黒龍は福井県永平寺町にある蔵元で作られています。フツーの黒龍でも十分おいしいですが、トップレベルの酒、つまり超高級品というべきお酒が数種類あります。
数年前に、食事にお招きいただいたお宅で、黒龍の石田屋というお酒に初めて出会いました。そのお宅でもいただいたもので、なんでも正月に封を切ってお屠蘇代わりに飲んだ後、酒が好きな人も家族にいなかったので、私が来るまで冷蔵庫で保管してくださったとのこと。私がいただいたのは2月の中旬くらいだったと思いますので、2か月近く冷蔵庫で眠っていたわけです。お酒好きな方はおわかりの通り、いくら冷蔵庫に保管しても、酒の味は必ず落ちます。どんな銘酒でも、栓を抜いてから1日たっただけで、へたった感じの、平板な味になってしまいます。酒好きでもない先方では、そんなこともわからずにとっておいてくれたわけですが、そのご厚意はありがたいと思いました。しかし、味の方は期待はしていませんでした。
濃いブルーの4合瓶に入った酒を飲んだとき、私が飲んだ酒の中でもトップレベルの酒の一つだとすぐ思いました。飲み口は、濃厚な酒ではありませんが、適度に芳醇な感じもあり、何より芯が太い印象を受けました。ぐっと迫ってくるような旨味があったと思います。ほとんど減っていなかった石田屋を私は一人で飲み干してしまいました。
しばらくしても忘れられず、ネットで調べてみたところ、期間限定・数量限定の発売でほとんど入手が困難、オークションでは3万円の高値で取引されていることを知りました。開栓後2か月もたって、あれだけ旨かったのだから、開けてすぐに飲んだら……そう考えるのは酒飲みの業と言うべきものでしょう。
諦めかけていたとき、飲み仲間から朗報が入りました。茨城県のある町に、石田屋を17,000円で出している居酒屋があるというのです。費用を折半する約束を取り付け、私は飲み仲間とともに駆けつけました。そこで、出していただいたのが、写真の石田屋です。右にある箱が外箱、中央に黒く見えるのが木製の立派な内箱、そして、左にあるのが空き瓶です。東京から飲みに来たと告げると、店長は空き箱を含めてすべて紙袋に入れて渡してくれました。それで一式が私の手元に残ったわけです。
意外にも味に対する感動はありませんでした。飲み仲間も、「そんなにいいか?」といった顔をしていました。ひょっとしたら貯蔵したり、開けてしばらくしてから飲んだ方が旨い酒だったのでしょうか。最初に飲んだ時のような感動がなかったのはなぜなのか、今も謎のままです。
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