【社説②・12.30】:新NISA1年 貯蓄から投資を確かな流れに
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.30】:新NISA1年 貯蓄から投資を確かな流れに
少額投資の運用益を非課税にする「NISA」の制度が大幅に拡充されてから1年となる。国民の安定的な資産形成と経済活性化に向け、着実に定着させていきたい。
NISAの口座数は順調に拡大している。9月末で前年比約23%増の約2500万口座に達した。拡充前は60歳以上の高齢者に運用が偏ってきたが、若い世代の口座開設が増えているのが特徴だ。
30歳代が約17%、20歳代も10%強を占める。40歳代は全体の19%超で最も多く、20~50歳代が3分の2に上るという。
貯蓄に偏る家計の金融資産を投資に振り向け、経済を活性化することは積年の課題となってきた。だが、バブル経済の崩壊後、株式市場が長く低迷し、国民はリスクを取る投資に及び腰になった。
今回は、日米の株価がともに史上最高値を更新し、投資への機運が高まったことも追い風になった。幅広い世代における口座数の増加は、家計にも企業にも有益だ。老後の備えとして早くから投資を始める重要性も確認したい。
日本企業は、海外での工場建設や企業買収など対外直接投資を増やしてきたが、収益の多くは再投資のため海外拠点に留保されている。大企業の業績は高水準にあるが、家計が十分に恩恵を感じられないのはこのためでもある。
NISAを通じ、企業の利益が家計に還元されていけば、消費の活性化も期待できよう。
課題は、米国株で運用する投資信託の人気が高く、資金が海外に向かう傾向が強いことだ。海外株に資金が流れることは円安の要因になっているとも指摘される。
日本企業の内部留保は約600兆円に上る。利益をため込むばかりでなく、設備投資や賃上げに回して成長力を強化し、株式の魅力を高めていく必要がある。
投資は自己責任でリスクが伴うことも忘れてはならない。
8月に日経平均株価が暴落した際、資産運用を始めたばかりの人は、投資を継続すべきかどうか迷った人も多いのではないか。
NISAは長期にわたって少額投資を行い、投資先も分散することでリスクを下げる仕組みだ。官民でそうした点の金融教育を充実させていくことも重要になる。
投資機運に水を差したのが、東京証券取引所や三菱UFJ銀行、野村証券などで続発した不祥事である。資産運用を委ねる上で、信用が最も大事であるのは論をまたない。金融関係者は襟を正し、職業倫理の向上に努めてほしい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月30日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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