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緑の館

2022年07月06日 | Eクイーン
8月にクイーン「ダブル・ダブル」の新訳が出ると知って、この際だからと「緑の館」(ハドスン)を読む。

日本の古本屋で新潮文庫版を探して購入しました。
このころのジャケットは、なんかいい雰囲気ですね。装丁画は岸葉子。
ざっと読んでみて、こういう話なのか、と。
「ダブル・ダブル」でリーマは、はっきりと「緑の館」から名前をもらった(HPB P25)と書かれています。
「緑の館」での原リーマは、「ダブル・ダブル」でのリーマ・アンダースンとは違い、
妖精のような面もありながら密林の女王のような面もあり(こっちの方が多い)、まったくの別人格です(当たり前)。
クイーンは、きつい性格の女性は嫌いだったのか、
クイーン作品でヒロインを演じるのは、未婚で大人しい性格を持った若い女性ですね。
それが作品内で妻、母、老母となると、犯人ではないにしろ扱いが酷い。
「最後の一撃」では、エラリーと結婚するかと噂されていた女性も、
二十うん年後の姿は、たしか「外交官の太った妻」とか書かれていて、
もうちょっと配慮はないかとも思いましたよ。
結局、ヒロインたちはその作品の中で時間を止められて、いつまでも永遠の処女のままか、
残酷な時間の流れを体現する存在になるか、どちらかしか与えられていないのでは、とも思います。
リーマは当然ながら前者の範疇で、これ以降どこにも登場しません。
永遠のヒロイン、というわけで、エラリーが生涯独身だったのも、
「残酷なテーゼ」を受け入れたくなかったから、かもしれません。

「ダブル・ダブル」はライツヴィル・カルテット4部作の中では、
ミステリ的には4番目(つまり最下位)ですが、好感度は4作中トップ。
ミステリ的にはアレなんですが、読んだ時期が中学から高校進学の間の春休みだったからか、
すごく好きな作品です。
ちなみにP26には「シン・コーナー」も出てきます。

※追記
「靴に棲む老婆」も新訳がハヤカワから出るんですね。
創元から「生者と死者と」の新訳を期待していたけど。
で、「ダブル・ダブル」は「靴に棲む老婆」の焼き直しではないだろうか。
で、その流れは「悪の起源」(博物学という点で「緑の館」ともつながっている)へと。

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