【社説①】:買収で起訴相当 市民の常識突き付けた
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:買収で起訴相当 市民の常識突き付けた
検察審査会は河井克行元法相による参院選広島選挙区での買収事件を巡り、検察が不起訴にした県議らを「起訴相当」と議決、公表した。検察の判断に市民の「常識」を突き付けたと言える。
二〇一九年の参院選広島選挙区で飛び交った金銭は総額約二千八百七十万円にものぼる。受け取った自治体の首長や議員、陣営スタッフらは計百人。東京地検は「受領者はいずれも受動的だった。一定の者を選別して起訴するのは困難だ」と全員を不起訴とした。
だが、これは理解できない理屈だった。公職選挙法では現金を受け取った側も罪に問うと規定しており、過去の事例でも処罰の対象としている。むしろ一律不起訴の方が異例の判断である。
民主主義の基盤である選挙での不正は、受領側でも悪質性は低いと決め付けることはできない。二百万円や百五十万円という多額のカネを受け取った公職者もいる。司法取引の対象事件ではないから不起訴前提の捜査もありえないはずである。
検察審査会は、百人のうち三十五人を「起訴相当」、四十六人を「不起訴不当」、十九人を「不起訴相当」と議決した。「公職者が率先して順守しなければならない法律で、県議らの行為は悪質で責任は重大」との考えからだ。
法律や常識に照らし、当然の帰結だと考える。起訴相当としたのは十万円以上を受領しながら辞職しなかった者らだ。これらを見逃せば「重大な違法行為を見失わせる恐れがある」とする検審判断に賛同する。至極まっとうだ。
四十人の首長・議員のうちカネを返還せず、辞職もしなかった者は二十八人。公選法では罰金刑以上が確定すれば、公民権が停止して失職する定めだ。だが、不起訴なら失職を免れるわけで、やはり著しく不公平であろう。
問題は、買収が一九年春から夏にかけてで買収罪の時効である三年が迫ることだ。検察は迅速に再捜査する必要がある。「検察の正義」と対立する「市民の正義」が掲げられた。検察がまたも市民の期待を裏切る判断をするなら、検察批判の火が付くことになろう。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年02月01日 07:49:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます