spin out

チラシの裏

災厄の町 その1

2015年01月27日 | Eクイーン
いまさらこんなこと言うのも間抜けですが、
大昔に読んだときは、「意外な犯人」でもなく地味な話でガッカリした記憶があったもので。

「災厄の町」という題と、オビの「運命にのろわれた」「背後に潜む悲劇」という言葉に
救いようのない話と思いがちです。
が、「復活祭の日に生まれた子どもを養女にする」ラストに小さな救いがあるように、
本書のテーマは「再生」のような気がします。
そして己と愛する者への贖罪を描いた「ミステリ以上のミステリ」を、
著者クイーンが最高傑作と自負するのもうなずけます。
しかし著者クイーンが第二次大戦後のミステリの行く道を示したこの傑作を、
自分自身で越えられなかったのも事実。

ところで、著者エラリー・クイーンには
「クイーンA氏」と「クイーンB氏」がいるのではなかろうか?
どちらかがリーでどちらかがダネイ、というわけではなく、
リー成分の多いのが「B氏」、ダネイ成分の多いほうが「A氏」とかりに設定してみたわけです。

一般的にはダネイがプロットを考え、リーが文章にする、
という分業で作品を書いていた、といわれていましたが、
筋を考えられないといわれていたリーもプロットを提供していたのでは。
※この関係はビートルズ時代のレノン&マッカートニー名義の曲作りと似ているかも

あくまで読んだ感覚(探偵であるエラリイとレーンの造形と作風)ですが、
「Yの悲劇」→「ニッポン樫鳥」→「災厄の町」+「フォックス家の殺人」→(「十日間の不思議」)、
という流れがあるように思えます。たぶんにリー成分の多めな作品でしょうか。
父と息子の相克をテーマにした重く暗い作風、というのがリー・プロットの特徴かも。

「災厄の町」+「フォックス家の殺人」、と一組にしてみたのは、
「フォックス家の殺人」は「災厄の町」のテーマを語りなおしたものでは、と思えるからです。
続く
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アントニイ・バークリー書評... | トップ | 災厄の町 その2 フォック... »

コメントを投稿

Eクイーン」カテゴリの最新記事