【主張】:コロナ病床の確保 再度の医療崩壊を許すな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張】:コロナ病床の確保 再度の医療崩壊を許すな
宮城県が独自の緊急事態宣言を発し、東京都や大阪府の新規感染者数が再び増えるなど、新型コロナウイルス禍の厳しさは一向に収まる気配がない。むしろ、日増しに強まっているのが第4波到来への懸念である。
感染者が十分に減らない中で政府は緊急事態宣言を解除した。ここにきて人出が急増していることや、感染力の強い変異株の広がりをみれば、第4波の患者数は第3波のピーク時を超える恐れがある。
その想定の下で、第4波への十分な備えを急ぎ講じなくてはならない。
ワクチン接種を急ぎ、検査の徹底で変異株蔓延(まんえん)を阻むべきは言うまでもない。併せて病床を確保し適切に運用することが重要だ。
厚生労働省が24日、都道府県に対して、第3波のピーク時の2倍の患者を受け入れられる病床の確保を求めたのは当然である。
第3波では、例えば東京都で入院先や療養先が決まらない人が一時約6千人を数えた。行き場のない患者がこれほど存在する事態は医療崩壊も同然である。厚労省が昨年、都道府県に示した病床予測が甘かったということだ。
この過ちを繰り返してはならない。何よりも政府は、いまだ病床確保に奔走しなくてはならない対応の遅さを猛省すべきである。
もちろん、コロナ患者向けの病床は、ただ数を揃(そろ)えれば済む話ではない。第3波では病床数に応じた医師や看護師などを用意できなかった。個々の医療機関だけに病床確保を任せておいてはいけないことは、第3波の教訓である。
改めて医療機関の役割分担を徹底する必要がある。高度医療を提供できる医療機関は重症患者の治療に専念し、日本に多い民間の中小病院は峠を越えた患者の転院を引き受ける。そうすることで患者の増加に対応すべきだ。
中小病院にとっては、コロナ患者とそれ以外の患者の動線を分けたり、コロナ対応の医療スタッフを確保したりするのが難しいこともあろう。それならば医療職を一時的に大病院に集める思い切った手立てを検討してもいい。
コロナ患者向けの病床を増やせば、がんや心疾患など一般医療に制約が生じる可能性もある。軽症者にはホテルなどの療養施設を活用し、訪問診療や訪問看護を組み合わせるなど、病床逼迫(ひっぱく)を少しでも緩和する工夫を求めたい。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2021年03月27日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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