医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

ドレスデン剛胆王の美感8

2007年03月15日 07時52分34秒 | Weblog
 「磁器」は白さが勝負、薄くて堅く、透光性があり、絵が鮮やか、一方、「陶器」は厚手で熱を通しにくい性質があり、素朴で自然な色合いのものが多くなります。

 日本では元来「陶器」がほとんどでした。

 ですから、コーヒーカップにはとってがあり、湯飲み茶碗にはとってがないのですね。

 有田、伊万里、九谷は有名な「磁器」産地ですね。

 「陶器」は釉薬がはがれその割れ方だとか、そこに茶渋がついたり、その趣や変化(へんげ)までをも楽しむものだ、と亡くなった父が言っておりました。

 これは「磁器」かな、「陶器」かな、と迷ったときは、底を見てください。

 糸で切った口が、白ければ「磁器」、ベージュでざらざらしていれば「陶器」です。

 中国では今でも、「磁器」は高級、「陶器」は低級という意識が強く、日本では僕のように「陶器」にぬくもりや自然、わびさびを感じる意識が強いそうです。

 中国人はわびさびや「陶器」の価値は理解できず、僕たちもあの極彩色が理解できず、それぞれの立場でそれぞれ考えが異なるようですね。

 ですから僕は、いわゆる「柿の赤」、中華風極彩色風の、朱色と緑の有田の柿右衛門の柄も、好きになれません。

 一般に茶の道では「一 樂、二萩、三唐津」とは言いますが。

 確かに利休が愛した桃山時代の『長次郎』の、「無一物」「大黒」「俊寛」に代表される赤樂茶碗・黒樂茶碗の京都・樂焼き(らくやき)や、琳派の創始者でマルチ・アーティストの『本阿弥光悦』「雨雲」(本当に本人の作かは・・・?)に見られる、わびさびの「陶器」も素敵です。

 特に「大黒」は宇宙のようです。

http://izucul.cocolog-nifty.com/balance/2006/10/post_4c8c.html

 しかし僕は日本「陶器」の傑作には、江戸時代の京都の陶芸家『野々村仁清』(ののむら にんせい)、通称、清右衛門を推したい。

 「色絵雉香炉」(いろえきじこうろ)、「法螺貝形香炉」などの、形態模倣が有名でこれらもすごいけど、それよりも僕の感性にびったし来たのが、福岡市美術館所有の「色絵吉野山図茶壺」(いろえよしのやま)    

http://www.fukuoka-art-museum.jp/jc/html/jc05/fs_jc05.html

http://www.sow.co.jp/AMuseum/collection/Ancient/33/33.html


 どうです、みなさま??

 この色彩こそが、大和国日本が誇る、色彩感覚だと思うのです。

 人工的な極彩色ではなく、あくまで自然に存在する淡く上品な色合い、しかし金もなきゃさびしいので、つつましやかに、さりげなく。

 僕の中ではこれぞ日本を代表する、世界に誇れる最高の「陶器」と考えます。

 吉野の山の四季と日内の、彩りの変化があふれております。

 美しい、美しすぎる・・・なんて美しいんだ。

 しかも仁清は、絵付けばかりが特色ではなく、実はその轆轤(ろくろ)技術にあるといいます。

 この美しさの中で、器は極限的に薄く均一だと。