【社説①・03.30】:ワシントン事務所閉鎖 県民全体の支持で再開を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.30】:ワシントン事務所閉鎖 県民全体の支持で再開を
2025年度の県一般会計当初予算案の審議で焦点となっていた県ワシントン事務所の在り方を巡り、経費の全額を予備費に回した野党修正案が賛成多数で可決された。玉城デニー知事は審議のやり直しを求める「再議」を見送り、ワシントン事務所をいったん閉鎖する判断を下した。
玉城知事は設立時の手続き瑕疵(かし)などの問題点を修正し、25年度内に新体制でスタートする意思を示している。法解釈や予算措置を巡り与野党の議論は平行線となったが、ワシントン駐在を置く政策の是非については、党派にかかわらず一定の意義を認めている。問題点を早期に整理・解消し、県民全体の支持を得る態勢で再開することだ。
ワシントン事務所を巡っては、15年の開設時に日本の株式会社に相当する法人を設立していたが、株式が県の公有財産として登録されておらず、県議会への経営状況の報告も行われてこなかった。
県が設置した弁護士などでつくる調査検証委員会は28日、ワシントン駐在活動の受け皿となる法人「DCオフィス社」の設立手続きや運営について「違法となる可能性は否定できない」と結論付ける最終報告書を提出した。
報告書は、文書記録が適切に残されていないこともあり、県の業務が法令に適合しているか証明できないことを指摘。設立時の翁長雄志知事の公約実現が絶対視され、「十分な日本法、米国法の調査を怠ったまま拙速に進められた」との見方を示した。
検証委が違法性に言及したことは極めて重大だ。玉城知事が再議を回避したのも、現状のままで存続は難しいとの判断に至ったためだろう。拙速さを指摘された行政の不手際を改善し、入念な検討を経て再開の手続きを踏み直す必要がある。当然、県民の代表である県議会の理解を得ることが欠かせない。
沖縄戦から80年にわたり米軍の駐留が続いている。軍事の重圧に苦しめられる沖縄の実情を米国社会に理解させるため、現地での情報発信や情報収集の窓口、そして海外の県人ネットワークの拠点として、ワシントン駐在は重要な機能と位置付けていい。
沖縄の県知事で最初に米国を訪れて基地問題の解決を訴えたのは、親米保守の立場をとる西銘順治氏だった。その後、保革の県政交代を繰り返しながら歴代知事が訪米行動を続けてきた。米国政治の中枢に直接働き掛けることはオール沖縄県政の専売特許ではなく、政治的な立場を超えた歴史的な取り組みだ。
修正案を提出した自民会派も、新たな体制で事務所を設置することには、法的な問題がクリアされれば「執行権を害することはできない」との認識を示している。
政治アピールの手段や政争の具とすることなく、執行部と議会の双方が一致点を見いだす丁寧な政策対話を重ねてもらいたい。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月30日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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