童謡詩人の金子みすゞさんの詩にとてもすきな詩があります
田舎
私は見たくてたまらない、
小さい蜜柑が蜜柑の木に金色に熟れてゐるところを。
また無花果がまだ子供で木に齧りついてゐるところを。
さうして麦の穂に風が吹き雲雀が唄をうたふところを
私は行きたくてたまらない、雲雀がうたふのは春だけれど、
蜜柑の木にはいつ頃にどんな花が咲くだろう
絵にしか見えない
田舎には、
絵にないことがたくさんたくさんあるだらうな。
(「赤い鳥」大正十三年10月1日) 金子みすゞ
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蜜柑の木なんてないものね
無花果もね
蜜柑の花の香りや無花果の香りがするような
優しい田舎
こんな風景の田舎に憧れてしまう
私の田舎は「炭鉱町」
どんどん出炭してとても景気の良い街だった
でも、小学一年生の時に時を告げていたサイレンが
「ウゥーウェー」と不気味な響きで鳴り続け
子供心にも、異変を感じた
大人の話しでは炭坑内で落盤事故があり、何人かが生き埋めになっていると
大変な事が起ったんだと、怖くなってしまった
同級生で翌日から学校に来なくなった子がいた
事故による犠牲者だったと思う
危険と隣り合わせの街で育った
流れる川は、上流で石炭を洗うため真っ黒な水だった
そして、家の前は線路があり掘り出した石炭や山奥から切り出した木材を
積み、白煙や轟音を上げて汽車が通る
裏山には栗林があった
雪が積もるとスキーに興じ、野球場には氷が張られ、スケートも楽しんだ
でも、石炭が採れなくなり人が他の街へ仕事を求めてドンドン出て行った
そして街は淋しくなった
そんな田舎なら私にもあります