【社説②】:ナワリヌイ氏 独裁体制の噓を暴いた
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:ナワリヌイ氏 独裁体制の噓を暴いた
死因がどうであれプーチン独裁体制の残酷な弾圧の犠牲者であることに変わりはない。ロシアの反体制指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)が、獄中で不審な死を遂げた。
先進7カ国(G7)外相会合はナワリヌイ氏の死因解明をロシア政府に要求する議長声明を出したが、政権が真相を明らかにすることは残念ながら期待できない。
ナワリヌイ氏が「噓(うそ)は国家が利用するメカニズムとなり、国家の本質になった」と喝破した通り、プーチン体制の本質は噓と、それに加えて暴力である。真実を語ることはない。
権力者とその取り巻きが国富を食いものにして私腹を肥やすクレプトクラシー(泥棒政治)。20年以上続くプーチン体制はその代表例だ。ナワリヌイ氏は政権にはびこる腐敗を暴き、不正と社会の閉塞(へいそく)感に怒りと不満を募らす若者らの支持を集めた。
プーチン政権下では、体制に歯向かった人の暗殺や不審死が相次いでいる。ナワリヌイ氏も2020年に治安機関の関与が濃厚な毒殺未遂に遭った。翌21年、身の危険を顧みず療養先のドイツから帰国し、即座に逮捕された。
ナワリヌイ氏は3月の大統領選では「プーチン以外に投票を」と獄中から呼び掛けていた。「圧勝」を演出してウクライナ侵攻を正当化したい政権には、とりわけ目障りな存在だった。昨年末に北極圏の刑務所に移送され、近親者や支持者から一層遠ざけられた。
ロシア全土でナワリヌイ氏を追悼する動きが続き、花を手向けた多くの市民が拘束された。悼むことさえ許さぬのは、抗議の輪が広がるのを警戒しているからだろう。体制の弱さの表れでもある。
暗黒のスターリン時代をほうふつさせる弾圧を続けるプーチン政権。それでも真実を求めてやまない人々が大勢いる。強権をもってしてもその願いを押しつぶすことはできない。
「国のあらゆる所で『力は真実の中にある』と繰り返している…真実を知る者が勝利を得る」
こう語ったナワリヌイ氏は自由な社会の到来への希望を失うことはなかった。真実を武器に独裁政権に立ち向かった勇気ある人の死を悼む。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月22日 07:22:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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