医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

カラマーゾフ的美意識5

2007年01月20日 23時27分21秒 | Weblog
 そして僕が思うもう一人の主人公が、アリョーシャの敬愛する長老ゾシマ神父です。

 このゾシマ長老とは本によれば・・・

「あなた方の魂と意思を、自分の魂と意思の内に引き受け」、

「あなた方は自己の意思を放棄し、完全な自己放棄とともに、自分の意思を長老の完全な服従下にさしだし」、

「自己にこの運命を課した人間は、長い試練のあとで己に打ち克ち、自己を制して、ついには一生の服従を通じて完全な自由、つまり自分自身からの自由を獲得し、一生かかっても自己の内に真の自分を見出せなかった人々の運命をまぬがれることができるまでにいたるのだ」

という人物です。

 ですが、自己の意思を放棄するのは、完全な自由の獲得がたとえ保証されるにしても、いかがなものであろうかと思ってしまいます。

 ちなみにゾシマ神父は亡くなって、聖人であるにもかかわらず、腐敗臭を発するのですが、そこのくだりがどうしても理解できません。


 この本を読むに当たり、当時のロシアがおかれた時代背景が重要になります。

 当時ヨーロッパでは、王政・教会支配から1789年からのフランス革命をはじめとする市民革命を経て民主主義にいたり、市民革命で中心をなした都市における裕福な商工業者は、その後の資本主義社会ではブルジョアジー(資産階級)となり、その結果プロレタリア階級(労働者)も生まれます。

 そしてヨーロッパで、コミュニスト(共産主義者)による、暴力も辞さない、血を流す無神論的革命運動が起きます・・・いわゆる階級闘争です。


 ドストエフスキー(1821-1881)の生存中は、ロシアは皇帝(ツァーリ)が支配しておりました。

1848年:ドイツの経済学者マルクスとジャーナリストエンゲルスにより「共産党宣言」が出されます。

1861年:40歳の頃、農奴解放が行われますが、封建制度は色濃く残ります。

1881年:死去する年には実際、無政府主義者(アナーキスト)による皇帝暗殺事件が起きております。

1904年:日露戦争

1905年:血の日曜日事件

1917年:ロシア革命(10月革命・2月革命)により、ロマノフ朝は終焉し、共産主義政党の指導者レーニンによる社会主義国家、ソビエト社会主義連邦共和国が生まれました。

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