高校三年生の頃に書いた童話の下書き原稿が出てきたので、何回かに分けて書いてみます。
もう出てこないとあきらめていたので、残っていたとわかって嬉しいです。
市の文芸際で入選しました。入選作自体はコピーを取っておくなど高校生の私が思いもつかなかったのでありませんが下書き原稿とほぼ同じだったと思います。
新潮文庫の百冊で村岡花子訳の『赤毛のアン』に出会い、アン・シリーズ10冊を読破。
その後、モンゴメリさんの自叙伝『険しい道』を繰り返し、繰り返し読みました。
教員生活を送りながら、詩や小説を書き続け、出版社に送り続けた姿にあこがれました。
書くことが大好きで、アン・シリーズに触発されて心から楽しんで書いた作品です。
夏休み、縁側で汗をかきながら書いたことを今でもおぼえています。
実につたないものですが、よろしかったら読んでください。
家族は幸せだと思っていた高校三年生の夏。
その記憶は大切に私の中にしまっておこうと思います。
*************************
「絶対にいけません」
父さんはきっぱりといった。
「だってみんないくんだよ、よっちゃんもケンちゃんも、よういちくんも、どうしてぼくだけ行っちゃいけないの」
マサオは、けんめいにいいはった。
「そんな朝早くから汽車の写真をとりにってけがでもしたらどうするんだ」
「そうよ、ブルートレインなんて別に明日でなくったってみることできるんだから。それに、マサオちゃん、そんなに早く起きられないでしょ」
マサオは、がっくりと頭をたれた。父さんと母さんの意見が一致していることは明らかだった。明日の朝、ブルートレインの写真をとりにいくことはあきらめなければならない。マサオは、父さんと母さんをじっとにらみつけた。二人とも憎らしいほどに平気な顔をして夕食を食べている。マサオの目は怒りでいっぱいだった。
マサオとよっちゃんとケンちゃんとよういちくんは、大の仲良し、そして、みんな汽車や自動車が大好きなのである。マサオたちの通う小学校の近くには線路が走っている。午後四人は、運動場であそんでいた。そのとき、ケンちゃんが、線路を指して「あそこを毎朝四時ごろ、ブルートレインが通るんだぜ。そいで、ぼく、あしたの朝写真をとりにいくんだ」、と得意顔でいった。「すごいなあ、ぼくもいきたいや」。みんなが口々に言った。
「じゃあ、みんなで行こうよ。明日の朝三時半に線路んとこへ集まるんだぜ」
マサオの心はうきうきとした。明日の朝が待ち遠しくてたまらなかった。父さんにカメラを借りよう、きっとすばらしくてすてきな写真がとれるにちがいない。ところが、たった今にべもなくいけないと言われたのだ。父さんも母さんも汽車のことなどてんで問題にならないという顔をしている。そうだ、さちこ姉さんならわかってくれるにちがいない。マサオはすがりつくように、さちこ姉さんのほうを見た。だが、姉さんはただ笑っているだけで、マサオに味方してくれるような気配は少しもない。さちこは、無邪気なマサオをながめて、かわいいもんだなと思っているのだった。だが、マサオは、子供扱いされているのだとしか感じない。
「このサラダもおいしいわよ、お食べなさいマサオちゃん」
母さんがやさしく言った。
「そんなもんいらないや」
マサオは叫んだ。
「あら、こんなにおいしいのに。もっとたくさん食べなきゃ大きくなれないのよ」
さちこが、横から口をはさんだ。
「そうですよ、マサオちゃん、うんとたくさん食べて大人になったら、写真だって好きなだけとれるのよ。だから、明日はがまんしなさいね」
母さんが言った。
もう出てこないとあきらめていたので、残っていたとわかって嬉しいです。
市の文芸際で入選しました。入選作自体はコピーを取っておくなど高校生の私が思いもつかなかったのでありませんが下書き原稿とほぼ同じだったと思います。
新潮文庫の百冊で村岡花子訳の『赤毛のアン』に出会い、アン・シリーズ10冊を読破。
その後、モンゴメリさんの自叙伝『険しい道』を繰り返し、繰り返し読みました。
教員生活を送りながら、詩や小説を書き続け、出版社に送り続けた姿にあこがれました。
書くことが大好きで、アン・シリーズに触発されて心から楽しんで書いた作品です。
夏休み、縁側で汗をかきながら書いたことを今でもおぼえています。
実につたないものですが、よろしかったら読んでください。
家族は幸せだと思っていた高校三年生の夏。
その記憶は大切に私の中にしまっておこうと思います。
*************************
「絶対にいけません」
父さんはきっぱりといった。
「だってみんないくんだよ、よっちゃんもケンちゃんも、よういちくんも、どうしてぼくだけ行っちゃいけないの」
マサオは、けんめいにいいはった。
「そんな朝早くから汽車の写真をとりにってけがでもしたらどうするんだ」
「そうよ、ブルートレインなんて別に明日でなくったってみることできるんだから。それに、マサオちゃん、そんなに早く起きられないでしょ」
マサオは、がっくりと頭をたれた。父さんと母さんの意見が一致していることは明らかだった。明日の朝、ブルートレインの写真をとりにいくことはあきらめなければならない。マサオは、父さんと母さんをじっとにらみつけた。二人とも憎らしいほどに平気な顔をして夕食を食べている。マサオの目は怒りでいっぱいだった。
マサオとよっちゃんとケンちゃんとよういちくんは、大の仲良し、そして、みんな汽車や自動車が大好きなのである。マサオたちの通う小学校の近くには線路が走っている。午後四人は、運動場であそんでいた。そのとき、ケンちゃんが、線路を指して「あそこを毎朝四時ごろ、ブルートレインが通るんだぜ。そいで、ぼく、あしたの朝写真をとりにいくんだ」、と得意顔でいった。「すごいなあ、ぼくもいきたいや」。みんなが口々に言った。
「じゃあ、みんなで行こうよ。明日の朝三時半に線路んとこへ集まるんだぜ」
マサオの心はうきうきとした。明日の朝が待ち遠しくてたまらなかった。父さんにカメラを借りよう、きっとすばらしくてすてきな写真がとれるにちがいない。ところが、たった今にべもなくいけないと言われたのだ。父さんも母さんも汽車のことなどてんで問題にならないという顔をしている。そうだ、さちこ姉さんならわかってくれるにちがいない。マサオはすがりつくように、さちこ姉さんのほうを見た。だが、姉さんはただ笑っているだけで、マサオに味方してくれるような気配は少しもない。さちこは、無邪気なマサオをながめて、かわいいもんだなと思っているのだった。だが、マサオは、子供扱いされているのだとしか感じない。
「このサラダもおいしいわよ、お食べなさいマサオちゃん」
母さんがやさしく言った。
「そんなもんいらないや」
マサオは叫んだ。
「あら、こんなにおいしいのに。もっとたくさん食べなきゃ大きくなれないのよ」
さちこが、横から口をはさんだ。
「そうですよ、マサオちゃん、うんとたくさん食べて大人になったら、写真だって好きなだけとれるのよ。だから、明日はがまんしなさいね」
母さんが言った。