《社説②・12.01》:アマゾンに検査 立場の乱用は見過ごせぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.01》:アマゾンに検査 立場の乱用は見過ごせぬ
ネット通販大手のアマゾンジャパンが、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。
アマゾンのサイトを通じて商品を販売している小売業者に対し、出品価格の引き下げを強要した疑いが持たれている。アマゾンが提供する発送サービスを利用することを強いた疑いもあるという。
独禁法は、優位な立場にあることを利用して取引先に不利益を与える「優越的地位の乱用」や、競合する他社などとの取引を不当に制限する「拘束条件付き取引」を禁じている。
画面をクリックすれば簡単に購入でき、迅速に届けてくれるネット通販は、消費者の日常にすっかり定着した。世界大手として取引基盤となるサイトを運営するアマゾンが出品者に不公正な要求を繰り返しているとすれば、見過ごすことのできない問題である。
公取委は近く、取引実態の解明に向け出品者に広く情報提供を呼びかけるもようだ。徹底的に調査する必要がある。
値下げ強要の疑いは、サイト上の「カートボックス」と呼ばれる優先枠を巡って浮上した。消費者の多くがその枠から商品を購入しており、出品した商品がそこに表示されるかどうかは出品者の売り上げを大きく左右する。
アマゾンは、枠に表示する条件の一つを「競争力のある価格での出品」と定めていた。これが実質的に値下げを強要していたとみなされたようだ。
消費者から見れば、安く買える仕組みは大きな魅力だ。だがその安さが不当な取引で成り立っているとすれば、商品を生み出す側は弱体化し、ひいては消費者の利益も損なわれる。取引先に負担をかぶせてサイトの競争力を高めるような行為は容認できない。
アマゾンジャパンへの立ち入り検査は今回で3度目となった。2016年に競合サイトと比べ最安値で出品させていたことが検査の対象となり、18年には、アマゾン自身が販売する商品の納入業者に値引き分の一部を負担するよう求めていたことが問題化した。
似たような構図が繰り返されている。公取委は、最初のケースで最安値出品の条件が撤廃されたのを踏まえて調査を打ち切り、2度目は改善計画の提出を受けて調査を終えた。3度目となると、より厳しい対応も必要ではないか。
アマゾンの商慣行を巡っては米国や欧州の当局も監視を強めている。諸外国の動向も踏まえ、有効な対策を取ってほしい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月01日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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