYT1T00081.htm

 

 悪性リンパ腫にかかった女性が、抗がん剤治療前に凍結保存した卵子によって妊娠することに成功したと、8日、加藤レディスクリニック(東京都)が発表した。

 治療の影響で不妊になり、妊娠をあきらめざるを得なかったがん患者への朗報となりそうだ。

 女性(35)は2006年、未婚の時に血液がんの一種の悪性リンパ腫と診断された。妊娠の可能性を残すために、翌年3月、卵子7個を同クリニックで凍結保存した。

 半年間の抗がん剤治療で悪性リンパ腫は良くなり、10年5月に結婚。自然妊娠は難しいとわかり、11年8月、凍結していた卵子3個と夫の精子の顕微授精を行った。1度目は流産したが、2度目の受精卵移植は妊娠が継続、現在9週に入り経過は順調という。

2012年3月9日06時04分  読売新聞)

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僕が担当していた悪性リンパ腫の患者さんも、R-CHOP療法後に妊娠されたひとがいます。女性が、いや結婚した夫婦に子供ができるというのは素晴らしい話だと思います。

悪性リンパ腫の治療後、再発の危険を考えてきっと5年間待たれたのでしょうね。そして結婚して・・・。素晴らしい話だと思います。

そこまで待たれたこともふくめて、よく考えられての決断だと思いますし、きっとお子さんが生まれてくれば(すいません、まだ9週と書かれているので)いい家庭でよいお子さんに育つと信じています。

 

ただ、この記事で少し心配なのは「若年女性」の腫瘍の中で乳癌・子宮頸がんなどがあります。特に乳癌はホルモン療法なども行う可能性があり、その場合は難しいのかもしれません。妊娠の維持にはエストロゲンが必要なので、まさに諸刃の剣になるかもしれません。

 

しかし、女性に、多くの夫婦に子供を持つ可能性を残す治療法というだけで、素晴らしいことだと思いました。可能性を残す、少なくとも不利益は患者さんたちにはないはずですから。

国内2例目ということですが、多くの人が利益を享受できますように。

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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新規採用7割削減は無理じゃない?:人材を無駄にしない制度改革が必要では?

2012-03-09 20:36:18 | Weblog

こんばんは

 

今日も外にいる時間が長かったのですが、先日までと違って寒くなりましたね。三寒四温とは言いますが、寒暖の差が激しくなるとそれで風邪をひく方がいますので注意が必要ですね。

話は変わるのですが、月に1回のペースで職場の皆様に対する医療ニュースみたいなものを作っているのですが、今回は花粉症に関いて書いてみました。専門用語はできるだけ使わず、医療従事者が見たら「バカみたい」と思うかもしれないようなニュースです。内容はおおむねあっています。専門用語を使用しないと、完璧に説明するのは難しいわけですが、知ってもらうべき内容だけ、「ここまで知っていれば何をされているのか、医師が何を狙って処方しているのかが理解できる」というラインがあります。

 

今回、

「我ながら上出来(笑」

と思って持っていったら、思ってもいないところで突っ込まれました。基礎知識がある医療従事者の皆さんからは「わかりやすい」と言ってもらえましたが、こういうところで改めて説明のむずかしさ(ちなみに、質問に対して説明は1分で理解してもらえました)を認識しました。

 

患者さんや家族への説明は、どこまで簡単にしても簡単にしすぎるということはないだろうと改めて思いました。

 

まぁ、以前書きましたが「子供に教えるように言って、馬鹿にしているんじゃないの?」といった方や「尿検査ではなくて、お小水の検査っていうのは馬鹿にしている」という方もいますので、全員というわけではないですが。

 

さて、そういうことで説明というのは難しいものだと思うのですが、新規採用を7割削減の真意が全く分かりませんね。説明が必要だと思います。

もっとも、今の政治のほとんどは説明が足りないとは思いますが。

 2013年度の国家公務員新規採用について、岡田副総理が09年度の上限(8511人)比で各府省全体で7割以上削減するよう指示していたことが9日、分かった。

 実現すれば上限は2500人程度となる。

 政府は6日の行政改革実行本部(本部長・野田首相)で、09年度比で4割超、12年度比で2割超の新規採用削減を目指す方針を決めているが、消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革に国民の理解を得るため、削減率の上積みを図ることにした。

 府省ごとの削減率は業務内容に応じて違いを設ける方針で、定員管理を担当する総務省が各府省と調整している。ただ、政府内では「業務遂行に支障が出る」との指摘も出ており、岡田氏の指示通りに削減が実現できるかどうかは見通せない状況だ。

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この話で問題になるのは新規採用をそこまで減らすと業務に支障が出るのではないかということ。そして、もし「可能である」ということだと本当に今まで無駄が多かったという話になってしまいます。

先日も書きましたが、うちの家は公務員家系なものでいろいろわかるのですが、やはり現場は人手が少ないと思います。うちの弟は年末年始は仕事で帰ってきませんでしたし、かといって給料が高いわけではないですね。安いというべきか。

 

僕なら・・・本当に必要だというなら「上から肩たたきですかね」。上に行けばいくほど、ポジションがなくなっていくのですから。ただ、それに対して「天下り」というレベルのことをしない。ただ、やめさせるのであれば次の職業を保証しないといけない。そうしないと若い公務員希望者が入ってこずに、事務レベルで崩壊してしまう。

うちの親も公務員でしたが、56歳で退官して今は会社員をしています。我が親ながら(僕は尊敬していますので)、いろいろやっていて昔話を聞いたら、ある年の某費用がきちんと競争させたところ5億くらい安くなったといっていました。

いろいろやる親だと思っていますし、僕は父に精神的なところや考え方はよくに似ていると思っています。

その父も働いていた時に比べて、今は4分の1程度の給料で(僕が仕送りするくらい)働いています。僕に言わせると人材を無駄にしていると思いますが、仕方がないでしょうw そうでなければ、天下りになってしまいます。影響力が大きすぎるポジションのいてはいけないのだと思っています。

 

同じようなレベルでいいのではないかと。影響力のあるようなポジションで再就職させるから、「天下り」と言われるのであって、そんなポジションでの再就職を禁止すればよいのではないかと思っています。

 

この狙いは二つ、無駄な公務員がいるのであればその削減と、公務員に優秀な人材が集まりすぎないようにするため。すなわち民間への人材の流出を狙います。

 

この制度であれば本気で国を変えようという「熱い思い」のある人間しか、国家公務員にはならないのではないかと思います。

 

おそらく、東大卒や京大卒などのやたらと頭が良い方々は、そこまで大勢じゃなくてもよいのだと思います。まぁ、京大・東大・一橋だから頭が良いとは思っていませんが、話をすると頭が良い人が多いとは思います。

だから、僕はむしろ今の国家公務員の方々は能力を十全に発揮できない場所にいるのではないかと思っています。それならば人材の無駄です。

 

日本の一番の財産、日本の一番の資源は「人材」だと思っています。その人材を無駄にしない制度改革が必要なのではないでしょうか。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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