【社説②】:富士登山の規制 安全に名峰を楽しめるよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:富士登山の規制 安全に名峰を楽しめるよう
富士山の荘厳な姿は、古くから人々を引きつけてきた。多くの人が一度は山頂に立ちたいと願っている。安全で快適な登山ができるよう、十分な対策が必要だ。
山梨県は富士山の開山日にあたる7月1日から、山梨県側の登山道の利用者を1日4000人に制限することを決めた。混雑の緩和が目的で、1人2000円の「通行料」も徴収するという。
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5合目の登山道入り口付近にゲートを設置し、上限に達したら通行を禁止する。通行料は、ゲートの維持・管理や登山客の安全対策に充てるという。
富士山の昨夏の登山者数は約22万人で、コロナ禍前の水準に戻った。登山道が混雑し、無理な追い越しなどのマナー違反もある。
山の魅力を維持し、事故の危険性を減らすには、一定の規制もやむを得ない。通行料は、安全で快適な登山の確保に必要なコストだと考えるべきだろう。
山小屋に泊まらず、夜通し山頂を目指す「弾丸登山」が問題視されている。低体温症や高山病のリスクが高いからだ。そのため、ゲートは午後4時から翌日午前3時まで閉鎖するという。危険な登山の抑止にもつながるはずだ。
山梨県側の登山道は、利用者が最も多く、全体の約6割を占めている。現場が混乱しないよう、規制の周知徹底を図る必要がある。近年急増している外国人向けの広報にも力を入れるべきだ。
一方、静岡県側の三つのルートでは、登山者数は制限せず、通行料も徴収しない。代わりに、登山日程をスマートフォンなどから事前登録してもらい、登山者数を把握して、弾丸登山を防ぐシステムを実験的に導入する。
登山道につながる道が複数あり、登山者全員から料金を集めるのが難しいためだという。ただ、今後は通行料の支払いを避けようと、静岡県側のルートに登山者が集中する可能性もある。
当面は、導入する事前登録システムのデータを分析し、混雑状況を把握することが重要だ。場合によっては、規制の導入も検討しなければならないだろう。
登山者一人ひとりの意識も大切だ。待望の登山を果たしても、体調不良やトラブルに見舞われては元も子もない。万全の準備と無理のない計画を心がけたい。
多くの観光客が集中する「オーバーツーリズム」(観光公害)は、各地で問題になっている。観光地の環境をどう守っていくか。社会全体で考えねばならない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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