【社説①・04.18】:マンション談合 「悪習」を改める契機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.18】:マンション談合 「悪習」を改める契機に
マンションの大規模修繕で談合を繰り返していたとして、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、関東地方の修繕工事業者20社以上に立ち入り検査した。マンションは定期的に大規模な修繕が必要だが、不当に高額な施工がまん延しているとの指摘は以前からあった。「悪習」を改める契機にしてほしい。
全国のマンションは約700万戸。国土交通省の調査によると大半のマンションは12~15年ごとに大規模な修繕を施し、1戸あたり75万~150万円を支払う。入居者でつくる管理組合が漏水や外壁のはがれ、鉄筋の腐食などの経年劣化に備えて修繕費を積み立てておき、対処するのが一般的だ。
管理組合は多くが、清掃や設備点検などの業務を外部の管理会社に委託している。大規模修繕時も同様で、管理会社や設計コンサルタント業者に任せ、入札などで工事業者を選ぶ。今回、約20社の工事業者は事前に落札業者や額を決めていた疑いがもたれている。
入居者は不当に高い工事費を支払わされた可能性がある。現時点で今回の立ち入り対象は工事業者に絞られているようだが、「談合の首謀者は工事業者ではなく、主にコンサル業者で、時には管理会社のケースもある」と明かす専門家もいる。国交省は2017年、そうした手法でバックマージンを得ていたコンサル業者が存在すると警告する通知を管理組合の団体などに出している。他地域でも談合が常態化している可能性は捨てきれず、公取委は徹底した調べで全体像を解明すべきだ。
昨今の資材、人件費の高騰で、当初の修繕積立金では工事費が足らない、という切実な問題も各地で報告されている。適正価格がより見極めにくくなっていることも背景に、いわば、「素人集団」である管理組合側が付け込まれ、談合でさらに工事費がつり上げられているとしたら悪質だ。
入居者側にも、「丸投げ」にしない程度の知識は求められるが、マンション管理士や建築士ら信頼のおけるプロから逐次助言を得る仕組みを整えておきたい。先駆的な取り組みとして、名古屋市などはマンション管理士らを、講師役として無料で管理組合側に派遣する制度を設けている。ケースによっては公益財団法人「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」などの相談窓口も活用したい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月18日 06:58:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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