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アントニイ・バークリー書評集vol.1

2015年01月22日 | ミステリ
クリスティ、カー、クイーンの晩年の作品をバークリーが新聞紙上で評したものです。
クリスティとは「アガサ」と呼びかけるほどの仲で、
晩年の作品といえど誉めるべき作品には星5つのような評価を贈っています。
カーには言葉遣いを誉めたり諌めたり(作品自体の評価は芳しくないにしても)してます。
が、クイーンには厳しいですね。
作中のエラリイが嫌いらしく、「クイーン警視自身の事件」(ポケミスではクイーン警部自身の事件)では
「より人間的な父親が主役なので嬉しい」と、かなりのアンチエラリイ派。
作中のエラリイのような文学スノッブが大嫌いなのでしょう。

扉にはバークリーが自分の偏見について書いた一文があり、
曰く「グランギニョルが好きで探偵小説に付け焼刃的な文学まがいをくっつけたものは嫌いだ」と
はっきり宣言しています。
バークリーに限らず、批評には必ず「どんなフィルターがかかっているか」を明言する必要がある、
と常々思っているので、安心して楽しく読めました。

クリスティ
「終わりなき夜に生まれつく」※恐るべきサプライズ、傑作、と最高の評価
「死者のあやまち」※2級品だが、クリスティの2級品はほかの作家の最高傑作に匹敵すると、
クサし方にも黒さを覗かせるところがいいですね。
カー
「ロンドン橋が落ちる」※「同時代の有名人が冗漫」と一刀両断
「火よ燃えろ」※【時代考証】の調査の量に称賛をおくる、とこれまた微妙な誉め方

たいしてクイーンでは「孤独の島」を傑作と誉める反面、
「最後の一撃」は「馬鹿馬鹿しく、これほど説得力に欠ける解決はほとんど見かけない」とニベもない。
「孤独の島」にはバークリーに言わせると途中で2回の大どんでん返しがあるそうだけど、
そうだったかしら?
記憶に間違いがなければ「孤独の島」解説でジョン・ダンからの引用、
と書かれていたと思いましたけど、そういう文学スノッブは嫌いなはずだったのでは?
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