【決別 金権政治】:検審、国民目線で存在感 河井夫妻事件35人「起訴相当」 政界捜査の「グレー」許さず
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【決別 金権政治】:検審、国民目線で存在感 河井夫妻事件35人「起訴相当」 政界捜査の「グレー」許さず
2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件で被買収者とされる地方議員らの刑事処分を巡り、検察審査会(検審)が存在感を示している。有権者から不満や疑問の声が出ていた検察の不起訴処分を明確な線引きで覆し、異例となる35人の「起訴相当」を議決。辞職する議員が続いた。「政治家に配慮し過ぎ」との批判もある検察当局に対し、国民目線で監視機能を発揮している。

100人分の議決書が張り出される東京地裁前の掲示板(1月28日)


「起訴するかどうかの判断は、長年の経験とデータがなければ適正に行使できないと思われていたが、市民の良識を生かして適切に判断した」。渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は、今回の東京第6検審の議決を評価する。
東京地検は、河井克行元法相(58)=実刑確定=らから各5万~300万円を受け取った地方議員ら100人に関し「一方的に渡されるなど受動的な立場にあった。犯行後の事情もさまざま」と強調。線引きは困難として全員を不起訴にしたが、これに異を唱えたのが東京第6検審の議決だ。受領金額、返金や辞職の有無などの基準を示し「公職者の場合は悪質で責任は重大」と指摘。10万円以上を受領し、直後の返還や辞職をしていない現職議員ら35人を起訴相当とした。
「市民の良識に沿い、分かりやすい。市民感覚に委ねる方が社会の納得を得られることが明らかになった」と渡辺教授。一方で、不起訴にした検察側の事情にも触れ「国会議員夫婦の事件の迅速な解明という大きな目標があったとみることもできる」と話す。
▽強制起訴の権限
克行氏と妻の案里元参院議員(48)の公判では、地方議員らが次々に検察側の証人として出廷。現金の違法性を認める証言をし、有罪認定の根拠にもなった。「事件解明への貢献度を考慮に入れるのかどうかで検審と検察に違いが生じる。今回の議決はそれを反映しているのではないか」
1948年から続く検審の制度の転機は09年5月。市民による裁判員裁判の導入に合わせて、検審に強制起訴の権限が与えられた。起訴相当の議決をした場合、検察が再捜査で再び不起訴にしても、検審が2回目の審査で再び起訴すべきだと議決すれば、強制的に起訴できるようになった。
初の強制起訴は01年の兵庫県明石市の歩道橋事故。花火大会の見物客11人が亡くなり、当時の明石署副署長が業務上過失致死傷罪で起訴された。だが神戸地裁は13年に公訴時効(5年)の成立を認め、裁判を打ち切る免訴を言い渡した。
▽処分覆る可能性
無罪判決も相次いだ一方、有罪判決も出ている。柔道教室で教え子に大けがをさせた長野県松本市の元柔道指導員は禁錮1年、執行猶予3年が確定した。
政界絡みの事件では近年、検審議決で不起訴が覆るケースが続いた。選挙区内で現金を配布した菅原一秀・元経済産業相や、賭けマージャン問題の黒川弘務・元東京高検検事長は不起訴になったが、起訴相当議決を経て検察が略式起訴した。ある捜査関係者は「検審は政界捜査の『グレー』を許さない傾向が強まっている」と語る。
大規模買収事件で起訴相当とされた35人の処分はどうなるのか。元裁判官の法政大法科大学院の水野智幸教授(刑事法)は、検察が略式起訴や起訴をする可能性が高いとみる。「政治関連の事件などで検察が国民の期待に応えられていない。市民感覚との乖離(かいり)が出ていることに気付くべきだ」と求める。(中川雅晴)
■<クリック>河井克行元法相らによる大規模買収事件
克行氏の判決によると、妻の案里氏を当選させる目的で地方議員ら100人に現金を渡した。東京地検が100人を不起訴にしたため、市民団体などが審査を申し立て、東京第6検察審査会が審査。現職にとどまる広島県議や広島市議ら35人を「起訴相当」としたほか、辞職した市町議ら46人を「不起訴不当」とし、再捜査を求めた。残る19人は直後に返金したため「不起訴相当」とされ、捜査は終結した。
■決別 金権政治
2019年夏の参院選で河井克行、案里夫妻が100人に計2901万円を配ったとされる買収事件では、選挙に絡んだお金のやり取りが浮き彫りとなりました。令和の時代も変わらない「金権選挙」。皆さんの地域でも耳にしたこと、目にしたことはありませんか。体験、情報、意見をぜひお寄せください。(中国新聞「決別 金権政治」取材班)
元稿:中國新聞社 主要ニュース コラム・連載・特集 【決別 金権政治】 2022年02月05日 22:33:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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