【社説①】:中国の核軍拡 不透明な実態が緊張を高める
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:中国の核軍拡 不透明な実態が緊張を高める
透明性を欠いたまま、核兵器を含めた軍備を拡張する中国の動きは、日本など周辺国にとって深刻な脅威である。地域の緊張を自ら高めていることを中国は認識すべきだ。
中国の軍事・安全保障に関する米国防総省の年次報告書によると、中国が保有する運用可能な核弾頭数は推計500発超に達した。2030年には1000発を超す可能性が高いとしている。
20年時点の保有数は200発台前半と推計されていた。この3年で約300発増えたことになる。米国防総省は、中国が米国の予測を上回る勢いで核戦力を増強していることに強い懸念を示した。
中国は、核政策の基本方針として「先制不使用」や「最低限の核戦力保持」を掲げているが、核弾頭や大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの保有数を公表していない。その主張は説得力を欠く。
中国外務省は、米国の今回の報告書に対して反発を示す一方で、肝心の核弾頭数を増やしたかどうかについては言及しなかった。
中国の核弾頭数は、米露間の核軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約」(新START)が戦略核弾頭の配備上限としている1550発に着実に近づいている。中国が米露と並ぶ核大国となることを目指しているのは明らかだ。
中国は米国の核軍縮交渉の呼びかけに応じていない。保有数で大きく上回る米側の削減が先決だと主張しているが、核戦力を増強するための時間稼ぎではないか。
中国の国防を巡る不透明さは核戦力にとどまらない。李尚福国務委員兼国防相は、2か月近く動静が途絶えた末に解任された。兵器調達に関する汚職などが取り沙汰されているが、中国は解任理由を明らかにしていない。
後任も発表されず、国防相不在という異例の事態が続いている。こうした状況では、不測の衝突を回避するための軍当局間の対話など期待できない。
今回の米報告書では、中国が、日本や韓国、米軍基地のある米領グアムを射程に収める中距離弾道ミサイルを急速に増やしていることも明らかになった。
中国は19年に失効した米露の中距離核戦力(INF)全廃条約に参加していないため、米国を圧倒するまでに中距離ミサイル戦力を増強した。中国が北朝鮮の核・ミサイル開発を黙認していることも日米韓共通の懸案だ。
日本は米韓と連携し、敵のミサイル発射拠点を破壊する反撃能力の保有を急ぐ必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年10月27日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。