山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

けふは凩のはがき一枚

2004-11-28 18:00:51 | 文化・芸術
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旧いノートより -四方館

身体障害者たちの身体表現-EVPの場合 (1992.3)

 肢体不自由、ダウン症、自閉症、精神薄弱など、さなざまな障害をもつ人々が、その家族や介護者たちとともに手を携えて、東大阪市障害者福祉キャンペーン「ふれあいのつどい」のステージに立とうと、身体表現に取り組んだ
 昨年9月の「ふれあいのつどい」実行委員会で、「障害者たち自身の手で表現を」と提案され、市内の各作業所に参加を呼びかけ、希望者を募ったところ、6つの作業所から30人余の障害者たちと家族や介護者たちが集まった。
 10月から週1回ペースで練習が始められ、しばらくは、障害者たちが、どういう場面で、また、どういうレベルで、自ら表現へと踏み出していくかが模索された。障害の異なる者同士が、共通の感覚や感性で表現へ向かう、などということがはたして成立するのだろうか? そんな無謀な企てに家族や介護の人々も初めは随分と戸惑っていた。しかし、練習の中でいろいろと試される身体訓練や即興的な課題に、それぞれ固有の刻印を帯びた、彼らなりの反応がかえってくる。彼らの世界では、いわゆる一般者のコモンセンスといった共同性や共通認識から逸脱しているため、周囲の状況や他者への関わり方や応答のあり方が、きわだった個有性をもつ。表面的にみればてんでバラバラな、気ままな世界に遊んでいる、としか見えない。だが、そこに彼らなりの個別の表出性、表現への深層の意識とでもいうべきものを見ようとしない限り、この企てはなんらの意味をなさない。
 やがて何回かの練習が経過する中で、この絡みあい難いような彼らの個別、バラバラな世界を包み込みうる共同性へのイメージ、彼らの持ちうる風土とでもいうべきものをどうイメージするかが、課題となった。そこから作品の構成へと想いが動きだした。魂へのキック、「キック・オブ・ソウル」と題し、4つの場面が設定され、それぞれ「結ぼれて」、「天空の飢え」、「おとぎ噺のように」、「周辺旅行」と仮に題した。
 今回の取り組みが、所期のテーマを充分に実現しえたとは言い難い。しかし、彼らの世界にも表現への可能性が充分に開かれているし、深層にうごめく自己の表出への欲求の確かな所在を実感しえたことは、同伴者として、得難い大きな経験をさせて貰えたと感謝している。

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