【社説】:北朝鮮「衛星」失敗 再発射の暴挙を許さない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:北朝鮮「衛星」失敗 再発射の暴挙を許さない
北朝鮮が軍事偵察衛星を発射し、その「失敗」を素直に認めた。同時に次の発射断行も表明しており、自らの技術への自信と余裕の裏返しなのかもしれない。
北朝鮮は5月31日から6月11日の間に「人工衛星」と称する物体を打ち上げると、日本に通告した。31日の早朝、事実上の弾道ミサイルに衛星を搭載して発射したものの、朝鮮半島西方の黄海に墜落した。その後すぐに、新型エンジンなどに技術的欠陥があったと認め、それを克服するとも表明している。
この衛星は、韓国や米国の軍や関連施設、日本の自衛隊などの動向を監視する「目」の役割を持つとみられる。今後複数の衛星を打ち上げ、より正確な情報をつかみ、有事の際、攻撃の精度を上げる狙いがうかがえる。
北朝鮮はこれまで、米国本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む大小のミサイル開発に注力してきた。そうして積み重ねた技術も応用し、宇宙軌道への衛星投入を目指しているとされる。
北朝鮮がいかなる方便を使おうとも、国連安全保障理事会決議が禁止する「弾道ミサイル技術を使った打ち上げ」であり、暴挙は明らかだ。
安保理はさらなる制裁に踏み切るべきだが、中国やロシアの賛同を得る必要がある。現状では難しいとみられ、それが北朝鮮の背中を押している面がある。日米韓は両国への働きかけを強めたい。
広島で先月開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、法に基づく国際秩序の堅持を改めて確認し、韓国も北朝鮮の核・ミサイルの脅威を厳しく批判した。
北朝鮮が今の軍事偏重路線を改めねば、中国など一部の国々を除き国際社会では孤立を深めるばかりであり、その認識を持つべきだ。
日本政府は今回、自衛隊にミサイルの破壊措置命令を出した。沖縄県に配備している地対空誘導弾パトリオット「PAC3」部隊のうち石垣島では台風の影響で展開できなかった。検証が必要だ。
金正恩(キムジョンウン)体制下での弾道ミサイル発射は2012年以降で150発を超えた。過去の体制とは比較にならぬ数だ。
むろん過剰な反応は慎むべきだが、私たちが避けねばならないのは「またか」と事態に慣れてしまうことだ。事実を冷静に注視したい。
北朝鮮は今回、韓国には発射を通告していない。日本には、岸田文雄首相が提唱する日朝首脳会談に応じる可能性を外務次官談話でほのめかした。その真意は不明だが、日米韓の足並みの乱れを誘う揺さぶりかもしれない。
日本には最重要課題の一つに拉致問題がある。今回の動きを慎重に見極めたい。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】 2023年06月02日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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