山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

食べるもの食べつくしてひとり

2009-12-22 23:02:18 | 文化・芸術
Dancecafe081226114

Information – 四方館の DANCE CAFE –’09 Vol.4-
出遊-二上山夢験篇

あそびいづらむ-ふたかみやまゆめのあらはれへん-
Date :12/27 –Sun- PM2:30 Space : 弁天町市民学習センター

―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-10-
1月6日、雨、何といふ薄気味の悪い暖さだらう、そして何といふ陰鬱な空模様だらう。

昨日は大金-私の現状では-を費つたが、今日は殆ど費はなかつた、切手3銭と湯銭3銭とだけ。

隔日に粥を食べることにしてゐる、経済的には僅かしか助からないけれど、急に運動不足になつた胃のためにたいへんよろしい。

次朗さんに手紙を書いた、-その心中を察して余りある事も感傷的になつては詰らない事、気持転換策として禅の本を読まれたい事、一度来訪ありたき事、等、等。

苦痛のために身心を歪曲されるやうでは駄目だ、人生といふものはおのづから道が開けてくるものである、といふよりも、人間は自分自身の道を見出さずには生きられないのである。

※表題句の外、4句を記す

-四方のたより-「鎮魂と飛翔-大津皇子」二上山の章Scene.4
「幻影的な旅」その1

 こう、こう、こう
 魂呼ぶ声に誘なわれて
 不思議な夢の
 冥界への旅だち
 揺りから揺られ
 女がひとり、幻想に舞う


林田鉄、往年の仕事「鎮魂と飛翔-大津皇子-」二上山の章-Scene.4


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霧の朝日の葉ぼたんのかがやき

2009-12-21 23:50:22 | 文化・芸術
080209282

Information – 四方館の DANCE CAFE –’09 Vol.4-
出遊-二上山夢験篇-


あそびいづらむ-ふたかみやまゆめのあらはれへん-
Date :12/27 –Sun- PM2:30 Space : 弁天町市民学習センター

―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-09-
1月5日、霧が深い、そしてナマ温かい、だんだん晴れた。

朝湯へはいる、私に許された唯一の贅沢だ、日本人は入浴好きだが、それは保健のためでもあり、享楽でもある、殊に朝湯は趣味である、3銭の報償としては、入浴は私に有難過ぎるほどの物を与へてくれる。

次朗さんから悲しい手紙が来た、次朗さんの目下の境遇としては、無理からぬこととは思ふが、それはあまりにもセンチメンタルだつた、さつそく返事をあげなければならない、そして平素の厚情に酬ゐなければならない、それにしても、彼は何といふ正直な人だらう、そして彼女は何といふ薄情なひとだらう、何にしても三人の子供が可愛相だ、彼等に恵みあれ。

午後はこの部屋で、三八九会第1回の句会を開催した、最初の努力でもあり娯楽でもあつた、来会者は予想通り、稀也、馬酔木、元寛の三君に過ぎなかつたけれど、水入らずの愉快な集まりだつた、句会をすましてから、汽車弁当を買つてきて晩餐会をやつた、うまかつた、私たちにふさはしい会合だつた。

だいぶ酔うて街へ出た、そしてまた彼女の店へ行つた、逢つたところでどうなるものでもないが、やつぱり逢ひたくなる、男と女、私と彼女の交渉ほど妙なものはない。

自転車が、どこにでもあるやうに、蓄音機も、どの家庭にもある、よく普及したものは、地下足袋、ラヂオ、等、等。

※表題句の外、7句を記す

-四方のたより-「鎮魂と飛翔-大津皇子」二上山の章Scene.3
「霊のこだま」その2


林田鉄、往年の仕事「鎮魂と飛翔-大津皇子-」二上山の章-Scene.3


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ひとり住んで捨てる物なし

2009-12-20 22:15:50 | 文化・芸術
Db07050910110

Information – 四方館の DANCE CAFE –’09 Vol.4-
出遊-二上山夢験篇-

あそびいづらむ-ふたかみやまゆめのあらはれへん-
Date :12/27 –Sun- PM2:30 Space : 弁天町市民学習センター

―山頭火の一句―「三八九-さんぱく-日記」より-08-
1月4日、曇、時雨、市中へ、泥濘の感覚!

昨日も今日も閉ぢ籠つて勉強した、暮れてから元寛居を訪ねる、腹いつぱいのお正月の御馳走になつ戻つた。
一本2銭の水仙が三輪開いた、日本水仙は全く日本的な草花だと思ふ、花も葉も匂ひも、すべてが単純で清楚で気品が高い、しとやかさ、したしさ、そしてうるはしさを持つてゐる、私の最も好きな草花の一つである。

やうやく平静をとりもどした、誰も来ない一人の一日だつた。

米と塩-それだけ与へられたら十分だ、水だけは飲まうと思へば、いつだつて飲めるのだが。

今夜は途上でうれしい事があつた、Sのところから、明日の句会のために、火鉢を提げて帰る途中だつた、重いもの、どしや降り、道の凹凸に足を踏みすべらして、鼻緒が切れて困ってゐると、そこの家から、すぐと老人が糸と火箸を持って来て下さつた、これは小さな出来事、ちょつとした深切であるが、その意義乃至効果は、大きい思ふ。実人生は観念よりも行動である、社会的革命の理論よりも一挙手一投足の労を吝まない人情に頭が下る。…

※表題句の外、11句を記す

-四方のたより-「鎮魂と飛翔-大津皇子」二上山の章Scene.2
「霊のこだま」その1

 闇い空間に蒼黒い靄の如くたなびくもの
 樹々が呼吸する音に包まれて
 精霊たちが岩窟を満たす
 互いに結ばれた言葉で
 やさしく人馴れぬ言葉で
 彼の人のみ魂と共震する


林田鉄、往年の仕事-「鎮魂と飛翔-大津皇子-」二上山の章-Scene-2


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詫手紙かいてさうして風呂へゆく

2009-12-19 22:02:58 | 文化・芸術
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Date :12/27 –Sun- PM2:30 Space : 弁天町市民学習センター

―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-07-
1月3日、うららか、幸福を感じる日、行きてゐるよろこび、死なないよろこび。

-昨夜の事を考えると憂鬱になる、彼女の事、そして彼の事、彼等に絡まる私の事、-何となく気になるのでハガキを出す、そして風呂へゆく、垢も煩ひも洗ひ流してしまへ-ハガキの文句は、…昨夜はすまなかつた、酔中の放言許して下さい、お互いあんまりムキにならないで、もつとほがらかに、なごやかに、しめやかにつきあはふではありませんか、…といふ意味だつたが-。-略-

恩は着なければならないが、恩に着せてはならない、恩を着せられてはやりきれない、親しまれるのはうれしいが、憐れまれてはみじめだ。

与へる人のよろこびは与へられる人のさびしさとなる、もしほんたうに与へるならば、そしてほんたうに与へられるならば、能所共によろこびでなければならない。

与へられたものを、与へられたままに味ふ、それは聖者の境涯だ。-略-

※表題句には、自嘲一句、と註あり、この句の外、11句を記す

-四方のたより-「鎮魂と飛翔-大津皇子」二上山の章Scene.1

今日からは、折口信夫の「死者の書」を材にした、二部「二上山の章」。

「岩窟の人」
 常闇の世界
 埋葬された彼の人は
 大地の内蔵の中で
 ゆっくりとしたまどろみをつづける
 生きている死の眠り
 やがて、そのみ魂は
 黒の内密性のうちに立ちあがるのだ


林田鉄、往年の仕事-「鎮魂と飛翔-大津皇子-」二上山の章-Scene-1


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お正月の熊本を見おろす

2009-12-18 23:56:34 | 文化・芸術
Dc09070783

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―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-06-
1月2日、曇后晴、風、人、-お正月らしい場景となつた。

吉例によつて、お屠蘇とお雑煮だけは欠かさない、独り者にも春は来にけり、さても結構なお正月で御座います、午後になつて出かける、まづ千体仏へ、老師はお年始まはりで不在、つぎに茂森さん宅へ、ここも廻札でお留守、-歩くのが嫌になつて、人間がうるさくなつて、そのまま帰つて来た、夕方、思ひがけなく元坊来訪、今夜また馬酔木居で会合することを約束する、なにもご馳走するものがないから蜜柑をあげる、私はお雑煮やりそこなひの雑炊を食べて、ぶらぶら新市街の雑踏を歩いて、馬酔木さんを訪ねる、いろいろお正月の御馳走になる、十分きこしめしたことはいふまでもない、だいぶ遅くなつてSの店に寄つた、年賀状がきてはゐないかと思つて、-が、それがいけなかつた、彼女の御機嫌がよくないところへ、私が酔つたまぎれに言はなくてもいい事を言つた、とうとう喧嘩してしまつた、お互いに感情を害して別れる、ああ何といふ腐れ縁だらう! -略-

さきごろまでは何を食べても-水を飲んでさへも-塩つぽく感じたのに、けふこのごろは、何を食べても甘たらしく感じる、何の病気だらうか、しかし近来の私は健康である、今夜も馬酔木居で、肥えたといはれたが、なるほど、私は肥えた、手首を握つて見るに、今までにない大きさである。…

通信費が多いのには閉口する、ここへ移つてから、転居の通知やら、年始状やらで、もう葉書を150枚ぐらいは買ったらう、これではとてもやりきれない-生活費の3割以上を占めるようになる-、早く三八九を出して、それを利用したい。

※表題句の外、10句を記す

-四方のたより-「鎮魂と飛翔-大津皇子」磐余の章Scene.5

「挽歌」
万葉に姉大来皇女のうたう
「うつそみの人にあるわれや
    明日よりは二上山を弟世とわが見む」

 枯れた悲しみの底で 人群れが動く
 野辺の送り
 すべての風景が祈りを捧げる
 深淵のほとりで
 忍耐づよく 冷厳に 押し黙り
 ひたすら立ちつくす女


林田鉄、往年の仕事-「鎮魂と飛翔-大津皇子-」磐余の章-Scene-5


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