【社説①・05.10】:中国秘密法改正 不透明な運用が心配だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・05.10】:中国秘密法改正 不透明な運用が心配だ
中国で国家機密の管理を徹底するために改正した国家秘密保護法が、今月から施行された。
共産党による指導を強化し、海外への流出防止を徹底することが柱だ。昨年7月に施行された改正反スパイ法と合わせて、監視を強化する狙いがある。
だが条文の内容はあいまいさが目立ち、何が国家秘密に当たるのかが判然としない。法制度の不透明な運用がいっそう懸念される。
習近平国家主席は国家安全を重視し、外国人や外国と関わる中国人への統制を強めている。国民の愛国心を高める法律も制定した。「習1強」下で統制の強化に向けた法整備は加速する一方だ。
中国では昨年3月にアステラス製薬の日本人男性社員が反スパイ法違反容疑で拘束された。日本の大学に在籍する中国人教授らの拘束も相次いでいる。
拘束理由など明らかになっていないことばかりだ。中国は恣意(しい)性が疑われないように対応することが求められている。それには情報開示の徹底が不可欠だ。
国家秘密保護法は1988年に制定され、今回の改正で何が国家機密に当たるのかを担当部門が単独で決定することが可能になった。共産党指導部の意向を反映しやすくしたのだろう。
日本企業の駐在員らの間で警戒感が広がっているのは当然だ。中国は海外からの投資の呼び込みに力を入れているが、逆行した対応だと言うほかない。
改革開放政策では、海外からの技術の導入があったからこそ経済発展をなし遂げたことを忘れてはならない。
3月には神戸学院大の胡士雲教授が昨夏に中国に一時帰国した後に消息不明になり、先月には亜細亜大の范雲濤教授が昨年2月に中国に一時帰国した後、消息を絶ったことが、それぞれ判明した。
北海道教育大札幌校の袁克勤元教授は2019年に一時帰国してスパイ容疑で拘束され、その後起訴されている。
中国当局が、日本在住の中国人研究者を標的にしている可能性がある。これでは日中間の人的往来が阻害され、教育や文化などでの交流は停滞せざるを得ない。
日本政府は早期解放に全力を尽くしてもらいたい。だが岸田文雄首相と習氏による首脳会談は昨年11月の開催以降、予定がない。
今月下旬には19年末以来の日中韓首脳会談の開催が調整されている。日本はこうした場も利用して働きかけを強める必要がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月10日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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