医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

カラマーゾフ的美意識3

2007年01月18日 08時32分36秒 | Weblog
 僕がこのブログでもロシアに思い入れが深いのも、この小説の影響が大きいのかもしれません。

 アメリカには何の憧れも感じないのに・・・。

 失礼なのですけど僕はあまり趣味ではないのですが、日本人でノーベル賞に最も近いとされる、2006年カフカ賞を受賞した村上春樹氏も、この「カラマーゾフ」を讃えてはおります。

 しかし彼によれば、現代の世の中の大半の人は「カラマーゾフ」など読まない、長すぎる・・・けれども、もしオウムの諸君がこれを読んでいたら、オウムになど入らなかったろうともしております。

 彼がやりたいのはもっとやさしくて短い「カラマーゾフ」を書くことだそうです。

 しかし本人も言っておりますが、それは大変難しいと・・・彼には無理だと僕も思います。

 そしてかつて日本が生んだ天才詩人、尾崎豊は歌いました。

 「鉄を食え~、飢えた狼よぉ、死んでも豚には食い~つくなっ!」と。

 これまでカラマーゾフなど無縁で生きてきたここの読者の方がいらっしゃれば、どうでしょう・・・鉄を食してみませんか??

 カラマーゾフもそうですが、別に宗教や哲学、文学など触れなくても、人生を楽しく生きることはできると思います。

 今は昔と違って、楽しいことがたくさんありますし、本など読まなくてもお金は稼げるかもしれません。

 文学など無用の長物であり、その国の貧困さと比例するものさ、という説があることも知っております。

 しかし昔の人は、あるいは昔の大学生は、エンターテイメントが少なかったせいもあるでしょう、これら純文学を読みあさり、哲学書を読みふけり、声高に友人同士で議論したようです。

 そしてここの読者の中には、「世界最高峰と評される文学を読まずして死ねるか!」・・・けど何を読めばいいの?という気概を持つ方もいらっしゃると思います。

 また、これを読むことが、宗教的な話題は極力避けなければならない、今日のこの国の現状にとまどう僕個人の、精神的カタルシスになっているだけかもしれません。
*カタルシス : アリストテレスの言った浄化・排泄という意味から、フロイトが「代償による満足」として使用

 この本は非常に重く大きなテーマが同時進行でいくつも散りばめられ、まるで命が与えられ意思を持ったかのごとくのそれぞれの人物のそれぞれの意見や解釈が存在します。

 その中で作者は「カラマーゾフ的」という言葉を使いますが、なんと表現したらよいか・・・

 善と悪、高潔さと下品さの両極端が同居しつつも、より崇高なものへの憧れは失わず、感情表現は大げさで自己陶酔型なのだけれども、考察や洞察も僕たち日本人には到底及ばないほどはるかに深い、そして自堕落や好色を自認しつつ、あくなく生きるという活力にみなぎる力・・・

 カラマーゾフ的イコール、ロシア的といった意味合いの背骨がしっかりと首尾一貫、貫かれております。

 そしてこのロシアという国は、矛盾をはらむものでも両者を飲み込む懐の深さがあり、おおらかで広い心を併せ持つみたいです。

 エリツィン氏を見ても、普段は底抜けに明るく(単なるウォトカ中毒??)、だけれども最近話題の国家ぐるみの暗殺事件・・・

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